BLACKSOLAR生産の戦略的拠点

シャープが、大阪府堺市の堺太陽電池工場の様子を公開した。

公開された堺太陽電池工場

堺太陽電池工場は、奈良県葛城市の葛城事業所とともに、同社のソーラー事業の中核拠点のひとつであり、報道関係者に同工場が公開されるのは初めてのことだ。

堺太陽電池工場は、畳5畳分におよぶ第10世代のマザーガラスにより、液晶パネルの生産を行う堺ディスプレイプロダクツなどと同じグリーンフロント堺のなかに位置する。

2007年7月に建設を決定。2010年3月には薄膜太陽電池生産ラインが稼働。2010年12月には、単結晶太陽電池「BLACKSOLAR」の生産ライン導入を発表し、2011年3月から同生産ラインが稼働。2015年6月には、「BLACKSOLAR」の新製品を発売するのにあわせて、今年3月までに4億円、6月までに10億円の合計14億円を投資。生産能力を現在の200MWから、210MWにまで拡張する予定だ。

堺太陽電池工場のセル生産ラインの様子

最初の工程ではウェハを投入して洗浄を行う

ウェハを投入する様子

これが生産ラインに投入されるウェハ

ここから先はすべて自動化されたラインとなっている

ウェハの洗浄後、5つの工程を経てセルが完成する

「BLACKSOLAR」の生産プロセス。ウェハ投入後、まずは洗浄を行い、続いて裏面に拡散層の形成。マイナスの層を作ったのちに、プラスの層を作る。表面に反射防止膜を形成し、拡散マスクをさらに塗布。裏面に電気を取り出すための電極を形成して、両面の外観検査と出力検査を行うことでセルが完成する。一方のモジュール工程では配線シートへセルを配置するところから始まる。間にEVA樹脂をはさみ、ガラスを配置。その上にバックシートを配置し、封止材を入れ、セル、ガラス、シートを熱で接着する。さらに端子BOXを取り付け、続いてフレームを取り付ける。そして最終検査を行いモジュールが完成する

シャープ 常務執行役員 エネルギーシステムソリューション事業本部長の向井和司氏

シャープ 常務執行役員 エネルギーシステムソリューション事業本部長の向井和司氏は、「堺太陽電池工場は、高効率技術の結集により、セルからモジュールまでの一貫生産を可能にする生産拠点。BLACKSOLARも、高品質の量産を実現できる堺太陽電池工場だからこそ実現できるものだ」と語る。

シャープは単結晶太陽電池「BLACKSOLAR」を、住宅向け製品の主力に据えている。

BLACKSOLARは、バックコンタクト構造を採用することで、従来は表面にあったマイナス電極を、プラス電極とともに裏面に配置。これによって、表面の全体で受光できることができるのが特徴だ。

堺太陽電池工場で生産されるBLACKSOLAR

「電極部によって発生する集光のロスを排除。セル全体で光を受けるため、従来製品では94%だった受光面積が100%になる」という。

BLACKSOLARの特徴。光を受ける面積が100%になっている

光を遮るものがなく、電極を裏面に配置するバックコンタクト構造としている

また、同社独自の微細加工技術により、裏面電極の銅配線は200本以上としたほか、120μmレベルというセルの厚みを実現。一般的な太陽電池セルに比べて約40%薄型化したという。

「裏面電極に使用している微細加工技術は、一般的な太陽電池に比べて10分の1。高出力化するとともに、信頼性向上を実現している」と胸を張る。2015年モデルでは、220Wの出力が実現できるという。