7月3日、東京都新宿区のマイクロソフト本社にて、ITエンジニアを対象にしたイベント「Tech Fieldersの集い 2010 初夏」が開催された。

今回のテーマは「エンジニアのモチベーションと情報発信」。エンジニアのモチベーションを向上させ、主体的な情報発信を促すにはどうすればよいのか――この課題に取り組むうえで参考になる活動事例が多数紹介された。

イベントは、楽しみながら学ぶことに重きが置かれ、終始和やかな雰囲気で進行。講演の中には、エンジニアの皆さんにとって大きな刺激になるであろう話がいくつもあったので、以下簡単に紹介していこう。

エンジニア同士の"つながり"を作るために

まずは、「Tech Fieldersの集い」というイベントについて簡単に紹介しておこう。

マイクロソフト エバンジェリスト 高添修氏

Tech Fieldersの集いは、マイクロソフト エバンジェリストらが各種の最新技術を紹介する無償セミナー「Tech Fielders」の番外編にあたるもの。「エバンジェリストばかりが目立っても仕方がない。現場で活躍する本当のヒーロー(エンジニア)が表に現れてこそ、業界全体が活性化される」(マイクロソフト エバンジェリスト 高添修氏)という考えの下、コミュニティ活性化に向けた活動の一環として開催されている。

昨年よりはじまった「Tech Fieldersの集い」は、今年2月の「Tech Fieldersの集い 特別編 - おかげさまでActive Directory 10周年」を含め、過去に3回開催されている。通常のTech Fieldersが平日開催なのに対し、Tech Fieldersの集いは初回(金曜日)を除くといずれも土曜日開催。こうしたスケジュールについては、「現在、コミュニティ活動は企業によっては、業務とみなしてもらえないところもあるので、そのあたりに配慮した結果」(マイクロソフト シニア エグゼクティブ オーディエンス マーケティング マネージャー 福井隆夫氏)という。

その一方で、福井氏は「コミュニティ活動は、通常の業務では難しいエンジニア同士の"つながり"が作れ、さまざまな情報交換ができる貴重な場」(福井氏)と、普段の業務にも役立つことを強調。そのうえで「エンジニアの地位向上のためにも、まずはこうした活動を企業に認めてもらわなければならない」(福井氏)と語っており、マイクロソフトでは今後、エンジニア支援活動により一層力を入れていく考えのようだ。

雰囲気を和らげるための演出

それでは、「Tech Fieldersの集い 2010 初夏」の話に移ろう。

まだ4回目と比較的歴史が浅い「Tech Fieldersの集い」では、特に参加者同士のコミュニケーションを促して和やかな雰囲気を作ることに配慮しており、今回もそのための演出が随所に盛り込まれていた。

マイクロソフト エバンジェリスト 長沢智治氏

例えば、イベントの冒頭に登場したマイクロソフト エバンジェリストの長沢智治氏は、突然、真っ白なカードの束を最前列の聴講者に配布。続けて「1人1枚ずつ行き渡るよう皆さんで回してほしい」(長沢氏)とお願いした。

配布の様子を見守っていた長沢氏は、作業が終わると、「配布方法について全体を指示する人がいなかったにも関わらず、互いにコミュニケーションをとって無事全員に行き渡った。そのうえ、余った用紙の回収までされている」と指摘。この状況について「自己組織化」という言葉をあてはめたうえで、「トップダウンの指示がなくても組織を作ることが可能であることにお気づきいただけたはず。自発的に作られた組織はモチベーションも高い。Tech Fieldersの集いもそういった場にできれば」と語った。

さらに、「昼食後の眠気を覚ますために"伸び"をしてほしい。ただし、"クリエイティブな伸び"というのがお題(笑)」(長沢氏)と呼びかけ、全員を立ち上がらせて簡単なストレッチを行った。その後、体を伸ばした状態で周囲を見回すように促し、「クリエイティブな伸びという制限がついていたので、皆さんいろいろな姿勢になっているが、周囲を見渡してどうだろう。自分と同じような姿勢の人には共感を抱き、素敵な姿勢は真似てみたくなっているのではないだろうか」(長沢氏)とコメント。そのうえで、「こうした感情は、情報共有、情報発信でも同様に生まれる。同じようなことをしている人がいるとわかれば共感を抱くし、素敵なことをしている人がいれば真似てみたくなる」(長沢氏)と説明し、「難しく考えなくても大丈夫、ぜひ気軽にコミュニティ活動に参加してほしい」(長沢氏)と述べた。

「クリエイティブな"伸び"」にもねらいが

そのほかにも、配布した白紙のカードにセミナーへの意気込みや現在の悩みを記入してもらい懇親会での話題づくりに生かしたり、付箋紙に現在の気持ちを記入して貼り付ける「気持ち共有ボード」を設け、共感できる付箋氏にシールを貼るよう促したりするなど、随所にコミュニケーション活性化に向けた工夫を盛り込んでいた。

気持ち共有ボードにはたくさんの付箋が貼られた

長沢氏は最後に、「皆さん、本日は思い思いの方法で楽しんでください。私たちも楽しみます」(長沢氏)とコメントし、参加者へエールを送った。