端末間での通話も可能

まさに電話のように、受信端末間で話すこともできる。あらかじめ端末に相手の端末を設定しておけば、ボタンひとつでその相手を呼び出して通話できるのだ。電話がある現在でも、パニックになりがちな緊急時に確実に助けを求められるという利点がある。たとえば年老いた親がひとり暮らしをしていると不安なものだが、IP告知放送システムがあれば、なにかあったときに連絡してもらいやすいわけだ。

端末から端末に話しかけたり、携帯電話に定型文メールを送ったりすることができる(TOA資料より抜粋)

携帯電話宛に、あらかじめ決められた定型文メールを送ることまでできるため、パソコンや携帯電話を使うのが苦手な人でも、家族の携帯電話へのメールをすぐに送信することができる。

「優先度」の設定で緊急放送にも対応

通常の放送や端末間の通話は優先度が低く設定してある(高く設定できない)ので、緊急放送の際には割り込んで放送される

すべての放送や通話には「優先度」が設定されている。受信端末に複数の音声が送られてきた場合は、優先度の高いほうの音声が流れるしくみだ。たとえばグループ内で優先度「4」の放送を流しているとき、役場から優先度「2」の放送が流れてきたら、そちらが後だとしても割り込んで放送される。

中でも「緊急度1」は、緊急放送の場合だけに使用される最高レベルだ。他の放送は緊急度を1に設定することはできないので、いかなる場合でも緊急放送が優先して流されることになる。また、緊急度1の場合だけは、端末を操作しても音量を調整することはできず、常に最大音量で流される。そして放送は自動的に端末に録音され、あとからでも聞くことができる(後述)。

各戸の応答状態を確認している例

このようになっていれば、「屋外スピーカーでなにか流れていたが、聞き取れなかった」といったことは起きないし、「風呂に入っていて聞き逃した」「一回は聞いたが、避難場所などの情報を忘れてしまった」といった場合にも聞きなおせるので、大事な緊急情報を確実に受け取ることができるのである。

また、緊急時に限らないが、放送時には「応答確認」を要求することができる。この場合、受信側で放送を聞いた人が受信端末の確認ボタンを押すと、放送側のパソコンには応答状況の一覧が表示される。これで、「放送を聞いていない人(または応答できない状況にある人)」がすぐに把握できるというわけだ。放送につきものの「放送はしたが、伝わっているかどうかはわからない」ということがなくなるのである。

放送は録音していつでも聞ける

端末側には、留守番電話のように録音機能がある。「留守番録音モード」に設定しておくと、優先度が「2~5」に設定された通常の連絡放送は自動的に録音され、あとからいつでも聞くことができるのだ。受信端末のある部屋にいなくても、連絡放送の情報を逃さず聞けるというわけだ。

このとき緊急放送だけは、留守番録音モードを設定していようがいまいが必ず録音される。重要な情報を、設定を間違えていたために録音しそこねた、ということが起こらないようにである。

このように、ざっと概要を書いただけでもTOAが提供する「IP告知放送システム」が従来の有線放送電話システムに比べていかに進化しているかがわかることだろう。

いつか聞きたい「ハイテク農事放送」

「農事放送」といえば、なにか「田園風景の中、役場の古びたマイクでのんびりと……」といったイメージがあった。しかし実際には、インターネットの通信技術や音声伝送技術が満載された「ハイテク農事放送」が登場していたのである。

地方の実家や友人宅の部屋で、いきなり役場からの放送が流れだしたなら、その音の源をチェックしてみよう。そこには、新しくなった「有線放送電話」の端末が置いてあるかもしれない。