東京ドームシティ プリズムホールで開かれた「IPAX2008」。古川享氏が講演する特別プログラム「とびだせ日本のエンジニア」もいよいよ後半へと突入。この3月にIPA主催で行われた「第2回未踏海外事業化支援事業」での成果と共に、海外で活躍しようというエンジニアに向け同氏は熱いエールを送った。

儲けたら10倍にして返す

海外事業化支援について語る古川氏

「海外に飛び出すとき、どんなチャネルを作るのかとか、誰を頼るのか、というのは止めてもらいたい」。同氏はするどい言葉を放つ。海外で成功しているスポーツ選手が自由競争の中でその地位を勝ち取ってきたことに触れ、「IPAにも補助金を出す制度があります。しかし、海外で成功しているスポーツ選手が政府から助成金を得てその地位を勝ち取ったという話は聞いたことがありません。みなさんも、それを使い切ったら終わりにするのではなく、儲けたら10倍にして返すぐらいの気概が欲しいですね」と同氏は語る。

IPAの未踏ソフトウェア創造事業の一環として、「海外事業化支援」というものが行われている。これは、参加者の海外進出を支援するという目的のもとに実施されている。すでに3月10日より6日間のプログラムで第2回海外事業化支援が開催されており、古川氏もそれに同行したのだという。

IPAの海外事業化支援事業は第2回を数える

「今回はアメリカに着くなり、すぐに授業を始めました」と語る同氏。ハードなスケジュールのもと、プログラムが開始されたのだという。その中で特に印象に残ったのは、シリコンバレー特有の文化だったと同氏は言葉を続ける。「シリコンバレーは失敗に寛容であるということ。日本では事業に失敗するとレッテルを貼ってしまうが、逆にシリコンバレーでは失敗を知らない人こそ敬遠されます。もし、その人に失敗の体験がなければ、いつか大きな過ちを起こすのではないか、人生で一番大切な経験をしていないのでは、と思われてしまうのです」と同氏は語る。

プログラム1日目のダイジェスト

シリコンバレーは起業に向いている風土

またシリコンバレーに関しては、「起業」を支えるものが揃っているのも特長なのだという。「まず、個人投資家がたくさんいます。これをエンジェルというのですが、日本では制度上の問題で個人投資が難しい面があるのも事実です。しかし、日本でも法的な見直しがされているので、今後はチャンスがあるかもしれません」と古川氏は語る。

また個人投資家だけでなく、経営者や税理士、弁護士といった人材も豊富で、それぞれがきっちり役割を分担しているので、起業には向いている風土なのだという。「だからといって、おいしい話ばかりではなく、骨の髄までしゃぶろうという人もいます。これから付き合おうという人がどっちの人種なのかを見抜くことも重要なのです。自分自身のアドバンテージとして、卓越したエンジニア能力や単なる英語力だけでなく、人とのコミュニケーションスキルを磨かないと成功できないかもしれません」と同氏は警告するのも忘れない。

プログラム2日目のダイジェスト