米国式の"エレベータピッチ"で

若いエンジニアが大きな飛躍を遂げることを期待すると古川氏

ただ単に英語力が高いというだけではなく、総合的なコミュニケーションのほうがより重要なのだと同氏はいう。今回は米国投資家に向けたプレゼンテーションを磨くプログラムも組まれていた。古川氏はそこでのエピソードとして面白い話をしてくれた。

「日本人のプレゼンにありがちなのが、答えを最後にもってくるというもの。日本ではそれでよくても、海外ではダメなんです。米国ではそれを"エレベータピッチ"といって、エレベータに乗リ合わせたとき、目的の階に到達するまでの30~40秒間に『ぼくは優秀なエンジニアで、これだけのスキルがあって、これだけのアイデアがある。無いのはお金だけなんです』と伝えるのです」と語る。シリコンバレーでは要点だけを先に述べることが大切、というわけだ。

「日本風に『シリコンバレーって天気が良いですね』とか、『ヤンキースの低迷はいつまで続きますかね』と言っているようでは、エレベータが開くと投資家が降りてしまう。これはエレベータだけでなく、メールでも同じで、件名だけで分かるようなこともあるし、一行目だけ読めば分かるような形の場合もある。そういう海外での作法を身につけるための講習会もやりました」と同氏は語る。

その後のプログラムでは、米国のベンチャー企業を訪れたり、米グーグル社へ向かいプレゼンテーションを行うなどの強行スケジュールが実施された。「参加者は見違えるようにプレゼンが上手くなりました。中にはその場で投資家に呼び止められる人もいました」と同氏はプログラムの成果にニンマリ。会場にいる現役エンジニア達も熱心に聞き入ってた。

プログラム3日目のダイジェスト

プログラム4日目のダイジェスト

第2回海外事業化支援事業のまとめ

これまでの大学では使い物にならない

最後に、古川氏の肩書きにある"慶応義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授"という話題に触れ、「これまでの大学というは使い物にならない。仕事にならないことを教えるだけ。企業が困っているのは、夢を語れないから人材が会社を出て行ってしまうという事実。これから先は、会社に不満を持っている人を受け入れる大学院を作りたいのです」とメディアデザイン研究課の目的について語りだした。

デザイン、マネジメント、ポリシー、テクノロジ、この4つを創造する人を育てていこうというもので「新しい社会を作るには健全なスパイラルを作ることが必要。提案しておしまいではなく、実際にものを作って世の中にデビューさせることが大切。それを実現するためにも、この組織でよい人材をまとめていきたいと思っています」と同氏は語る。

4つの創造をこなせる人材を作るのがメディアデザイン研究課の役目

教員はそうそうたるメンバー

メディアデザイン研究課についてはもっと語りたかったと述べた古川氏だが、残念ながらここで時間切れ。会場に惜しまれつつも「ぼくらはみなさんが海外へ飛び出すときのスプリングボードになるのが役目だと感じています。IPAやぼくらの世代の人間をうまく使って大きくジャンプしてほしいと思います」と、最後の言葉で結び講演会場を後にした。IPA、そして古川氏、さらに海外で活躍したいという若い世代のエンジニアの今後が楽しみだ。