それがまさに我々の戦略です。パッケージとしてIllustratorとPhotoshopがあって、一方にホスティングサービス、仮にKulerがあったとしましょう。Kulerはインターネットにつながってさえいればアプリケーション内でもアプリケーションの外からでもアクセスできます。そしてKulerは単体のグラフィックアプリケーションとして、カラーのインスピレーションを得るために使ってもよいですし、読み込んでIllustratorのスウォッチとしてもよいのです。つまりこれらは独立して使ってもいいし、アプリケーションに組み入れて使ってもいいというのがポイントです。

こうしたサービスはもともとWebブラウザを介してアクセスするものでした。しかし、アドビのテクノロジー「AIR」(アドビ・インテグレーテッド・ランタイム)を使うと、アプリケーションがブラウザ化してネットワークに繋ぐこともできますし、スタンドアロンやオフラインの状態でも稼動できます。ですから飛行機に乗ってオフラインの状態になっても使用できます。どのようなサービスを提供できるか、こういった環境になれば新しい考えが生まれます。

なぜアドビがパッケージソフトという伝統的なエリアに加えて、開発ツールを提供したり、ホスティングサービスに移行しているのかというと、アドビはクリエイティブプロフェッショナルを対象としたエリア、ホビイストやコンシューマーを対象としたエリア、ナレッジワーカーを対象としたエリア、デベロッパーを対象としたエリアなど、幅広い製品のポートフォリオを持っています。それぞれのエリアで行われている作業をひもづけているからです。

人々は紙面からWebに移行しつつあり、いままでビデオに特化していた人もWebを介して自分たちのプロジェクトを見せたいと考えています。現在のワークフローは、昔のようにビデオ、デザイン、プリント、Web、写真という切り分けではなくなってきています。これらはすべて融合してきており、日々境界線は薄れています。こうした状況で我々は、たとえばデザイナーとデベロッパーの間のコミュニケーションを取れるようにしたいと考えています。すべての製品においてワークフローを透明なかたちにして行き来できるようにする。これがCS3マスターコレクションを企画した意図です。

また、アプリケーションの中にもConnectという技術を付け加えました。これはオンラインのコラボレーションツールで、インターネットを介したスクリーンの共有、音声、映像によるWeb会議ができます。たとえばデザイナーとデベロッパーが離れた場所にいても、Photoshopのスクリーンを見ながらリアルタイムで共同作業ができます。

Webコミュニケーションシステム「Adobe Connect」

画面は世界中のどこからでもスタッフみんなで見ることができます。閲覧側がPhotoshopを持ってもいなくても、Flashをサポートしているブラウザさえあればその内容を見られます。相手がどんなプラットフォームでも画面を共有して会議できるのはアドビだけです。


――ありがとうございました。