クレジットカード会社のVisaによると、「プラスティックのカードという媒体を用いない時代がやってくる」という。その主役は携帯電話だ。日本では「おサイフケータイ」としてすでに商用化しているが、Visaも携帯電話が次なる媒体になると考えているようだ。

10月17日、英ロンドンで開催された携帯電話に関するイベント「Symbian Smartphone Show 2007」(主催:英Symbian)で、Visaのニューチャネル担当トップであるGuido Mangiagalli氏がVisaのモバイル戦略について語った。

Visaのモバイル戦略について語るGuido Mangiagalli氏

非接触カードpayWave

Mangiagalli氏はまず、Visaが欧州で今年スタートした非接触カードによる決済システム「payWave」について説明した。payWaveは、ICチップを搭載したカードで、これを読み取り機にかざすことで決済を行えるというもの。小額の決済での利用を想定しており、金額が大きくなると通常のカード決済と同じような手順をとることになる。英国では、Barclays銀行と協業し、ロンドン地下鉄の非接触カードサービス「Oyster Card」と統合する計画もあるという。これにより、地下鉄のゲートにある専用読み取り機にかざすことで運賃を支払うことができる。このpayWaveは欧州では英国のほか、フランス、スペイン、スイス、ドイツなど数カ国で提供を開始している。

しかしVisaではすでに、プラスティックカードという媒体を利用しなくなる日を想定しているようだ。Mangiagalli氏は、「おサイフケータイ」など、携帯電話を使って代金を支払う「モバイルペイメント」について、「新しい可能性を切り開くものだ」と言う。さらに「カードというフォームファクタに制限されなくなる」と続けた。

Visaが携帯電話に注目するのには理由がある。「携帯電話は20世紀に最も成功した技術だ」とMangiagalli氏。2007年9月にGSMは20周年を迎えたが、この20年で加入者はゼロから28億人に一気に膨れた。これは急激な成長である。iPodユーザーは1億人、PCは8億人、インターネット利用者は1億人、TVは20億人。Visaカードの発行枚数は15億1000万枚。携帯電話の普及は、はこれらすべてを上回っている。

しかも、携帯電話は単なる電話ではない。ユーザーは携帯電話を利用して、通話、SMS、着メロダウンロードとさまざまなことを行っている。

実際、モバイルを使った商取引の市場は成長している。2006年世界のモバイルコマース市場は80億ドルだった。さらに2010年には430億ドルにも上ると予測されるという。現在、ユーザーが携帯電話を使って購入しているのは、着メロ、ゲームなどのデジタルコンテンツがほとんどだ。今後、インターネットなど携帯電話を使ってさまざまなサービスが提供されるようになれば、購入するアイテムも拡大するだろう。