労働環境の改善に効果があり、人材の有効活用を促進してくれるRPA(ロボットによる業務の自動化)。既に活用して効果を得ている企業もあれば、導入を検討し始めている企業も多いだろう。中には導入を始めたが、途中で諦めてしまったという話も耳にする。―― 成功している企業、失敗してしまった企業の差は、どこにあるのだろうか。
本連載では、RPAの導入・活用を行う中で留意すべきポイントや考え方について、4回にわたって紹介している。第2回目となる今回はNTTデータビジネスシステムズで業務改善などのコンサルティング業務を手がけている下間 大輔 氏に、RPA導入前に検討しておくべきことや、導入が始まってからトラブルにならないようにするための事前準備などについて聞いた。
業務の洗い出し、ワーキンググループづくりなどが迅速な検討・導入のコツ
― まずRPAを導入するのに適している業務について、教えてください。
下間:RPAツールにもいくつかタイプがありますが、共通して言えるのは「定型業務が得意」ということ。簡単なところで言えばExcelの特定のセルから値をコピーして、別のシステムの特定の入力項目にペーストし、「OK」ボタンを押し、チェックリストを出力する……といったようなものです。様々なソフトにまたがっていたとしても、決まったルールに基づいて進めていけばいい作業なら、それはRPAに適していると言えるでしょう。もちろん「コピーするExcelの値が一定条件を超えていた場合は、入力項目の箇所を変える」といったように、条件に合わせて作業内容を変えることもできます。
さらに、その定型業務が反復性の高いものであればあるほど、RPAの導入効果は上がります。従来人間が手作業でやっていた反復作業をロボットで自動化するわけですから、スピードも上がりますしミスもなくなるということです。
― RPAの導入を検討する際には、まず社内にそういう「定型」で「反復性が高い」業務がどのくらいあるかを洗い出しておくべきだということですね。
下間:そうです。ベンダーに相談する際には、業務フローと合わせてそうした業務を洗い出しておいていただくと、「実際にRPA化できるのか」「できるとすればどんなツールが最適なのか」「どんな工程で導入をすすめればいいのか」などの議論がスピーディに進むと思います。
― 他に注意点はありますか?
下間:導入にあたっては1~2人の担当者ですべてを賄おうとされるのではなく、社内に協力してくれる方をつくっておくべきでしょう。担当される方があまりに少人数ですと、本来の業務が多忙になってRPA化が片手間になってしまったり、技術的に困難な部分が出てきた時、それ以上進められなくなったりと、計画が途中で頓挫してしまうケースもあります。新規部門というほど大げさでなくてもいいのですが、各部門や各チームから協力者を募って推進室やワーキンググループのようなものを構成し、役割を分担するのが良いかと思います。
またIT部門に話を通しておくことも重要です。業務の洗い出しにしても、連載第3回でお話しする予定の導入作業にしても、IT部門の協力があればスムースに進められることは多いですから。もちろんIT部門の方もお忙しいと思うので、全面的な協力は無理だとしても、どの程度力を貸していただけそうかを確認しておいてくださると、我々がどのレベルまでサポートをすべきなのかの判断もつきやすくなります。
コンサルタントの協力があれば、広い視野からの業務改善も可能
― 仮にNTTデータビジネスシステムズに業務の洗い出しから依頼したとすると、どんな工程を考えておけばいいでしょう?
下間:まずはしつこいくらいに、しっかりとヒアリングを行います。RPAが入り込みやすい作業を見つけるには、お客様が使用されているシステムのインプットとアウトプット周辺に絞って業務内容を伺うことにしています。インプットの例だと先ほどお話しした「Excelの値を別システムの入力項目に貼り付ける」という作業工程や、「Webシステムのデータをメールに転記する」などが考えられます。アウトプットなら「システムから出力されたデータを、PDFの台帳と比較する」とか…業務システムで処理する前後の作業には、RPA向きのものがあるケースが多いのです。
その後数回お伺いして、最終的には実際に作業をされているところを拝見します。人間のパソコン操作をロボットで再現するのがRPAなので、細かいところまで作業を見せていただきながら、RPA化の対象候補となる業務を選んでいきます。
― 洗い出し後はどういった流れとなりますか?
下間:業務の内容や複雑さによってどのRPAツールが適しているのかを考え、ご提案いたします。もちろん業務内容をお伺いしている中で、「RPAを適用しなくても解決できる」という部分については別の改善策をご提案することもあります。先日、私が担当した案件では、IT部門のサポートもありExcelのマクロだけで自動化が実現できてしまったということもありました。こういったご提案は、業務内容・複雑性・メンテナンス性・社内サポートメンバーの状況によって変えています。
当社はRPAを優先させてお奨めするというよりも、全体的な業務改善のコンサルティングを主眼としています。もちろん「RPAを入れたい」というお客様のご要望があればそれに応えますが、RPAでなくても改善できる方法があって、そちらの方がお客様に適していると考えれば、そちらをお奨めします。実際ITを使わず、業務上設定されていたルールを見直すことで業務改善が図れたというケースもあります。お客様にとっても当社にとっても、RPAの導入は目的ではなく、業務改善やコスト削減を達成するための手段だということですね。
― ありがとうございました。
当然のことだが企業ごと、職場ごとに業務プロセスは変わってくるため、RPAの導入コンサルティングはかなり細部にまでわたって行われる。単純にベンダーに丸投げするだけでできるものではなく、コンサルタントと膝をつき合わせて行っていく必要があるということだ。RPA化を成功させようとするなら、むしろしつこいくらいに丁寧なコンサルタントを選ぶべきなのかもしれない。第3回では、具体的なRPA導入作業や効果測定などについて聞いていく。
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