2022年から国税庁のe-Tax(イータックス)では、マイナンバーカード方式に関して一部新しい仕組みが導入されました。それにより、マイナンバーカードを持っている人にとっては、従来に比べ医療費控除の確定申告の手続きが容易になり、PCを使わずともスマホだけで手続きが完結できるようになりました。

しかし、マイナンバーカードを持っていない人の場合、医療費控除の確定申告はどのような手続きとなるのでしょうか。

この記事では、「【2022年版】マイナンバーカードなしで、医療費控除の確定申告を乗り切るには?」と題し、マイナンバーカードを持っていない人に向け医療費控除の手続きに関して解説します。

なお、マイナンバーカードを持っている場合は、こちらの記事をご確認ください。

参考:<スマホ版>スマホで完結!医療費控除のオンライン確定申告

参考:<PC版>医療費控除の確定申告をオンラインで行うには(WEB版)

医療費控除の確定申告にマイナンバーカードは必要?

医療費控除の確定申告を行う場合、マイナンバーの情報は必ず提出が求められますが、マイナンバーカードがなければ医療費控除の確定申告ができないというわけではありません。

マイナンバーとマイナンバーカードは何が違うのか、医療費控除の確定申告の際にマイナンバーに関するどのような情報が求められるのか、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

マイナンバーとは、2015年に始まった「マイナンバー(個人番号)制度」にもとづく12桁の番号です。住民票を持つすべての人に国から付番されます。 マイナンバーにより個人の特定が確実かつ迅速に行うことできるようになるため、社会保障や税の分野など行政手続において、必要書類が減る、事務処理がスムーズになるなど利便性が向上します。

マイナンバーカードとは、12桁のマイナンバーのほか、氏名、住所、生年月日、性別などが記載された、顔写真付きのプラスチック製のカードです。運転免許証やパスポートと同じように、本人確認のための本人確認書類として利用することができます。なおマイナンバーカードは、個人番号カードとも呼ばれます。

マイナンバーカードを入手するためには、市区町村など自治体に手続きを行う必要があります。具体的には住民票のある市区町村に対し、交付申請を行う、交付通知書を受領する、自治体に取りに行く、といったステップが必要です。

詳しくは、下記のホームページをご確認ください。

参考:マイナンバーカードの交付申請

マイナンバーカードがあると、医療費控除の確定申告をスマホで完結させることができ便利です。しかしながら、マイナンバーカードは申請から受け取りにまで概ね1カ月ほどかかるため、医療費控除の確定申告とマイナンバーカードの申請はそれぞれ別のタイミングで行うのが現実的です。

それではマイナンバーカードがない場合、医療費控除の確定申告はどのように行うのでしょうか。

マイナンバーカードがない場合の医療費控除

マイナンバーカードがない場合は、医療費控除の確定申告の際に、①マイナンバーの情報、および、②身元確認書類がそれぞれ必要となります。

①マイナンバーの情報:マイナンバー通知カード、または、マイナンバーの記載がある住民票
②身元確認書類:運転免許証、保険証、パスポートのいずれか

①マイナンバーの情報は、一般的には、マイナンバー通知カードを使います。しかし、マイナンバー通知カードが用意できない場合には、マイナンバーが記載された住民票の写しを使います。

なお、マイナンバー通知カードは重要な書類となりますので、紛失した場合には届け出が必要です。自宅で紛失した場合は市区町村窓口に、自宅以外で紛失した場合は警察に届出を行う必要がありますのでご留意ください。詳しくは、下記をご確認ください。

参考:個人番号通知書について(マイナンバーカード総合サイト)

医療費控除の確定申告に必要な情報は、申告書類の作成に必要な情報と、税務署に提出する書類に分けることができます。

申告書類の作成に必要な情報
・医療費の領収書
・医療費のお知らせ(健康保険から送付された医療費通知)
・交通費の領収書
・源泉徴収票
・還付金の振込先口座

税務署に提出する書類
・確定申告書
・医療費控除の明細書
・マイナンバーの情報と身元確認書類(上記①および②)

医療費控除ための事前確認

医療費控除とは、医療費の支払いが1年間で10万円(総所得が200万円未満であれば、総所得金額×5%)を超える場合、所定の手続きを行うことで、所得税の還付や住民税の減額など税金が軽減される制度です。

医療費控除の具体的な手続きを行う前に、医療費控除の対象金額の計算方法、および、医療費控除の対象となる医療費を確認しておくとよいでしょう。

医療費控除の対象金額は、以下の計算式で算出します。

※1:所得が200万円未満の場合は所得の5%

医療費控除の対象となる医療費は、医師による診療費用、医薬品の購入費用に限らず、通院時の交通費や入院の際の食事代や部屋代など、幅広く認められています。ただし注意点もあるため、事前に下記の国税庁のホームページで確認することをおすすめいたします。

参考:医療費控除の対象となる医療費(国税庁)

医療費控除の具体的な手続きとは?

マイナンバーカードなしで、医療費控除の確定申告を行う方法は2種類あります。 一つは「書面」による確定申告、もう一つは「ID・パスワード方式」を使ったオンラインでの確定申告です。

それぞれ、手続きの方法をみていきたいと思います。

「書面」による医療費控除の確定申告

確定申告に必要となる書類を作成し、税務署に持参または郵送する方法です。書類の作成を手書きで行うか、PCやスマホで行うかで作成方法が異なります。

手書きで書類の作成を行いたい場合は、国税庁が提供する確定申告書のPDFファイルを印刷し、必要事項を記入して作成します。確定申告書のPDFファイルの書き方については、下記の国税庁のホームページをご確認ください。

参考:令和3年分所得税及び復興特別所得税の手引き(確定申告書A用)(PDF/15,113KB)

手書きではなく、PCやスマホで行う場合は、国税庁が提供するオンライン「確定申告書等作成コーナー」を利用して作成します。具体的な作成方法については、以下この記事で詳しく解説します。

※医療費控除P26

「ID・パスワード方式」を使ったオンラインで確定申告

「ID・パスワード方式」による医療費控除の確定申告とは、事前に税務署に足を運びID・パスワードを発給してもらい、そのID・パスワードを使ってオンラインで医療費控除の確定申告を行う方法となります。

ID・パスワードの発給
税務署に足を運び、税務署の職員と対面による本人確認を行います。
「ID・パスワード方式の届出完了通知」が発行されます。

オンラインでの医療費控除の確定申告
国税庁が提供するe-Tax(イータックス)を利用してオンラインで確定申告を行います。具体的には、「確定申告書等作成コーナー」で必要書類の作成と提出を行います。以下この記事では、PC版「確定申告書等作成コーナー」を解説します。

「確定申告書等作成コーナー」の操作手順

PCでインターネットに接続し、国税庁の「確定申告特集」サイトにアクセス

国税庁の「確定申告特集」サイトにアクセスし、赤色の「確定申告等の作成はこちら」をクリックします。

e-Tax(イータックス)の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、左側「作成開始」をクリックすると、別ウィンドウで、「確定申告書等作成コーナー」が起動します。これ以降の操作は、「確定申告書等作成コーナー」のほうで行います。

確定申告書の作成を開始し、左から3番目のID・パスワード方式を選択しクリックします。

IDとパスワードを入力し「次へ」をクリックします。

右下「申告書を作成します」をクリックします。

以上の操作で事前準備が完了し、「申告書等の作成」へと進みます。 続いて、画面の指示に従って必要事項を入力していきます。

「次へ進む>」をクリックします。

これより「申告書等の作成」へと進みます。画面の案内に従って、必要事項を入力していきます。

作成する確定申告の提出方法として「e-Taxにより税務署に提出する。」選択します。

e-Tax(イータックス)で申告に関する質問に回答

給与以外の申告する収入の有無や、源泉徴収票の枚数など、質問への回答を行った上で、「次へ進む」をクリックします。

画面に従い、源泉徴収票の入力を行います。

初めて入力を行う場合は、自動計算用の「xmlデータ」はありませんので、「いいえ」を選択します。続いて、「入力する」をクリックします。

あらかじめ用意している源泉徴収票を見ながら、必要事項を入力します。

事業所得や不動産所得等がある場合は、次の画面で入力します。 入力が終わったら「入力終了(次へ)>」をクリックします。

医療費を入力

次に「医療費控除」欄の右にある「入力する」をクリックします。

左側「医療費控除を適用する」をクリックします。

入力方法を選択し、「次へ進む」をクリックします。 ここでは「医療費の領収書から入力して、明細書を作成する」を選択しています。

「医療費の入力」では、医療費の領収書や、医療費のお知らせ(健康保険から送付された医療費通知)などの書類を手元に置きながら入力を行っていきます。

医療費の区分に関しては、治療や入院は「診療・治療」、薬を処方された場合や医薬品の購入は「医薬品購入」、介護サービスを利用した場合は「介護保険サービス」、通院費は「その他の医療費」を入力します。詳しくは、国税庁のホームページをご確認ください。

参考:医療費の領収書の入力例(国税庁)

次の画面で、計算結果を確認します。

医療費控除の欄に金額が表示されていますので、内容を確認します。訂正がある場合や詳しく内容を確認したい場合は、「訂正・内容確認」をクリックします。

税額控除・その他の項目の入力がある場合は、次の画面で入力します。

入力が終わると、還付される金額が表示されます。

「次へ」をクリックし、次の画面で「住民税に関する事項」に該当する場合は、必要事項を入力します。

以上で入力が完了となります。

受け取り方法の入力と申告書等の送信・印刷

続いて、受取方法の選択や住所氏名の入力等を行います。

「ID・パスワード方式」の場合、最後に申告書等の送信・印刷を行って手続きが完了となります。

「ID・パスワード方式」ではなく、「書面」で医療費控除の確定申告を行う場合には、下記の書類を税務署に郵送または持参し提出します。

税務署に提出する書類
・「確定申告書等作成コーナー」で作成した確定申告書と医療費控除の明細書 ・源泉徴収票
・マイナンバーの情報(マイナンバー通知カード、または、マイナンバーの記載がある住民票の写し)
・身元確認書類(運転免許証、保険証、パスポートのいずれかの写し
・医療費通知(医療費のお知らせ)(原本)

詳しくは、下記国税庁のホームページをご確認ください。

参考:【申告書の提出】Q20 所得税等の確定申告書を提出する際に必要な書類はどのようなものですか。(国税庁)

この記事では、「【2022年版】マイナンバーカードなしで、医療費控除の確定申告を乗り切るには?」と題し、マイナンバーカードを持っていない人に向け医療費控除の手続きに関して解説しました。この記事を参考に、ぜひ手続きを行っていただければと思います。

なお、来年以降も医療費控除の確定申告を行う可能性がある場合は、事前にマイナンバーカードの交付申請手続きを行っておくことをおすすめします。マイナンバーカードがあるとどのように便利になるのか、下記に解説記事がありますので合わせてご覧ください。

参考:e-Taxでのマイナポータルとマイナンバーカードの基礎知識

著者:加々井 隆(かがい たかし) Mikatus(ミカタス)株式会社

2018年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するMikatus(ミカタス)株式会社に入社。マーケティンググループに所属し、Web広告、SEO、広報PR等のマーケティング業務に従事。税理士向けWebメディア「Lanchor(ランカー)」のホワイトペーパー制作やメルマガ運営など、税理士に役立つ情報や、ビジネスに役立つ情報をさまざまな切り口から発信している。