Windows 11でAIアシスタント「Claude(クロード)」を仕事に組み込む方法を紹介する本連載。前回は、Claudeを使い始める前に押さえておくべき基本知識を整理した上で、手始めとして取引先への訪問お礼メールの下書きを作成してみた。

今回は依頼、お断り、お詫びといった実際のビジネスシーンを題材に、Claudeでメールを作成する方法を紹介する。あわせて、AIに意図を正しく伝えるためのプロンプトの基本も解説する。

なぜメールの下書きから始めるのか

Claudeを業務で使う第一歩としては、メールの下書きは最適な題材といえる。その理由は3つある。

1つ目は、ほとんどの人が毎日のように書いているという点だ。営業職でも事務職でも管理職でも、メールを一通も書かない日は珍しいだろう。それだけ効果を実感しやすい。

2つ目は、失敗してもリスクが小さいこと。Claudeが出した文章はあくまで下書きであり、送信前にはかならず自分が目を通さなければならない。したがって、おかしな箇所があったら手で直せばいいだけなので、いきなり業務システムを触らせるような怖さがない。

3つ目は、メールがプロンプトの練習にちょうどいいという点だ。プロンプトでAIに指示を出す際には、その業務に関する背景の情報をできるだけ正確に伝えることが重要になる。メールの場合は、誰に、何を、どんなトーンで伝えたいかを言葉で表現する必要がある。この作業は、そのままClaudeへの指示文を組み立てる練習になる。

プロンプトの基本: 4つの要素を伝える

Claudeに良い下書きを書いてもらうコツは、次の4つの要素を伝えることだ。

  • 誰に送るメールか(取引先、上司、社内の別部署など)
  • 何のための連絡か(依頼、お礼、お詫び、日程調整など)
  • どんな事情・背景があるか(それまでの経緯や前提となる情報)
  • どんなトーンにしたいか(丁寧に、簡潔に、柔らかくなど)

出力がしっくりこないときは、この4要素のどれかが足りていないことが多い。例えば、「なんだか他人行儀すぎる」と感じたら、背景情報が足りていないのかもしれない。その場合、送信相手との関係性を情報として付け加えればよい。

一度で完璧な指示を書こうとする必要はない。前回も説明したように、Claudeは何度でも修正に応じてくれる。繰り返しやり直しの指示を出したとしても気分を害したりすることはない。まずは基本となる情報をざっくり伝えて、出てきた下書きを見ながら調整していこう。

それでは、よくある3つの場面を順に見ていこう。

場面1: 依頼する内容を、角が立たないように伝える

他の部署や取引先に何かをお願いするメールは、書き方ひとつで相手に与える印象が変わり、それが相手の行動に影響を与える可能性がある。単に用件だけを並べたのでは素っ気ない印象を与えるが、気を遣いすぎても要点がぼやけてしまう。このさじ加減をClaudeに任せてみよう。

例えば、次のように指示する。

取引先に資料の送付をお願いするメールを書いてください。

- 相手:いつもお世話になっている取引先の山田様
- 依頼内容:先日の打ち合わせで話に出た製品カタログのPDFを送ってほしい
- 事情:社内で検討資料として共有したいため、できれば今週中にいただきたい
- トーン:丁寧だが、急かしている印象は与えたくない

ポイントは、「今週中にほしいが急かしたくない」という微妙なニュアンスまで言葉にしている点にある。Claudeはこうした要望を汲み取って、催促が前面に出ない柔らかい依頼文に仕上げてくれる。筆者の環境では次のような内容になった。

件名:製品カタログのご送付について

山田様

お世話になっております。

先日の打ち合わせの際にお話に出ておりました製品カタログのPDFデータについて、社内で検討資料として共有したく、お送りいただけますでしょうか。

恐縮ですが、社内での検討の都合上、可能であれば今週中にいただけますと助かります。ご多忙のところ大変恐縮ですが、ご都合のよいタイミングで構いませんので、ご対応いただけますと幸いです。

何卒よろしくお願いいたします。

出てきた下書きを読んで、違和感があれば指示を追加して書き直してもらおう。例えば「もう少しこちらの検討状況を具体的に書いたほうが、相手も急ぎ具合を理解してくれそうだ」と思ったら、その旨を伝えて修正してもらえばよい。

場面2: 関係を損なわずに辞退の意思を伝える

取引先からの依頼や提案を断るメールはなかなか筆が進まないものだ。相手との関係を損なわないように「NO」の意思を伝えるのは簡単ではない。

このようなシーンでClaudeを使う場合のコツは、断る理由と、関係を続けたい意思の両方をプロンプトに含めることにある。例えば、次のように指示してみよう。

取引先からの提案を、今回は見送る旨を伝えるメールを書いてください。

- 相手:新しいツールの導入を提案してくれた業者の佐藤様
- 断る内容:提案はありがたいが、今期は予算の都合で導入を見送りたい
- 伝えたいこと:提案内容自体は評価している。来期以降、改めて検討する可能性は残しておきたい
- トーン:感謝を示しつつ、丁重に断る

予算の都合という理由と、来期以降の可能性は残すという前向きな姿勢の両方を記述しているのがポイントだ。これが明確でないと、ただ冷たく突き放すだけの文面になりかねない。筆者の環境では、次のようなメールを作ってくれた。

件名:ツール導入のご提案について

佐藤様

お世話になっております。

先日はツール導入のご提案をいただき、ありがとうございました。資料を拝見し、内容については大変興味深く、弊社の業務改善にもつながるものと感じております。

しかしながら、誠に申し訳ございませんが、今期は予算の都合により、今回は導入を見送らせていただきたく存じます。

ご提案いただいた内容自体は高く評価しておりますので、来期以降、状況が整いましたら改めて検討させていただければと考えております。その際は、改めてご相談させていただけますと幸いです。

今回はご期待に沿えず申し訳ございませんが、何卒ご理解いただけますようお願いいたします。

引き続きよろしくお願いいたします。

場面3: 謝罪の意を、誠実かつ迅速に伝える

ミスやトラブルへのお詫びメールは誠実さとスピードが命だ。しかし早く連絡しなければと思って焦って書くと、かえって言い訳がましくなったり、何に対する謝罪なのかが曖昧になったりしがちだ。

お詫びメールの下書きを作る際には、「何が起きたか(事実)」と、「今後どうするか(対応)」の2点は確実にClaudeに伝えておきたい。例えば次のように指示してみよう。

納品が遅れたことへのお詫びメールを書いてください。

- 相手:取引先の鈴木様
- 経緯:本来は昨日納品予定だった資料が、こちらの確認漏れで本日にずれ込んだ
- 対応:本日中にかならず納品する。再発防止のため社内のチェック体制を見直す
- トーン:言い訳をせず、誠実にお詫びする

ここでは「言い訳をせず」というトーン指定が効いてくる。これを入れることで、Claudeは素直に非を認めて対応を示すという文面に仕上げてくれるので、誠実さを表現できる。筆者の環境では次のようなメールになった。

件名:納品遅延のお詫び

鈴木様

お世話になっております。

本来であれば昨日中にお納めすべき資料につきまして、弊社の確認漏れにより本日までずれ込んでしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。

ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げるとともに、本日中に必ず納品させていただきます。

今後このようなことが起こらないよう、社内の確認体制を見直し、再発防止に努めてまいります。

ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。

出力を調整して自分の言葉に近づける

下書きが出てきたら、その文面をそのまま使うのではなく、自分の言葉として調整していきたい。前回説明したように、最初の出力は完成品ではなく、あくまでもたたき台だ。ここでは、とくによく使う調整の指示を3つ紹介しよう。

  • 長さを変える: 「もっと簡潔に、3行程度で」「もう少し丁寧に肉付けして」など、相手や状況に応じて分量を調整する
  • 表現を整える: 「『させていただく』を多用しているので、自然な敬語に直して」「専門用語を減らして、誰が読んでもわかるように」など、気になる文面は具体的に指摘して直してもらう
  • バリエーションを出させる: 「同じ内容で、もう少しフランクな案も出して」「丁寧め・簡潔めの2パターンを並べて」「件名だけ3案出して、選ばせて」など、いくつかの案を並べて比べたいときに使う

これらの指示は、メールに限らずあらゆる文章作成で使える。覚えておくと以降の回でも役に立つはずだ。

修正指示の例: バリエーションを出させて選ぶ

最後に、ここまでの内容を実際に試してみよう。とりわけ、先ほど紹介した「バリエーションを出させる」指示は、手を動かして体感するのが一番だ。まずは下書きの土台として次のような指示を出してみよう。直近でメールを書く予定がある場合は、指示の内容を自分用に置き換えれば、より実感が湧くはずだ。

社内の別部署に、来週の打ち合わせの日程調整をお願いするメールを書いてください。

- 相手:同じ会社の企画部・田中さん
- 依頼内容:新プロジェクトのキックオフ打ち合わせの日程を決めたい
- 事情:来週中に1時間ほど、できれば対面で実施したい
- トーン:社内向けなので、丁寧すぎず簡潔に

筆者の環境では次のような文面になった。

件名:来週の打ち合わせ日程について

田中さん

お疲れ様です。

新プロジェクトのキックオフ打ち合わせについて、来週中で1時間ほどお時間をいただけないでしょうか。
できれば対面で実施したいと考えています。

ご都合のよい日時をいくつか教えていただけると助かります。よろしくお願いします。

出てきた下書きを読んで、「もう少し候補日を絞ってほしい」「会議の目的も一行添えてほしい」など、気づいたことを遠慮なく指摘してみよう。指示を重ねるごとに、文面が自分の意図に近づいていく感覚がつかめるはずだ。例えば、最初の下書きが出たあとに次のように頼んでみる。

同じ内容で、もう少し硬めのトーンの案も出してください。 
あわせて、件名だけ別に3パターン提案してください。

すると、次の例のようにトーンの違う文面や複数の件名の案が提示されるので、自分の感覚に合うものを選んだり、使いたい部分だけを参考にして組み合わせたりできる。

件名:来週の打ち合わせ日程について(案)

田中様

お疲れ様です。

新プロジェクトのキックオフ打ち合わせにつきまして、来週中に1時間程度のお時間を頂戴できますでしょうか。可能であれば対面での実施を希望しております。

ご都合のよろしい日時をいくつかお知らせいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。

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件名候補:

1. 来週のキックオフ打ち合わせ日程のご相談
2. 新プロジェクトキックオフ:日程調整のお願い
3. 来週中の打ち合わせ日程について

1つの正解を引き当てようとするのではなく、選択肢を出させて選ぶやり方も、Claudeを使う上で覚えておくと役に立つ。

注意: 宛名・固有名詞・事実関係は自分で確認する

メールの下書き作成は便利だが、任せきりにしてはいけない部分がある。まず、宛名や会社名、固有名詞の取り扱いだ。Claudeは渡した情報をもとに文章を組み立てるが、こちらが伝えた名前を取り違えたり、指示にない肩書きを補ってしまったりすることもある。送信前にこれらの情報が正しいかをかならず確認しよう。

日付、金額、数量といった具体的な情報にも注意が必要だ。ハルシネーション(AIがもっともらしい誤りを作ること)はメールの下書き作成でもよく起こる。「来週水曜」と伝えただけなのに勝手に具体的な日付を入れる、などといった具合だ。事実に関わる箇所は、自分が伝えた情報と食い違っていないかをかならず見比べて確認しなければならない。

そしてもう1つ、社外秘の情報や個人情報を、安易にプロンプトに書き込まないという点も意識しておきたい。Claudeはあくまでも第三者が提供するサービスだ。背景情報を正確にメールに反映するために、つい具体的な顧客名や契約内容まで書いてしまいたくなるが、本当にその情報を入力してしまっていいのかは一度立ち止まって考えなければならない。

次回は、Claudeを使う上で避けて通れない「ハルシネーション」、すなわちAIがウソをつく仕組みとその対策について解説したい。