働き方改革を行うためには、どの部門からRPA化すべきか

興味深い調査結果がある。全国の人事部門または働き方改革に係わる部門に所属している男女計500人に対して実施した調査で、働き方改革を実際に推進している部署は「人事部門」が最も多く、働き方改革が進んでいない理由は「通常業務が忙しく考案する時間がない」ことが最も多いという結果が出た。どうやら、人事部門が忙しいため、働き方改革が思うように進んでいないと感じている人が多いようだ。

  • 働き方改革に関する調査

    働き方改革を実際に推進している部署はどこかという質問に対する回答

  • 働き方改革に関する調査

    働き方改革が進んでいない原因は何だと思うかという質問に対する回答

人事業務は他部門に比べて、定型的な業務の割合が多いのが一般的。重要ではあるが、定型的な業務に時間を取られていては、働き方改革を推進するための戦略立案などに時間を割くことができない。

ならば、まず人事部門にRPAを導入し、業務の生産性を向上させることができれば、働き方改革の施策を検討するための時間を捻出できるのではないだろうか。

人事部門で負担の大きな業務といえば、新入社員が大量に入社する4月に発生する給与口座の登録・変更業務がある。社員からの登録・変更申請を元に、銀行コードを全銀協のサイトで確認して、人事システムに登録・変更する作業だ。また、通勤交通費の申請・変更処理も非常に煩雑。申請の受領、記載内容の過不足確認、経路検索サイトを参照しての適正経路、定期券金額の確認、払い戻し金額の算出、新規定期内容の人事システムへの登録、本人へ連絡など、面倒な作業を人間が対応している。あまりに面倒なので、適正経路確認を省略している会社もあるほどだ。

これらの作業は、すべてRPAで代替することが可能。作業時間を従来より短縮させるだけでなく、人為的なミスも減らすことができる。24時間365日稼働できることもロボットのメリットだ。

たとえば、RPAテクノロジーズの「BizRobo」と、人事管理ソフトウェア「SAP HCM」を組み合わせた、弊社のRPAソリューション「HRRobo For SAP HCM」では、SAP HCMの人事/給与業務のうち、約70%以上の操作・運用をロボットで代行可能という分析結果が出ている。導入効果として、給与口座の登録・変更業務の代行では、人間が10分/件を費やしていた作業を30秒/件で処理し、交通費関連の業務では、従来7分/件を費やしていたものを1分/件で処理できるという結果が出た。速いものでは、人間と比較して処理速度が20倍以上(対象業務により処理速度は異なる)である。

このほかにも、年末調整業務の保険料控除申告書と確証の照合確認など、人事部が多大な工数を費やして対応している定型業務をRPAに任せることも可能だ。手のかかる定型業務をRPAが代行してくれれば、人事部門にも余裕ができ、働き方改革を検討するための時間を捻出できるのではないだろうか。

RPAは人事部門から導入することが理想的

人事部門で働き方改革の実施を検討している企業だけが、RPAを人事業務に率先して導入すべきかというと、そうではない。定型業務に煩わされている部門は多いが、私はまず人事部門からRPAを導入することを推奨している。ロボットが高いパフォーマンスを発揮するためには、従業員と同様に相応のサポートが必要だと考えているためだ。

人事の考え方の1つに「従業員ライフサイクルマネジメント」がある。入社後の各ライフサイクルをサポートすることで、従業員の育成やモチベーションの向上を図り、人的資源の有効的な活用を目指すというものだ。これをロボットに置き換えたのが「Robotic Life Cycle Management」と呼ばれる考え方。ロボットにも「採用・配置・評価・開発(育成)・退職」というサイクルがあり、ステージに応じたサポートが必要なのである。

具体的には、まず、会社としてどのような能力を持ったロボットが戦力として必要かを検討するところからスタート。従業員と同様に、会社で必要なロボットを計画的に開発(採用)することが求められる。次に、新たなロボットは、どの部門に配置することが有効か検討。同様のロボットが他部門でも活用できないかを検討したうえ配置する。

いざ、業務を開始した後は、生産性向上やROIなど、会社が掲げたRPA化目標に見合った効果を出しているか検証/評価する。想定した効果が出ていないロボットについては、原因を究明し修正(教育)をしていかなければならない。そして、評価の結果、廃止すべきロボットが出てきた場合は、廃止(退職)するというサイクルをたどる。

この「Robotic Life Cycle Management」を進めていくためには、人事部門が従業員と同様、集中的にロボットを管理することが効率的だ。それゆえ、全社でRPAを導入する計画においても、まずは人事部門から導入して、ロボットの特性を理解したうえで他部門へ展開する方法が理想的だと考えている。

著者プロフィール

秋葉尊

秋葉 尊

オデッセイ 代表取締役社長

大学卒業後、NECに入社。
20年にわたり中堅企業や大企業に対するソリューション営業やマーケティングを担当。
2003年5月にオデッセイ入社、代表取締役副社長に就任。
2011年4月代表取締役社長に就任、現在に至る。

ATD(Association for Talent Development)タレントマネジメント委員会メンバー、HRテクノロジーコンソーシアム会員、日本RPA協会会員を務める。