日本製鉄は11月5日、2026年度第2四半期(中間期)の決算を発表し、記者会見を開催した。 2026年度の通期業績予想について、実力ベースの事業利益を前回公表の7000億円から7700億円以上へと上方修正した。米国の鉄鋼大手U.S.Steelの好調が主な要因となっている。

会見では、上席常務執行役員CFOの岩井尚彦氏が登壇し、決算概要や今後の事業方針について説明した。

  • 日本製鉄 上席常務執行役員 CFOの岩井尚彦氏

    日本製鉄 上席常務執行役員 CFOの岩井尚彦氏

2026年度の実力利益予想を7700億円以上に上方修正

2026年度上期(4~9月)の売上収益は5兆8441億円、連結事業利益は3074億円となった。

また、在庫評価差などを除き、同社の実力を示す指標としている「実力ベース事業利益」は3133億円となった。前年同期の3457億円からは減益となったものの、8月に公表した見通しを633億円上回る結果となった。

岩井氏は、上期の業績について、中東情勢に伴うコスト上昇や9月の台風・豪雨による生産・出荷への影響があったと説明。こうした中、価格転嫁やコスト改善など、各事業分野で収益改善に取り組んだ結果、前回見通しを上回る利益を確保できたとした。

こうした上期の実績を踏まえ、2026年度通期の売上収益の見通しは従来の11兆2000億円から11兆7000億円に上方修正。実力ベース事業利益も7000億円から7700億円以上に引き上げた。

  • 2026年度の実力ベース連結事業利益見通し

    2026年度の実力ベース連結事業利益見通し

2026年度通期の国内事業の実力ベース事業利益は3800億円と従来予想を据え置いた一方、海外事業は3200億円から3900億円に上方修正した。特にU.S.Steelの好調が業績を押し上げており、海外事業が全体の収益を牽引する見通しだ。

また、上期の実力ベース事業利益3133億円に対し、下期は4567億円を見込む。同社は、下期について年率9000億円以上の利益水準を確保し、2030年度に掲げる連結実力利益1兆円以上の実現に向けた基盤を構築する方針だ。

U. S. Steelの利益は2300億円以上へ、操業改善も進展

今回の業績予想の上方修正を牽引しているのが、2025年に買収した米国の鉄鋼大手U.S.Steelだ。

2026年度の海外事業におけるU. S. Steel(スロバキアのNSSKを含む)の実力ベース事業利益は、2300億円以上となる見通しで、従来予想の1800億円から500億円引き上げた。前年度は56億円の赤字だったが、2026年度は大幅な黒字を見込む。ただし、前年度の連結対象期間は買収後の9カ月間だった。

  • U.S.Steel(NSSK含む)2026年度実力利益見通し

    U.S.Steel(NSSK含む)2026年度実力利益見通し

岩井氏は、米国の鋼材価格が上昇を続けていることについて、「市況の上昇は単なる関税政策では説明できない」と述べ、米国経済や鉄鋼需要の強さが背景にあるとの認識を示した。

また、米国内の鋼材流通在庫が過去最低水準にあることなどにも言及。米国市場の成長性を見据えてU.S.Steelを買収した判断は正しかったとの考えを示し、米国内の需要に対応する地産地消型の事業戦略が成果につながっていると説明した。

加えて、U.S.Steelの利益改善には、設備投資の効果や操業シナジーなども寄与している。岩井氏によると、2025年度実績から2026年度見通しへの利益改善額のうち、約1300億円が設備投資の効果や操業シナジーなどの収益改善努力によるものだという。技術者派遣を通じた生産設備の安定稼働や操業改善などを進めている。

具体的には、ゲーリー製鉄所の第14高炉を100日以下の短工期で改修したほか、グラナイトシティ製鉄所では第B高炉を2年半ぶりに再稼働させた。また、Big River 2では高水準で安定した生産を続けており、2026年8月には月次生産量の新記録を更新した。

こうした取り組みにより、2026年度には年間3億ドルの操業シナジーを見込む。2030年に向けては、NSSKを含めて年間5億ドルの操業シナジーを目標としており、取り組みは順調に進んでいる。

  • U.S.Steel 製造実力強化・操業シナジー先行発揮

    U.S.Steel 製造実力強化・操業シナジー先行発揮

U.S.Steelについては、2030年度に実力ベース事業利益3000億円以上を目標としている。岩井氏は、これは現在よりも低い鋼材市況を前提とした計画であると説明し、好調な市場環境が続けば、目標を前倒しで達成する可能性もあるとの見方を示した。

国内製鉄事業は苦戦、価格転嫁と生産回復を推進

一方、国内事業では厳しい事業環境が続いている。

2026年度上期の国内事業の実力ベース事業利益は1452億円となり、前年同期の2579億円から減少した。国内の単独製鉄事業では、原燃料価格の上昇に対する販売価格への反映の遅れや、9月の台風・豪雨による生産・出荷への影響などがあった。

こうした状況を踏まえ、単独製鉄事業の通期利益予想は、従来の1200億円から1000億円に下方修正した。

  • 国内事業における単独製鉄事業の利益推移と2026年度の見通し

    国内事業における単独製鉄事業の利益推移と2026年度の見通し

これに対し、鉄グループ会社では、原燃料コストの上昇などに対して販売価格への反映を進め、通期利益予想を1700億円に上方修正。また、非鉄3社ではAI・半導体関連などの成長分野を中心に収益が拡大しており、3社とも過去最高益を見込む。これらを踏まえ、国内事業全体の通期利益予想は3800億円に据え置いた。

  • 国内事業における鉄グループ会社の利益推移と見通し

    国内事業における鉄グループ会社の利益推移と見通し

  • 国内事業における非鉄3者の利益推移と見通し

    国内事業における非鉄3者の利益推移と見通し

下期については、原燃料価格の上昇分を販売価格へ反映させるとともに、国内市況分野での追加値上げを進める方針だ。また、台風・豪雨による生産・出荷への影響からの回復や、名古屋製鉄所の新熱延設備の立ち上げによるコスト改善効果も見込んでいる。