日本製鉄は11月4日、波崎研究開発センターの試験還元炉で、還元材に水素を100%使用し、低品位の鉄鉱石から直接還元鉄を試験製造することに成功したと発表した。300時間を超える連続操業を行い、累計1000t超の還元鉄を製造したという。
シャフト炉型の試験還元炉を使用
試験に使用したのは、2026年3月に運転を開始したシャフト炉型の試験還元炉で、炉高は約60m、生産能力は1t/h。原料には、現行の高品位鉄鉱石(直接還元グレードペレット)より品位の低い鉄鉱石(高炉グレードペレット)を用いた。
同社は「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050」に基づき、国の支援を受けながら、「大型電炉での高級鋼製造」「高炉での水素還元技術」「水素による還元鉄製造」の3つの超革新的技術の開発を進めている。
このうち「水素による還元鉄製造」は、高炉を使わず、水素を還元材として還元炉で還元鉄(DRI:Direct Reduced Iron)を製造する技術で、製鉄プロセスからのCO2排出量を大幅に削減できるとされる。
取り組みの背景
世界では現在、天然ガスを利用した商用還元炉で年間約1億tの還元鉄が生産されている。ただ、天然ガスによる還元ではCO2が排出されるため、脱炭素化に向けた水素還元技術の開発が求められている。
一方、水素単独による還元は吸熱反応のため炉内温度が下がりやすく、安定操業には炉内温度を適切に保つ高度な熱補償技術が必要になるという。
また、既存の商用還元炉は、鉄分含有率が高く不純物の少ない高品位鉄鉱石の使用を前提としている。高品位鉄鉱石の供給には限りがあり、将来の鉄源確保の観点から、生産量が豊富な低品位鉄鉱石を活用できる技術の確立が重要とされる。
しかし低品位鉄鉱石は還元時に粉化しやすく、炉内の通気性や反応制御に悪影響を及ぼすことから、その利用には大きな技術的課題があった。
今回、同社は炉内温度の低下を抑える熱補償技術と、低品位鉄鉱石の粉化を抑える操業技術を用い、試験還元炉で安定操業を実現した。同社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた「水素による還元鉄製造」の実用化に向け、大きな前進になるとしている。
今後の取り組み
今後も試験還元炉での試験を継続し、直接還元技術の確立と操業条件の最適化を進める。2027年度からはスケールアップ技術を含めた開発を推進し、2040年頃までの実機化技術確立を目指す考えだ。
なお、同社の取り組みは2022年1月にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業に採択され、2023年11月には基金の拡充が決定した。このうち「製鉄プロセスにおける水素活用/水素だけで低品位の鉄鉱石を還元する直接水素還元技術の開発」は、日本製鉄、JFEスチール、金属系材料研究開発センターの3社によるコンソーシアムで推進しているとのことだ。

