この半導体ニュースのまとめ

・インフィニオンが同社初のRISC-V採用MCU「AURIX RC1」を発表
・最大12個の32ビットコアとエッジAI向け並列処理ユニットを搭載可能
・SDVやフィジカルAI向けに展開し、2027年上半期のサンプル提供を目指す

Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)は11月4日、同社初のRISC-V採用マイクロコントローラー(MCU、マイコン)プラットフォーム「AURIX RC1」を発表した。

従来型MCUから、MCUとマイクロプロセッサ(MPU)を組み合わせたハイブリッドデバイスまで拡張できる共通プラットフォームとして、ソフトウェア定義車両(SDV)や、そのほかのソフトウェア定義(SDx)、フィジカルAIアプリケーションに展開する。

同社は、独ミュンヘンで11月10日から13日まで開催される「electronica 2026」にてAURIX RC1ファミリのコンセプトを公開し、2027年上半期のサンプル提供を目指すとしている。

  • インフィニオンのRISC-V採用MCUプラットフォーム「AURIX RC1」

    インフィニオン初のRISC-V採用MCUプラットフォーム「AURIX RC1」のイメージ (出所:インフィニオン)

車載システムの各領域で使える共通RISC-V基盤

SDVでは、車両各所の電子制御ユニット(ECU)に分散していた機能やソフトウェアを、セントラル・カー・コンピュータやゾーンコントローラへ統合する動きが進んでいる。

AURIX RC1は、用途ごとに異なるMCUを用意するのではなく、車載システムの各領域で共通利用できるプラットフォームを提供することで、こうしたアーキテクチャの開発を容易にする。

インフィニオンが展開してきたAURIXのリアルタイム制御や機能安全に関する技術と、ボディ、コネクティビティ、ディスプレイ用途を対象とするTRAVEO T2Gの強みを統合。ゾーン、ボディ、シャシー制御、バッテリーマネジメントシステム、パワートレイン、運転支援向けセーフティマネジメント、コックピットまで幅広い用途をカバーする。

RISC-Vのモジュール性を活用し、各製品を特定用途向けに最適化しながら、ソフトウェアや開発ツール、設計ノウハウを別のドメインでも再利用できるようにすることで、開発期間の短縮と異なる車載領域への機能展開を支援するともしている。

  • AURIX RC1を活用した車載ゾーンアーキテクチャ

    AURIX RC1を車載システムの各領域へ展開するゾーンアーキテクチャのイメージ (出所:インフィニオン)

最大12コア、40MBメモリから64ビットMPU機能まで拡張

AURIX RC1は、アプリケーションに応じて最大12個の32ビットプロセッシングコア、エッジAI向けの高度な並列処理ユニット、最大40MBの組み込みメモリを搭載する。

処理リソースとアプリケーション固有のパワーマネジメント機能を組み合わせることで、用途ごとに求められる演算性能と消費電力のバランスを調整できるようにする。

また、AURIX RC1ファミリのハイエンド製品として、64ビットのマイクロプロセッサ機能を追加した製品ラインアップも計画する。リアルタイム制御と機能安全を担うMCUの領域をMCU/MPUアーキテクチャへ拡張し、セントラル コンピュータへより多くの機能を統合できるようにする。

インフィニオンのオートモーティブ事業部プレジデントを務めるピーター シーファー氏は、ソフトウェアによって車両や物理システムが継続的に進化する中、MCUにも高い構成自由度と拡張性、適応性が必要になると説明。AURIX RC1では、RISC-Vの柔軟性と、同社が安全性を重視するリアルタイム処理で培ってきた技術を組み合わせ、SDV向けの演算処理と制御をフィジカルAIへ広げるとしている。

ASIL Dや耐量子暗号、高速車載ネットワークにも対応

AURIX RC1は、車載機能安全の最高水準となるASIL Dまでのアプリケーションをサポートするよう設計される。サイバーセキュリティでは、車載サイバーセキュリティ規格「ISO/SAE 21434」や欧州連合(EU)のサイバーレジリエンス法などへの適合を想定したメカニズムを搭載する。高水準の物理的保護とクリプトアジリティを実現するハードウェアも備え、耐量子暗号を含む将来のセキュリティ要件へ対応できる設計とする。

車載ネットワークについては、「CAN-XL」「10BASE-T1S」「マルチギガビット イーサネット」などの通信規格をサポートするほか、一部のデバイスには、「BRIGHTLANE」イーサネットスイッチ技術とハードウェアアクセラレーションによるデータルーティング機能も統合。制御と通信の機能を統合することで、外付け部品の削減とアプリケーション プロセッサの処理負荷低減につなげるとする。

また、AURIX RC1に対応する「OPTIREG」電源ソリューションも展開し、製品ラインアップ全体で拡張可能なパワーマネジメントを提供することを予定している。

DRIVECOREで既存ソフトウェアの移行負担を軽減

AURIX RC1は、インフィニオンとエコシステム パートナーが提供するソフトウェアを事前統合済みのバンドルとして組み合わせるソフトウェアエコシステム「DRIVECORE」によってサポートされており、AUTOSAR、オープンソースソフトウェア、機能安全、サイバーセキュリティへの対応と、既存のAURIXおよびTRAVEO T2Gからの移行を支援するという。

また、バーチャルプロトタイピングを活用することで、AURIX RC1の実機を利用できるようになる前からソフトウェアの開発と検証を開始できるほか、AI支援の移行ツールによって既存のソフトウェア資産の移植を容易化するともしている。

なお、インフィニオンは、車載RISC-Vのエコシステム整備を進めるRISC-V Internationalのプレミアムメンバーであるほか、合弁会社「Quintauris」の創設メンバーでもある。こうした取り組みを踏まえ、ソフトウェアや開発ツール、ミドルウェア、仮想化、システム開発を手掛ける企業との連携を通じ、量産対応の車載RISC-Vソリューションを早期に提供できる環境を整えていくことで、顧客によるソフトウェアの移植性と開発ツールの選択肢を広げ、SDV開発に求められる長期的な拡張性につなげていくとしている。