日立市と日立製作所は11月4日、両者が進める次世代未来都市(スマートシティ)の実現に向けた共創プロジェクトの一環として、メタバース「未来のまちヒタチ」を公開したと発表した。
未来の暮らしを仮想空間で体験できる環境を提供し、市民から評価や提案を集める。フィジカルAIなどを活用した社会インフラの実装に向け、市民参加と意見収集の手法としてメタバースの有用性を検証するという。
メタバースで「未来の暮らし」を体験、市民の意見を収集
日立市と日立製作所は、スマートシティの実現に向けた共創プロジェクトを進めている。市民や地域事業者とともに、未来の社会インフラや暮らしの具体化に取り組むものだ。
両者はこれまで、スマート住宅エリアの実現に向け、ワークショップやアンケートなどを通じて市民との対話を進めてきた。その成果として、2035年の暮らしのコンセプトも策定している。
一方、文章やイラストを中心とした情報発信では、未来の暮らしを具体的にイメージしてもらうことが難しいという課題があった。市民が現在の暮らしと照らし合わせながら将来を考え、意見を出すことにも難しさがあったという。
そこで両者が今回公開したのが「未来のまちヒタチ」である。これまで市民と描いてきた未来の暮らしのコンセプトの一部をメタバース上で体験できるようにした。体験を通じて市民の評価や提案を集め、新たな市民参加の手法としての有用性を検証する。
ミッションを通じて未来の生活や地域の姿を体験
「未来のまちヒタチ」は、スマート住宅エリアにおける未来の暮らしのコンセプトを反映したメタバースである。日立市になじみのある風景の中で、少し先の未来の暮らしを表現している。
参加者は空間内を自由に回遊できる。ミッションを通じて、デジタル技術を活用した快適な暮らしなどを体験する仕組みだ。地域で新たな挑戦に取り組む人々を応援し、交流やにぎわいが生まれる様子なども体験できる。
従来は文章やイラストで示してきた未来の暮らしを、メタバースを通じて直感的に理解できる環境を提供。未来の暮らしを自分ごととして捉えてもらい、実感を伴った対話や意見の創出につなげる狙いだ。
また、気軽にアクセスできるメタバースの特性を生かす。従来の手法では意見を集めにくかった若年層を含め、幅広い層から意見や視点を取り入れる考えだという。
市民参加の手法としてメタバースの有用性を検証
実証では、参加者がメタバース内の各エリアでミッションに取り組む。その過程で意見を投稿できるほか、体験中の対話や体験後のアンケートでも意見を収集する。
収集した結果を基に、未来の暮らしを具体的にイメージできたか、共感や新たな気づきにつながったか、意見を出しやすかったかなども確認。これらを通じ、市民参加や意見収集の手法としてメタバースが有用かを検証する。
日立製作所としては今回の実証で、市民が未来の暮らしや社会インフラにどのような価値を期待しているのかを把握したい狙いだ。市民が感じる不安や課題も分析し、今後取り組むユースケースや社会実装に必要な条件の検討につなげる。
フィジカルAIの社会実装に向け、市民共創モデルの構築へ
今回の取り組みの背景には、フィジカルAIなどを活用した社会インフラの実装がある。プレスリリースではフィジカルAIを、現場のデータから得られたAIの分析・判断を、機器や設備の制御・運用など現実世界の具体的なアクションにつなげる技術と説明している。
自動運転やスマートエネルギーなどを実際の生活空間へ実装するためには、技術を提供するだけでは十分ではなく、市民自身が評価や検証に参加するプロセスが重要になるとしている。
日立市は今回の実証を通じ、市民が未来の暮らしを具体的に考え、意見を発信する機会を広げる。得られた市民の声を生かし、市民と連携したまちづくりを強化する方針だ。
日立製作所は、フィジカルAIなどのデジタル技術を活用したサービスについて、日立グループの技術や事業との連携、事業機会を検討する。さらに、まちづくりにおける市民共創モデルや合意形成手法の知見を全国の自治体へ展開することも視野に入れる。
「未来のまちヒタチ」の公開期間は2026年11月4日~2027年3月5日。日立市民に限らず誰でも参加でき、アカウント登録は不要だ。スマートフォン、PC、タブレットから利用でき、参加費は無料、通信料は参加者が負担する。

