Windows Latestは2026年10月26日(現地時間)、「Windows 11’s new “better performance” toggle shows up, but your current PC will never be able to use it」において、Windows 11のプレビュー版に「Intel Advanced Performance Extensions (Intel APX)」への対応オプションが追加されたと報じた。
Intel APX(以下、APX)は、Intelが2023年に発表した技術で、x86命令セットを拡張することで効率的な性能向上を目指す。2024年10月に更新された資料によると、APXはプログラムから利用できる汎用レジスターを従来の16個から32個に拡張する技術だ。これにより、計算途中の値をレジスターに保持しやすくなり、メモリへの退避や読み込みを減らすことで、処理効率の向上が期待できる。ただし、APXを利用するには対応CPUに加え、ソフトウェア側の対応も必要となる。
MicrosoftはAPXを利用することでWindowsのパフォーマンスが向上すると説明している。しかし、機能の利用には対応CPUが必要で、Windowsの更新だけでは利用できない。
APXとは? 汎用レジスターを倍増して処理効率を高める仕組み
APXの設定オプションは10月23日、Windows InsiderのExperimental(Future Platforms)チャネル向けに公開されたビルド29695で確認された。オプションを発見したXユーザーの@XenoPanther氏は設定画面をXに投稿。開発者向けの設定オプションに「Advanced Performance Extensions(APX)」が追加され、サブタイトルからは「パフォーマンスの向上にWindowsがAPXを使用する」との説明を確認できる。
Intelの資料をもとに推測すると、Windows 11のAPX設定をオンに切り替えることで、プログラムから使用できる汎用レジスターが16から32に倍増するとみられる。APXが有効であれば少なくとも32個の値をレジスターに保持し、複雑な処理を高速に実行できるようになる見込みだ。
CPUレジスターについて簡単に解説すると、これはCPU内部に存在する最小の記憶単位と表現できる。メモリよりも高速に動作し、プログラムカウンターやステータスレジスターなど、目的に合わせた複数の種類が存在する。
その中でも汎用レジスターは用途が限定されないという特徴を持ち、データやアドレスを保持できる。汎用レジスターをどのように扱うかはプログラム次第だが、一般的にCPUで計算を行う場合に、計算途中の値をこの汎用レジスターに保持し、高速な計算性能を維持するために利用される。
保持する値が増加すると、レジスター数を超えることがある。この場合は値をメモリに退避させて処理が破綻しないようにするが、メモリはレジスターよりも低速なため、退避を頻繁に行うとパフォーマンスが低下する。
APXは、汎用レジスターを増やすことで、こうしたメモリへの退避を減らし、パフォーマンスの低下を抑える効果が期待される。
APXでどれだけ高速化する? Intelの試作評価では命令数が減少
Windows 11のプレビュー版でAPXに関する設定が確認されたことで、将来的にWindowsでも同技術が活用される可能性が出てきた。APXによる性能向上は、OSだけでなく、対応するアプリにも及ぶ可能性がある。
Intelの試作段階の評価では、APX向けにコンパイルしたコードは、従来のIntel 64向けコードと比べてメモリからの読み込み命令が10%少なく、書き込み命令は20%以上少なかった。命令数自体も10%減少したという。ただし、これらは試作環境での数値であり、最終的な結果ではない。Microsoftも現時点で、Windows 11のAPX設定による性能差を示すベンチマーク結果を公表していない。
APXには、CPUの分岐予測が外れた際に発生する処理の無駄を減らす効果も期待される。条件付き命令の拡張により、予測が難しい分岐を減らし、処理効率を高めることが可能になるという。予測が外れると、CPUは処理を立て直す必要があり、その間にほかの作業を進めにくくなる。Intelによると、新しい命令を利用することで、こうした予測の難しい分岐に伴う損失を抑えられる可能性がある。
ただし、設定を有効にするだけで、既存のすべてのアプリが高速化するわけではない。アプリ開発者もAPXに対応したプログラムを用意する必要がある。Intelは既存のソースコードを大きく変更せず、再コンパイルによって対応できるとしている。
APXを利用できるCPUは? 既存のIntel製CPUは非対応
Windows Latestによると、2027年登場予定のIntelのNova LakeシリーズはAPXに対応し、サーバ向けのDiamond Rapidsも対応予定とされる。一方、既存のAlder Lake、Raptor Lake、Meteor Lake、Lunar Lake、Arrow Lake、Panther Lakeの各シリーズはAPXに対応していない。
AMD製CPUについては、AMDのRobert Hormuth氏がIntelとの協力に関連してAPXに言及している。ただし、特定のRyzen製品への対応が確定したわけではなく、搭載予定の製品シリーズなどは明らかになっていない。
APXは、Windows 11の更新だけで利用できる機能ではなく、対応CPUとソフトウェアの両方が必要となる。現時点では実際の性能向上を示すベンチマーク結果も公表されていないが、今後、対応CPUやアプリケーションが登場することで、Windows 11の処理性能を高める技術の一つになる可能性がある。

