• アキヨシホラアナナガコムシ。撮影:村上崇史環境保全専門員(2021年9月4日、秋吉台「大久保の小穴」) (出所:京大ニュースリリースPDF)

    アキヨシホラアナナガコムシ。撮影:村上崇史環境保全専門員(2021年9月4日、秋吉台「大久保の小穴」) (出所:京大ニュースリリースPDF)

ナガコムシ科は、昆虫の中でも原始的な特徴を多く有する「コムシ目」に含まれるグループで、腹部の末端に2本の細長い尾角を持ち、主に土壌中や地下環境に生息している。同科Pacificampa属(和名なし)のナガコムシは東アジアに広く分布しているが、本州からの正式な発見はこれまで存在していなかった。

そうした中、京都大学(京大)は、ユネスコ世界ジオパークに認定されている日本最大級のカルスト地域「秋吉台」の複数の洞窟に生息するナガコムシが新種であると10月27日に発表。学名「Pacificampa dodecas Yokogawa, Murakami, & Nakano, 2026」、標準和名「アキヨシホラアナナガコムシ」を提唱している。

同成果は、京大 理学部/大学院理学研究科 動物系統学研究室の中野隆文准教授、京大 理学部の横川智之学部学生、山口県美祢市観光政策課の村上崇史環境保全専門員の共同研究チームによるもの。詳細は、日本動物学会が刊行する、広範かつ学際的な動物学を扱う旗艦英文学術誌「Zoological Science」に掲載された。

新種の発見相次ぐ秋吉台

秋吉台は約12km×8kmの広がりを持つ日本最大のカルスト台地(石灰岩地域)で、その地下には総数450以上に及ぶ洞窟が存在する(現在も未発見の洞窟が存在する可能性がある)。一般人でも一部の洞窟に入ることができ、日本屈指の鍾乳洞として人気の観光スポットとなっている。

複雑に形成された洞窟網には、地表とは異なる特殊な環境に適応した洞窟性動物による固有の地下生態系が存在しており、1920年代から多くの生物学的研究が行われてきた。そして近年は、遺伝子解析技術の飛躍的な進歩や洞窟探検の進展による調査範囲の拡大などを背景に、新種の洞窟性動物の発見が相次いでいる。

今回の研究成果

今回、秋吉台で採集されたナガコムシは形態から他の種とは明確に区別でき、遺伝子解析の結果、未知の種であることが示されたことから、新種として記載された。提唱された標準和名の「アキヨシホラアナナガコムシ」は、秋吉台に生息していることに由来する。

同種は触角と尾角を除いた体長が最大13mmで、これまで最大と考えられていた九州北部の地下環境に生息する「Pacificampa daidarabotchi」を上回る、ナガコムシ科の世界最大種であることが明らかにされた。

なお、今回の発見は、ナガコムシ科全体の分類体系にも一石を投じるものとなった。

遺伝子解析の結果、Pacificampa属は土壌性の「クワヤマナガコムシ属」(Metriocampa)と系統的に近縁の関係にあることが推定された。一方、ナガコムシ科に含まれる「ナガコムシ亜科」と呼ばれるグループが、異なる複数のグループに分かれる可能性が示されたという。これは、ナガコムシ科における分類体系の見直しが必要であることを意味しており、アキヨシホラアナナガコムシの発見は分類学的にも重要な手がかりを与えるものとなった。

アキヨシホラアナナガコムシは新種記載は2026年となったが、実は秋吉台の洞窟に広く生息する真洞窟性動物として、その存在は少なくとも1953年には知られていた。しかし、分類学的研究は行われず、学名のない状態が長らく続いていたという。それから70年以上を経て、今回の新種記載に至った。

秋吉台では近年、「カゲキヨツメジムカデ」や「アカツカメクラヨコエビ」など、新種の洞窟性動物の発見が増加している。今後も、分類学的研究のさらなる進展などによって多くの未知の生物が発見され、新種として記載されることが期待されるとしている。