この半導体ニュースのまとめ
・ルネサスの2026年第3四半期売上高は前年同期比30.2%増の4352億円
・データセンター向けが全社売上高の21%を占め、産業・インフラ・IoTが成長をけん引
・2027年第1四半期からAI向けデジタルパワーの増産効果が本格化する見通し
ルネサス エレクトロニクスは10月29日、2026年12月期第3四半期(7~9月期)決算を発表した。それによると、Non-GAAPベースの売上収益は前年同期比30.2%増、前四半期比7.4%増の4352億円、売上総利益率は59.4%、営業利益は前年同期から473億円増の1505億円、営業利益率は34.6%となった。
親会社の所有者に帰属する四半期利益は1250億円、EBITDAは1734億円。売上収益は7月末時点の会社予想中央値を1.2%上回り、為替と会計上の一過性要因を除く実態ベースでは同1.8%上回った。
データセンター向けが予想を上回って成長
第3四半期の売上収益が事前予想を上回った要因について同社は、データセンター向けの実需拡大、後工程の供給改善に伴う出荷増加、データセンターの空調設備など、直接的な用途の確認が難しい産業機器といいたマスマーケット分野を含めたAI半導体関連需要の伸びの3つが大きいと説明する。
自動車向け事業の売上収益は前年同期比19.3%増、前四半期比1.3%増の1895億円となった一方、産業・インフラ・IoT向け事業は前年同期比46.4%増、前四半期比12.7%増の2438億円まで拡大。為替と一過性要因を除いた場合、自動車向けは前年同期比13.3%増、産業・インフラ・IoT向けは同36.5%増としている。
産業・インフラ・IoT向けに含まれるデータセンター分野は、メモリインタフェースとデジタルパワーの需要が引き続き強く、第3四半期に全社売上収益の21%を占めたとするほか、第4四半期には構成比が21%からさらに上昇し、全社の成長をけん引する見通しだという。
そのデータセンター向け第4四半期売上高見通しは、第3四半期比で10%台半ばの増加を見込む。販売チャネル在庫は引き続き低く、受注残も積み上がっており、2027年前半まで需要をカバーしている状態としている。
売上総利益率は59.4%まで上昇
第3四半期の売上総利益率は会社予想を1.9ポイント、前四半期を1.3ポイント上回る59.4%となった。会社予想に対する上振れは、円安、製品ミックスの改善、製造費用の減少によるもの。特にデータセンター向けのメモリインタフェースと、デジタルパワーに含まれる相対的に利益率の高い製品の増加が製品ミックスを改善した。
そのため産業・インフラ・IoT向け事業の売上総利益率は前四半期比2.2ポイント増の62.8%、営業利益率は同4.3ポイント増の36.2%となった。自動車向けの売上総利益率は55.3%、営業利益率は32.9%としている。
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ルネサス エレクトロニクスの第3四半期における事業別業績。データセンター向け需要などを背景に、産業・インフラ・IoT向けの売上総利益率は62.8%、営業利益率は36.2%となった (出所:ルネサス エレクトロニクス)
28nmマイコンと第4世代R-Carが車載の成長をけん引
自動車向け事業では、為替の影響を除く前年同期比13.3%の増収のうち、約半分を実需の改善、残りの半分を販売チャネルにおける在庫拡充が占めたという。
実需をけん引したのは、中国の複数顧客で採用が広がる28nmマイコンと、日本の顧客を中心に立ち上がる第4世代車載SoC「R-Car Gen4」となる。
28nmマイコンは中国顧客を中心に展開を広げ、R-Car Gen4も将来的には日系以外の顧客への採用拡大を見込む。一方、従来製品の売り上げ減少が新製品の成長を一部相殺しているという。第4四半期に向けても28nmマイコンとR-Car Gen4の拡大を想定し、販売チャネルの在庫を補充して需要増加に備えるとしている。
AIインフラ向けの生産能力増強に1112億円
第3四半期の設備投資決定額は1112億円となった。このうち約8割を増産投資が占め、マイコンとデジタルパワーを中心に生産能力を増強する。
マイコンでは那珂工場、デジタルパワーではマレーシアの後工程工場と西条工場の中間・後工程などが投資対象となる。第4四半期もAIインフラ向けの後工程を中心に、自社工場への能力増強投資を継続する計画だ。
前工程の全体稼働率は59%となった。川尻工場で地震の影響によりウェハ投入量が減少したものの、全体への影響は軽微で、ほぼ想定通りに着地したとするほか、第4四半期は若干の上昇を見込むともしている。
また同四半期における在庫はダイバンクの拡充や生産能力の増強に伴う仕掛品の増加により増加したという。第4四半期も2027年第1四半期以降の需要増加へ備え、仕掛品と完成品を積み増す計画となる。
デジタルパワーの生産能力を2~2.5倍へ
データセンター向けでは、デジタルパワーの前工程から中間・後工程までを対象に投資を進める計画。メモリインタフェースについては、前工程のウェハをファウンドリから調達しつつ、後工程のパッケージングとテスト能力を増やすことで出荷量を拡大することを計画している。
増産投資による効果が本格的に出てくるのは2027年第1四半期以降となる見通し。西条工場の増産設備が立ち上がるほか、ファウンドリで確保する製造能力も含め、デジタルパワーのランレートベースの生産能力を2026年比で2~2.5倍へ高める計画だという。ただし、設備は段階的に立ち上がるため、2027年の売上高が一度に2~2.5倍になることを意味するものではない。
800VのAIデータセンター向けGaNで案件獲得を目指す
AIデータセンターの電源アーキテクチャが高電圧化する中、ルネサスはGaNを活用した800V対応ソリューションの案件獲得にも取り組んでいる。
同社は800Vから48V、800Vから12Vへの電力変換に対応する技術を用意しているほか、800Vから6Vへ直接変換するソリューションも開発している。大手顧客が検討する800V電源アーキテクチャの候補に、同社のGaNソリューションが含まれているものの、現時点では具体的な採用や売り上げには至っていないという。
同社は800Vの直流電源ソリューションを2030年から2035年にかけて業績へ大きく貢献する可能性がある領域と位置付け、案件の獲得を進めているとする。
第4四半期の売上収益は4540億円を予想
2026年第4四半期のNon-GAAP売上収益は、中央値で前年同期比29.4%増、前四半期比4.3%増の4540億円を見込む。為替と第3四半期の一過性要因を除いた場合でも、前四半期比4.2%の増収となる見通しだ。
売上総利益率は58.0%、営業利益率は32.0%を予想する。売上高の拡大に対し利益率が第3四半期から低下するのは、製品ミックスの変化、円高、増産に伴う製造費用、期末の設備メンテナンス費用、研究開発費などの増加を織り込むためとしている。
2026年通期のNon-GAAP売上収益は、中央値で前年比26.4%増の1兆6668億円を予想する。為替と一過性要因を除いても同19.7%増となる見通しで、売上総利益率は58.6%、営業利益率は33.2%を見込む。
タイミング事業の譲渡益4503億円を計上
GAAPベースの第3四半期売上収益は前年同期比30.0%増の4359億円、営業利益は5653億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は3722億円となった。
営業利益には、7月1日に完了したSiTimeへのタイミング事業譲渡に伴う譲渡益4503億円が含まれる。このため、本業の比較には譲渡益などの非経常項目を除いたNon-GAAPの営業利益1505億円を用いる必要がある。
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ルネサス エレクトロニクスのNon-GAAP営業利益からGAAP営業利益への調整。タイミング事業の譲渡益4503億円を計上し、GAAP営業利益は5653億円となった (出所:ルネサス エレクトロニクス)
タイミング事業譲渡の対価は現金とSiTime株式で受け取っており、株式部分は現時点で現金化していない。譲渡で得た資金については、生産能力の増強を含む設備投資、負債削減、株主還元または成長投資の順に優先順位を検討する。
現時点ではAIインフラ向けをはじめとする設備投資を優先する考えだが、成長投資の機会や年度計画を見極めたうえで、自己株式取得を含む株主還元の有無を判断するとしている。
ルネサスは、自動車市場の生産台数そのものには力強さを欠く局面があるものの、28nmマイコンとR-Car Gen4による独自の成長を見込む。産業・インフラ領域ではデータセンター向け需要が引き続き強く、2027年も高い伸びが続くとの見方を示しており、研究開発と設備投資を継続することで需要の取り込みを進める考えだ。



