この半導体ニュースのまとめ
・ルネサスが同社初の100V耐圧EモードGaN FETを発売し、低耐圧GaN市場に参入
・EPCからライセンス供与を受けた低電圧eGaN技術を活用しつつ独自に製品化
・スイッチング損失を40~70%低減し、システムの電力密度を最大2倍に向上
ルネサス エレクトロニクスは、同社初となる100V耐圧のエンハンスメントモード(Eモード)GaNディスクリートパワートランジスタ4製品を発売し、GaN製品ポートフォリオを低電圧アプリケーションへ拡大した。
新製品の型番は「RTP100E005G1FL」「RTP100E2P6G1FL」「RTP100E1P8G1FL-DSC」「RTP100E1P2G1FL-DSC」となっており、AIデータセンタ、ヒューマノイドロボット、ファクトリオートメーション(FA)、産業用モータ駆動、電動工具、太陽光マイクロインバータなどを対象とする。
EPCの技術を活用して低耐圧GaN市場へ参入
ルネサスは2025年6月に開催したキャピタルマーケットデイにて、米Transphormの技術を基盤とする600V超の高耐圧GaNに加え、40~200Vの低耐圧EモードGaNへ製品群を広げる方針を示していた。低耐圧GaNについては「LV GaN with external foundry and internal IP」とし、外部ファウンドリと自社IPを組み合わせる計画を掲げていた。
その後、2026年2月には、低耐圧EモードGaNを手掛ける米Efficient Power Conversion(EPC)と包括的な技術ライセンス契約およびセカンドソース契約を締結。EPCの低電圧eGaN技術とサプライチェーンを活用するとともに、低耐圧GaNの自社ウェハ製造体制の構築に向けて協業する方針を示した。
今回の100V耐圧GaN FETは、EPCからライセンス供与を受けた技術を活用しながら、ルネサスが製品仕様やパッケージ、放熱構造などを独自に開発した製品となる。
スイッチング損失を最大70%低減
新製品は、総ゲート電荷量(Qg)と出力電荷量(Qoss)を低く抑え、電圧と電流が重なる時間を短縮することでスイッチング損失を低減した。逆回復電荷量(Qrr)もゼロとしている。
同等のGaNデバイスと比べ、ハードスイッチングの性能指数(FOM)を最大35%、ソフトスイッチングFOMを最大63%低減。アプリケーションや電力変換方式に応じてスイッチング損失を40~70%低減し、システムレベルで最大2倍の電力密度を実現できるという。Siベースの設計と比べた効率も1~3%向上するとしている。
オン抵抗(RDS(on))は1.2mΩ~5mΩの範囲で用意した。放熱方式は下面冷却と両面冷却から選択でき、AI向け電源ユニット、DC/DCコンバータ、モータ駆動回路などの要求に対応する。
AIデータセンタの48V電源やロボットに展開
AIデータセンタでは、800V高電圧直流(HVDC)配電や48Vバスアーキテクチャへの移行が進められている。GaNによる数MHzの高周波スイッチングを活用することで、トランスやインダクタなどの磁気部品と基板面積を縮小し、電源の高効率化と高電力密度化を図ることができる。
ヒューマノイドロボットや産業用モータでは、複数の駆動回路における損失、発熱、実装面積の削減に活用する。同期整流回路やマルチフェーズ降圧コンバータ、モータ駆動回路に対応できるよう、オン抵抗とパッケージが異なる4製品をそろえた。
新製品はSi MOSFETと互換性のあるフットプリントを採用しており、既存基板の大幅な変更を行わずにGaNへ移行できる点も特徴となる。
高耐圧から低耐圧までGaN製品を拡充
ルネサスは、新製品とマイコン、ゲートドライバ、コントローラなどを組み合わせたウィニング・コンビネーションとして、AIデータセンタ向けの「800V-48V DCX電力変換システムソリューション」と、モータ制御向けの「DCサーボシステムソリューション」も提案する。
Transphormの技術を基盤とする650Vクラスの高耐圧GaNに、EPCの技術を活用した100Vクラスの低耐圧GaNを加えることで、AIデータセンタの電源入力から負荷近傍の低電圧変換までをカバーする。
今回の新製品は、2025年に示した低耐圧GaN市場への参入方針を具体化したものとなり、AIデータセンタ、ロボティクス、産業用モータなどを対象に事業拡大を目指すとしている。
