このものづくりニュースのまとめ
・Mercedes-Benzが約5億ユーロを投じてAIネイティブな製品開発基盤「PLM.AI」を構築
・新車の開発期間を約17カ月短縮し、個別のエンジニアリング工程を最大50%効率化
・CONTACT Softwareが中核PLM、Siemensが車両設計やシミュレーション、デジタル検証を担当
Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は10月16日、AIを前提とした製品ライフサイクル管理(PLM)基盤「PLM.AI」をグローバルの車両開発へ導入すると発表した。
開発、調達、生産、販売、アフターサービスの情報を製品ライフサイクル全体でつなぎ、新製品や技術を量産段階へ移行するまでの期間短縮を図る。新車の開発期間を約17カ月短縮するほか、プロセス全体で最大30%、個別のエンジニアリング工程では最大50%の効率向上を見込む。
同プロジェクトの投資額は約5億ユーロ。Mercedes-BenzはPLM.AIを、車両開発のデジタル基盤となるAIネイティブなバックボーンに位置付けている。
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Mercedes-Benzがグローバルの車両開発に導入するAIネイティブな製品ライフサイクル管理基盤「PLM.AI」のイメージ。開発、調達、生産、販売、アフターサービスのデータを製品ライフサイクル全体で連携する (出所:CONTACT Software)
部門をまたぐAI活用へ
Mercedes-Benzはすでに、材料コストの最適化、認証・承認手続き、問題の検出と修正、ソフトウェア開発などにAIエージェントを活用している。ただし、これまでのAI利用は個別の工程が中心だった。
PLM.AIでは、異なる工程やアプリケーションを共通のデータ基盤で接続。製品に関する情報をリアルタイムで参照できるデジタルスレッドを構築し、開発部門をまたいだAI活用を可能にする。
例えば車両の軽量化では、部品の変更がコスト、衝突安全性、ハードウェアとソフトウェアの機能、生産工程などへ影響を及ぼす。PLM.AIでは、複数の専門AIエージェントがこうした相互関係を同時に分析し、安全性、品質、コストを含めた判断材料を開発チームへ提示する。
製品、サービス、実際の運用データを結び付けることで、アフターサービスにおけるデータ活用も進める計画としている。
物理試験を将来的に半減へ
PLM.AIは、AIを活用したシミュレーションと開発プロセスにより、物理試験を必要な領域へ重点的に適用できるようにする。Mercedes-Benzは、物理試験を将来的に半減させることを目指す。
仮想空間で設計案や車両性能を検証し、問題や設計上の矛盾を早期に把握することで、物理試作後に発生する手戻りの削減を図る。
一方で、品質や安全性に関する基準は変更せず、製品に関する最終的な意思決定は引き続き人間の開発チームが担うとしている。
CONTACT ElementsをPLMの中核に採用
PLM.AIの構築には、CONTACT SoftwareとSiemensが戦略的テクノロジーパートナーとして参画する。
CONTACT Softwareは、同社のプラットフォーム「CONTACT Elements」をPLM.AIのオープンな中核システムとして提供する。製品データ、業務プロセス、アプリケーションをモジュール形式で統合し、将来のAI技術を追加できる拡張性を確保する。
Mercedes-Benzは、特定の用途や製品だけに閉じたシステムではなく、既存の開発環境や将来のAI技術を柔軟に接続できる構成を重視した。
Siemensがデジタルツイン領域を支援
Siemens(シーメンス)は、AIを活用した車両設計、シミュレーション、デジタル検証などの領域を支援する。PLM.AIが管理する共通のデータとプロセスを基盤として、車両の物理設計とデジタルツインによる検証を接続する。
Mercedes-Benzはプロジェクト全体の責任を持ち、将来像やシステムアーキテクチャ、データモデル、ガバナンスを定義。グローバルでの導入を進めるとともに、プラットフォームの継続的な機能拡張も主導する。
PLM.AI上で扱うデータと、それを基に開発・利用するAIモデルについては、Mercedes-Benzがデータ主権を維持する。
自動車開発では、機械設計に加えて電気・電子システムやソフトウェアの比重が高まり、設計変更による影響範囲も広がっている。Mercedes-Benzは、製品ライフサイクル全体のデータをPLM.AIへ集約し、AIが参照できる形へ整備することで、車両開発から生産、顧客サービスまでを横断した意思決定の迅速化を図るとしている。