この企業動向ニュースのまとめ
・米ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitzが日本オフィスを開設、日本代表に吉田仁志氏が就任
・米国の先端技術を日本へ導入し、日本の技術やスタートアップの世界展開を支援
・防衛を重点領域とし、自律型船舶、ドローン、ロボティクス、サイバーなどに注目
米ベンチャーキャピタルのAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、別名a16z)は10月7日、日本における事業活動とプレゼンスの拡大に向け、日本オフィスを開設したことを発表した。
併せて、日本での事業を統括する日本代表に、元日本マイクロソフト 代表取締役社長の吉田仁志氏が同日付で就任したことも明らかにした。
a16zは、シードからベンチャー、グロースまでの各段階にあるテクノロジー企業を対象に、AI、バイオ・ヘルスケア、暗号資産、エンタープライズ、フィンテック、ゲーム、インフラなどへ投資するベンチャーキャピタル(VC)。複数のファンドを通じて1000億ドル超の資産を運用している。
日本ではAI、サイバーセキュリティ、ロボティクス、防衛などを成長領域と位置付け、投資だけでなく、事業戦略、人材、顧客、パートナー、グローバルネットワークを組み合わせた支援を提供する方針だとする。
元日本マイクロソフト社長の吉田仁志氏が日本代表に就任
吉田氏は、テクノロジー企業を中心に25年以上の経営経験を持つ人物。日本マイクロソフトの代表取締役社長兼コーポレート バイスプレジデントとして国内事業を統括したほか、2015年から2019年までは日本ヒューレット・パッカードの代表取締役 社長執行役員を務めた。
また、SAS Instituteの副社長 北アジア地域統括、SAS Institute Japanの代表取締役社長、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの代表取締役社長などを歴任。現在はGoldman SachsのValue Accelerator Advisorを務めるほか、複数の企業で取締役や戦略アドバイザーを務めている。
a16z 共同創業者兼ゼネラル・パートナーのBen Horowitz氏は、吉田氏を日本代表に選出した背景について、日本では企業や行政との長期的な関係が事業を進めるうえで重要になることから、官民に幅広いネットワークを持つ同氏が適任者であると判断したと説明している。
また、吉田氏自身も日本の社会をより良くし、強い産業基盤を構築することを自身の使命として考えてきたと語っており、日本の若い起業家が持つ技術や熱意をa16zの経営支援やグローバルネットワークと組み合わせ、世界市場で成長する企業を生み出していくとの考えを示した。
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左からアンドリーセン・ホロウィッツのマネージングパートナー兼グローバル・パートナーシップ部門代表のJen Kha(ジェン・カ-)氏、共同創業者兼ゼネラルパートナーのBen Horowitz(ベン・ホロウィッツ)氏、日本代表の吉田仁志氏
米国の先端技術を日本へ、日本の技術を世界へ
a16zは、日本オフィスに米国と日本の技術や企業を双方向でつなぐ役割を持たせるという。日本企業との連携を求める米国の先端技術やスタートアップを日本市場に展開する一方、米国を含む海外市場へ進出したい日本の起業家や研究者、企業が持つ技術を世界へ送り出すことで新たな事業機会を創出することを目指す方針だ。
日本への進出を決めた理由として、米国の同盟国であることに加え、ロボティクス、精密部品、センサー、モーター、造船、航空宇宙・防衛などの分野で世界水準の産業基盤を持つことを挙げている。
また、AIの普及によってそれまで障壁となっていた言語という問題に対するしきいが低くなってきたことから、日本のスタートアップであっても、当初から世界市場を対象にした事業展開を構築しやすくなったことも、日本へ進出した理由に挙げている。
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日本オフィス開設記念のテープカットの様子。左から、Jen Kha氏、マネージングパートナーのRaghu Raghuram(ラグー・ラグラム)氏、Ben Horowitz氏、来賓の小池百合子 東京都知事、吉田仁志氏、ジェネラル・パートナー兼ガバメント・アフェア部門代表のAnne Neuberger(アン・ニューバーガー)氏
「まずは防衛から」、自律型システムの日米連携を推進
日本で注力する領域について、Horowitz氏は「まずは防衛から始めたい」と説明する。背景には、AIや低価格の無人システムによって、防衛技術とコストの構造が変化していることがある。低価格のドローンへ高額なミサイルで対応する従来型の仕組みではなく、自律制御技術や低コストな無人システム、アンチドローン技術などの重要性が高まっているという。
具体的な領域として、自律型船舶、潜水艦、航空機、各種ドローン、アンチドローン、ミサイル関連技術、サイバー防御などを挙げる。
日本は造船や海洋技術、ロボティクス、精密部品を含む製造基盤を持つ。一方、米国はAIを用いた制御ソフトウェアや自律化技術で先行しており、両国の強みを組み合わせることで新たな防衛システムを構築できるとする。
a16zは、米国の防衛スタートアップを日本企業や政府・公共分野の需要へ結び付けるとともに、日本企業が持つ技術を米国市場へ展開する双方向の連携を目指すという。
日本の製造基盤と米国のAIを組み合わせる
防衛と並ぶ重点領域がロボティクスであるとする。日本はモーター、センサー、精密部品、製造技術など、ロボットを構成するハードウェアとサプライチェーンに強みを持つ。一方、AIモデルやロボットの自律制御では米国企業との連携余地があるとした。
工場や物流、社会インフラ、防衛など、物理空間でAIが判断して機械を動かすフィジカルAIの普及に向け、日本のハードウェアと米国のAI・ソフトウェアを結び付け、相乗効果による付加価値の向上を狙う。また、防衛やロボティクス以外にも、サイバーセキュリティ、エネルギー、AIアプリケーション、日本のコンテンツや文化を生かしたサービスなども投資機会として捉えているとする。
投資先の世界進出まで継続的に支援
a16zは、日本オフィスの役割を投資案件の発掘だけには限定しないと説明している。投資後も事業戦略の策定、人材採用、顧客やパートナーとの接続、海外市場への進出を支援し、日本企業が国内市場だけでなく世界市場を対象に成長できる環境を整える。
投資先の候補には、すでに事業を展開しているスタートアップに加え、大企業や大学に所属しながら起業を検討する人材も含める。国内のベンチャーキャピタルや投資家とも連携し、早い段階にある起業家や技術を発掘する方針だ。
日本のスタートアップエコシステムについては、失敗した場合のリスクが大きいことや、大企業からスタートアップへの人材移動が限られてきたことが、起業を阻む要因になってきたとの見方を示す一方、若い世代における起業やスタートアップに対する関心は高まりつつあると見ており、企業や大学に眠る人材や技術が新たな事業へ移る機会も拡大しているとの見方を示している。
日本オフィスの成功を2つの成果で判断
Horowitz氏は、日本オフィスの成功を判断する基準として、2つの成果を挙げている。1つ目は、米国の優れた技術を日本へ導入し、日本の社会や防衛、産業の発展に貢献すること。2つ目は、優れた日本企業を見いだし、日本市場にとどまらず世界市場へ進出できるよう支援することだという。
同社は日本オフィスを通じて、防衛、AI、ロボティクスなどで日米企業の連携を促進し、日本の産業基盤と米国の先端技術を組み合わせた新たな事業の創出を目指すこととなるが、それを踏まえて吉田氏は、日本の起業家や研究者が持つ技術力と情熱には、世界で大きな影響を生み出す可能性があると指摘。次世代のグローバル企業や起業家が継続的に生まれ、成長できるエコシステムの構築に向けた取り組みを推進していくとしている。
