プラズマ物理学の進歩に貢献した研究者に贈るチャンドラセカール賞の第13回受賞者に、米プリンストンプラズマ物理研究所上級科学者の張忠錫(チャン・チュンソク)氏が選ばれた。核融合炉内の熱伝導や、排熱に関する理解を大きく進めたことが評価された。アジア太平洋物理学会連合プラズマ物理分科会(菊池満代表理事)が発表した。
核融合炉は、太陽が輝く仕組みと同様に、水素のような軽い原子核を融合させ、ヘリウムなどのより重い原子核を人工的に作り出す装置。未来の発電炉として期待され、研究が進められている。炉の中では、超高温で原子から電子が離れ、イオンや電子がバラバラに飛び回るプラズマ状態が生じている。張氏はこの複雑な動きを、理論とスーパーコンピューターで解き明かす研究の第一人者だ。
核融合炉では、ドーナツ状の強い磁場でプラズマを閉じ込める方式「トカマク」が主流。張氏は1980年代初頭、ここでイオンが熱を運んで外側へと逃がす働きを広範に解明し、限界のあった従来の公式に代わる新公式を開発した。別の研究者と共にさらに改良し、現在も多用される「チャン・ヒントン公式」を打ち立てた。
フランスに建設中のITER(国際熱核融合実験炉、イーター)では、プラズマ中の不純物や熱を取り除く機器「ダイバーター」が極めて重要だ。従来のデータを基にすると、熱が狭い範囲に集中し、プラズマを受け止める「ダイバーター板」が焼損してしまうとの懸念が生じた。これに対し張氏は、プラズマの複雑な動きを計算するプログラム「XGC」を、ITERに適用できるよう発展させた。その結果、ITERではプラズマの乱流が従来とは異なる役割を果たし、従来予測より熱が広く分散し得ることを明らかにした。さらに熱の広がりに関し、機械学習を使った予測モデルも開発。この予測を、国際研究チームと共に実験で裏付けるなど、ITERの運用計画に大きく貢献している。
公式の授賞理由は「プラズマ物理学および磁場閉じ込め核融合エネルギー科学への独創的かつ先駆的な貢献、特に、イオン熱伝導率について広く利用されているチャン・ヒントン公式に代表される新古典輸送理論の発展、XGCマルチスケール・マルチフィジックス・ジャイロ運動論的周辺プラズマコードの構築、ならびにITERおよび将来のトカマク炉にとって重要な、乱流によるダイバーター熱負荷幅の拡大予測と予測用サロゲートモデルの開発に対して」。8月31日に発表した。表彰式は韓国・釜山で開かれる第10回アジア太平洋プラズマ物理学国際会議で、10月12日に行われる。
張氏は1951年、韓国・醴泉(イェチョン)生まれ。ソウル大学校で物理学の学士、米テキサス大学オースティン校で博士の学位を取得。1986~2011年に韓国科学技術院(KAIST)物理学教授を務めた。11年、米プリンストンプラズマ物理研究所に移り、米エネルギー省の大型研究グループを主導する統括主任物理学者となった。昨年退職し、名誉職の上級科学者に。研究生活の大部分をKAISTで過ごし、多くの後進を育てたことでも知られる。
チャンドラセカール賞は、インド生まれの米国の天体物理学者で1983年にノーベル物理学賞を受賞し、プラズマ物理学にも貢献したスブラマニアン・チャンドラセカール氏(1910~95年)を記念したもの。アジア太平洋物理学会連合プラズマ物理部門(現分科会)が2014年に創設した。
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