Googleはこのほど、Google DeepMind 日本拠点の取り組みを紹介する説明会を開催した。Google DeepMind 日本拠点リードを務める全炳河(ぜんへいが)氏が、同社の研究開発の概要や、日本(東京)チームが音声AIをはじめとするグローバルなAI開発に果たす役割について説明した。

  • Google DeepMind 日本拠点リードの全炳河氏

    Google DeepMind 日本拠点リードの全炳河氏

GoogleのAI研究開発を担う「Google DeepMind」

Google DeepMindは、GoogleのAI研究開発組織。2010年に創業された「DeepMind Technologies」を、2014年にGoogleが買収し、2023年にGoogle内の主要AI部門であった「Google Brain」と統合して発足した。

研究者やエンジニアだけでなく、哲学、倫理学、医学など幅広い分野の専門家が所属し、AIを活用して科学・工学分野の難題に取り組むとともに、AIによって働き方や人々の生活を改善することを目指しているという。ミッションとして掲げるのは「人類に恩恵をもたらすAIを責任を持って構築する」ことだ。

2023年のGoogle DeepMind発足時、東京には小規模なチームが存在していたものの正式な拠点には含まれていなかった。その後、東京のチームが拡大し、2025年に正式な研究開発拠点としてスタート。現在はバンガロール、シンガポールとともにアジア太平洋地域にある拠点の一つとして、グローバルのチームと連携しながらフロンティアモデル(最先端AI)の研究開発などを進めている。

  • 日本におけるGoogle研究開発のあゆみ

    日本におけるGoogle研究開発のあゆみ

Geminiの音声機能を東京からグローバルに向け開発

Google DeepMind 日本チームでは、教育や健康、フィジカルAIといった特定分野に特化した垂直的(Vertical)な活動と、基礎的なモデリングや安全性に関する対応など、特定な領域にとどまらずAI全体に恩恵をもたらす水平的(Horizontal)な活動を行っている。この2軸は密に関連しており、一方で得た知見をもう一方に反映させながら全体を進化させていくという。

全氏が特に強調したのが、東京のチームによる音声AIの研究だ。これはHorizontalに属するもので、東京には音声AIの研究者が多数在籍しており、Google DeepMindの音声AI開発においてグローバルにも重要な役割を担っているとする。

全氏は長年にわたり音声合成を研究しており、DeepMindとの共同研究から2016年に音声生成モデル「WaveNet」の開発につながった。WaveNetはその後、Googleアシスタントなどの音声技術に活用され、高品質な音声対話AIの基盤となっている。

現在は東京のチームが、Googleの生成AIモデル「Gemini」の音声機能について、単なる日本語ローカライゼーションではなく、音声機能やフロンティアモデルそのものの初期開発にも携わっているという。

  • Google DeepMindの日本における活動内容

    Google DeepMindの日本における活動内容

Geminiでは、テキストだけでなく音声や画像、動画などを扱うマルチモーダルAIを実現している。

音声入力では100ミリ秒などの短い単位ごとに区切って音の特徴を抽出し、音声トークンに変換しモデルに入力。これを受け取ったGeminiは同様に音声トークンを用い応答を音声として生成することで、途中にテキストなどを介在させず、声のトーンや感情といったニュアンスを保った音声対話を実現できる仕組みだ。

東京のチームは2025年は音声合成に注力し、2026年は、音声会話や日本語性能の向上を含む新機能の開発をリードしている。

ゲームをAI研究の場に、日本の社会課題にもAIを役立てる

東京のチームでは、日本が強みを持つゲーム分野のAI研究にも取り組んでいる。DeepMindはこれまで、囲碁のAlphaGoなどゲームをAI研究のブレークスルーとして活用しており、“DeepMindにとって非常に重要な分野”だという。

近年は、囲碁やチェスといった特定のゲームだけを攻略するAIから、自然言語による指示を理解し、さまざまな3D仮想環境で自律的に行動するAIエージェントへと研究が進み、言語による指示で自律的にゲーム内で行動するAIエージェント「SIMA」も生まれている。

また、日本社会に貢献できる取り組みの一環として、日本が抱える少子高齢化をAI研究のテーマとして捉え、高齢者を支援するAIの研究も進めている。介護現場向けに、音声や写真、メモから介護記録のドラフトを作成する「ケア記録アシスト」機能を、Google Workspace向けGeminiに実装。また、高齢者がAIを使いやすくすることを意識した機能の開発にも取り組んでいるそうだ。

このほか、京都大学iPS細胞研究所とのAI Co-Scientist(科学分野に特化したエージェントAIシステム)での連携、ウェザーニューズや東京大学などとの台風予測、東京大学とのAIチューター性能評価など、日本の研究機関・企業との共同研究も進めている。

全氏は2023年にGoogle DeepMindがスタートしてから3年が経過し、日本チームは「よりよい日本社会の実現とグローバルなAIの発展に貢献することを目指し、研究開発を行っている」と総括した。