スーパーで売られているサンマの肝臓で、これまで知られていなかった新種の寄生虫が見つかった。発見した日本獣医生命科学大学などの国際研究グループによると、この寄生虫は原虫の仲間で、ゴウシア属というグループに属している。1つの細胞だけでできた真核生物で、直径20マイクロメートル(50分の1ミリ)の丸い形だ。人の健康への影響はないとみられている。

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    よく食べられている魚でも、極小の寄生虫の新種が発見されることがある

きっかけは、獣医学部獣医学科の常盤俊大准教授(寄生虫学)のゼミだった。スーパーで買ってきたサンマの寄生虫を調べる中で見慣れない生き物を見つけ、詳しく調べたところ、これまで報告のない原虫だと分かった。原虫は単細胞の真核生物で、マラリアを引き起こすマラリア原虫やネコを介して感染するトキソプラズマなどが知られる。

遺伝子解析の結果、見つかった原虫はゴウシア属に含まれることが分かった。通称はコクシジウム。ゴウシア属には、両生類に寄生するものや、淡水魚に寄生するもの、海水魚に寄生するものなど、宿主の異なる複数の種類が知られている。今回、発見されたのは海水魚に寄生する種類だ。

さらに詳しく調べたところ、ゴウシア属は共通の祖先から枝分かれしてきた単一のグループではなく、起源の異なる複数の系統がゴウシア属として一括りにされていることも分かった。つまり、同じ属に分類されていても、進化の道筋が異なるものが混在しているということだ。

寄生虫は化石として残らないため、誕生した年代の測定が難しい。研究チームは、宿主となる生物が進化した時期や、大陸が分断された時期を手掛かりに、この原虫がいつごろ現在の系統に分かれたのかを推定した。その結果、淡水魚に寄生するゴウシア属と2億年ほど前に分岐し、そこから独自の進化を遂げていることが分かった。

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    ゴウシア属のコクシジウム。写真ではオーシスト(外側の丸い構造)の中に4つのシストがあり、その中に虫体が2匹ずつ、計8匹が寄生する(常盤俊大准教授提供)

サンマを複数のスーパーで買ってきて調べたところ、21尾中19尾で今回の原虫が確認された。昨年はサンマが豊漁で脂がのっていて、「いわゆる『脂肪肝』のサンマが多かった」という。脂肪肝のサンマでは、肝臓内の脂肪の粒が今回の原虫と見た目がよく似ているため、「見分けるのが難しかった」と常盤准教授は振り返る。

ゴウシア属の原虫がサンマの体内で寄生するのは肝臓だけで、サンマからサンマへの感染はフンを介して起きているとみられる。また、感染は魚と魚の間でのみ成立すると考えられ、人への感染は確認されていないという。

今後はゴウシア属の寄生によるサンマへの影響を調べるほか、イワシやアジ、サバなど他の魚種での感染状況を調べる予定だ。他の魚種では原虫の感染率に季節差があるとの報告もあるので、どのような感染の動態があるのかも調べたいとしている。

常盤准教授は「コクシジウムは丸い見た目がとてもきれい。サンマのように身近な魚にも、まだ見つかっていない小さな寄生虫がいた。魚の寄生虫は、近年では中高生の探究学習にも用いられていると聞いている。ぜひ中高生のみなさんにも、身近な生き物の中に潜む小さな驚きを見つけてほしい」と話した。

研究は日本獣医生命科学大学と台湾・国立中興大学が共同で実施した。成果は8月12日、米科学誌「ジャーナル・オブ・ユーキャリオティック・マイクロバイオロジー」電子版に掲載され、日本獣医生命科学大学が同13日に発表した。

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