統合失調症の患者の会話には、格助詞や副詞の使用頻度が減るなど3つの特徴があることを慶応大学などの研究グループが明らかにした。支離滅裂で脈絡がないように聞こえる統合失調症の言語障害について、客観的にモニタリングする指標の基盤になる可能性がある。単独で症状を診断するものではなく、他の方法と組み合わせることで早期の診断・治療につなげるきっかけにしたいという。
精神疾患の診断には血液検査のような目に見える指標がなく、診察室での会話が重要な手がかりの1つになる。慶応大学医学部医科学研究連携推進センターの岸本泰士郎教授(行動科学・精神医学)らの研究グループは、同大の協力病院・クリニックに通院・入院する500人以上の患者の同意を得て録音した会話のうち約100人分について、ほぼ同数の健常者の会話と比較・分析した。
録音データは「自由な会話」「童話の説明」「日常場面が描かれたイラストの説明」の3種類。詳しく分析した結果、統合失調症の患者の会話では、(1)文の構造を担う格助詞を使う頻度が減少する(2)修飾表現を担う副詞の使用頻度が減る(3)使う単語の意味が似ていて広がりがない、という3つの特徴が顕著だった。
具体的には、「が」「を」「と」などの格助詞が減ることで文の構造や意味関係をつかみづらくなる、「とても」「ゆっくり」「たぶん」など程度や状態を表す副詞が減って文意・文脈が分かりにくくなる、同じような単語が何度も会話に登場するなど。こうした特徴があるせいで、分かりづらく脈絡のない会話に終始しているように聞こえるという。
岸本教授は「統合失調症の人の会話は、回りくどかったり、話が飛びすぎてしまったり、連合弛緩(しかん)と呼ばれる特徴がある。今回の結果によって、精神疾患でも定量的に判断できる指標となり得る」と意義を説明する。
今回、会話を分析できた患者は、急性期ではないことや、話に応じてくれる人、同意が取れる状態であった点に注意する必要がある。統合失調症の中には、幻聴や妄想などが強く現れて社会的な機能が低下したり、不安や興奮状態のため落ち着いて会話ができなかったりする人もいる。一方で、うつ病など別の精神疾患でも同じような会話の特徴が見られることがある。今回の成果を臨床で応用するには、別の方法と組み合わせる必要があるとしている。
研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の助成を受けて進められた。成果は6月23日、英国の科学誌「サイコロジカル メディシン」に掲載され、同日、慶応大学、東京科学大学、静岡大学が発表した。
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