電気、ガス、通信のインフラは、それぞれの会社がそれぞれの人員で維持する――そんな従来の常識が変わろうとしている。NTT東日本、東京電力パワーグリッド、東京ガスネットワークは、橋梁設備の点検や資材配送などの共同化を進め、将来的には施工業務でも人員を融通する「担い手シェアリング」を検討している。
背景にあるのは、各社に共通する担い手不足だ。3社の連携はどこまで進んでいるのか。ドローンによる共同点検の実演とともにその成果と今後の構想が示された。
NTT東日本・東電・東京ガス、インフラ維持を「3社でシェア」
NTT東日本、東京電力パワーグリッド、東京ガスネットワークの3社は8月24日、2022年11月に締結した連携協定に基づく取り組みの成果を説明した。
3社は自然災害に対するレジリエンスの強化や、社会課題の解決を目的に連携協定を締結。その後、具体的なユースケースの創出や実証実験を進めてきた。3社が目指しているのは、電気、ガス、通信という業種の垣根を越え、点検や物流などの経営資源を共有することでインフラの維持管理を効率化することだ。さらに将来は、施工などの担い手を3社でシェアすることも検討している。
東京電力パワーグリッドの阿部高大氏によると、2023年には3つのワーキンググループ(WG)を立ち上げ、6つの重点施策について検討を進めてきたという。
その一つが、ドローンを使った橋梁添架設備の3社共同点検だ。従来は各社が個別に行っていた点検を共同化することで、作業にかかる稼働をどこまで削減できるのか。3社は実証結果とともに、実際の橋梁で点検作業を公開した。
橋梁には電気、ガス、通信など複数社の設備が設置されている場合がある。これまでは各社がそれぞれ点検していたが、共同点検では代表企業がドローンで設備を撮影し、その画像データを3社で共有することで効率化を図る。
従来の橋梁点検では、点検車やロープアクセス、船舶などを使用していた。ドローンに置き換えるだけでも約20%のコスト削減が可能だという。さらに、各社が個別に点検した場合の稼働をそれぞれ100、3社合計で300とすると、共同点検では平均111.8まで低減。実証では平均188.2ポイントの稼働削減を確認したという。
点検だけではない、共同配送から「施工シェア」まで
3社の連携は、点検以外にも広がっている。すでに実装している取り組みとして、自治体の道路占用申請を電子化する「道路らくらくWeb」や、東電パワーグリッドの資材センターを活用したNTT東日本との資材の混載配送などがある。このほか、市民参加型でインフラ設備を点検する「ピクトレ」や、地下埋設物の照会についても取り組みを進めている。
さらに、掘削工事の立ち会いや施工そのものを3社でシェアする「担い手シェアリング」も検討している。会社によって施工方法などが異なる点については、マニュアルを整備することで対応するという。
ドローン点検、課題は雨・風・熱
説明会の後、実際の橋梁に場所を移し、ドローンを使ったインフラ点検のデモンストレーションが行われた。
使用したドローンは産業・インフラ点検・公共セクター向けの商用ドローンとして展開されているアメリカSkydio社のSkydio2+。センサーにより360度の障害物を検知できるほか、GPSを捕捉できない環境でも飛行できるなど、橋梁下での点検に適した機体だ。メインカメラは上下各90度まで向きを変えられるため、横から見るだけでなく、下から見上げるような点検も可能だ。
また、ドローンオペレーターと監督者、周辺監視の最低3名で作業が行えるという。
一方、ドローン点検には天候や気温による制約もある。今回使用した機体は風速約11m/sに耐えられるという説明があったが、実際の点検作業では風速5m/s程度までを目安としているという。また、雨天時には作業できない。
もう一つの課題は熱だ。直射日光下では気温が低くても機体に熱がこもり、今回使用した機体では40℃を超えると熱暴走の可能性があるという。
なお、デモ現場での東京電力PGの説明によれば、3社で共同点検が可能な候補は3社の設備が同一橋梁に敷設されており、かつドローン点検が可能な橋梁を対象としているという。現在、これらの条件に合致する橋梁は約180橋になる。
2024年度からこれまでに約20橋で点検を実施した。180カ所を法定点検の周期である5年間で一巡するには、年間36件のペースが必要となる。今後、年間の点検件数をどこまで引き上げられるかも課題となる。












