Windows Latestは9月2日(現地時間)、「Windows 95's Start menu was invented by a chimpanzee-lab psychologist: 'Even a rocket scientist couldn't figure out Windows'」において、Windows 95で登場したスタートボタンとタスクバーの設計に行動心理学者のDanny Oran氏が関わった経緯を詳しく紹介した。
スタートボタンは左下が最適解
Windows Latestによると、Oran氏は行動分析学の権威であるB.F.Skinner氏の下で学んだ後、1992年にMicrosoftへ入社した。入社前のOran氏は、木製キーボードでチンパンジーとコミュニケーションを取る方法を研究しており、この経験をMicrosoftが求めたとされる。
入社後Oran氏は、Windows 3.1のユーザービリティーテストを担当し、基本操作に迷う利用者を何度も目の当たりにした。中には航空宇宙大手のBoeingに務める技術者もおり、専門性の高い人物でもWindowsを容易に扱えなかったという。
そこでOran氏は、すべての機能に到達できるボタンを1つだけ用意した。最初は「System」と名付け、画面上部に配置したが、利用者は説明を受けてもクリックしようとはしなかった。ところが名称を「Start」に変更すると、説明なしでも利用してもらえるようになった。こうして誰しもが直感的に操作を開始できる「スタート」ボタンが考案された。
次はこのボタンを画面のどこに、どの程度の大きさで配置すべきかという問題の解決だ。これについては1954年の研究「フィッツの法則」が関係するという。これは、カーソルや指先などの操作対象物を画面上の目標へ移動させる速さが、目標の大きさと距離の関数で表現できるという考え方だ。
画面内の距離は状況次第で変わり最大値は一定のため、調整可能な指標は「目標の大きさ」のみとなるが、スタートボタンを画面いっぱいに広げるわけにもいかない。そこで視点を変え、画面四隅の先に無限大サイズのボタンが存在するとみなし、そのボタンの角を画面内にはみ出させることにした。
これは四隅の方向に大きくカーソルを移動させれば、ボタンのどこかに触れるという考え方だ。このデザインの考案により、画面隅に小さなスタートボタンを配置するだけで即座にボタンをクリックできるようになった。
ボタンの左下配置の理由は、「読みやすさ」と「勢いよくクリックする操作への対応」だったとされる。前者は単純に、英語が左から右へ記述する言語だったことが理由だ。
後者は、マウスをしっかりとつかまずにボタンをクリックした場合に、カーソルがやや下方向にずれる問題への対処となる。ユーザーの持ち方次第だが、誰が操作してもスタートボタンを確実にクリックできるようにするため、下側にボタンを配置するデザインは必須とされる。
Windows 95製品版では設計思想が生かされず
Oran氏の努力により、画面左下に配置される小さなスタートボタンが完成した。しかしながら、製品版のWindows 95では、スタートボタンの周囲に数ピクセルの余白が設けられた。この影響で画面の最端部はクリックできず、大きくマウスカーソルを移動させてから少し戻さないとクリックできないスタートボタンがリリースされた。この問題はWindows 98で修正された。
最後に、タスクバーもOran氏の考案とされる。同氏はウィンドウの最小化に対応するバーを考え、最初は実行中のアプリをタブ形式で画面上部に並べる仕組みとした。その後、配置は画面下部に移され、スタートボタンと統合された。現在まで続くWindowsの基本的なユーザーインターフェースは、この時期に形作られたことになる。