≪ なぜ、日本では賃金が上がらないのか? ≫ 首藤若菜・立教大学経済学部教授に聞く!

賃金と価格を同時に上げていくことが必要

 

 ─ いろいろなモノの値段が上がっている中で、賃金の上昇率から物価の上昇分を引いた実質賃金は4年連続マイナスとなるなど、厳しい状況が続いています。なぜ、物価高でも賃金が上がらないのか? こうした現状を首藤さんはどのように見ていますか。 

 首藤 ぱっと見ただけではここ数年、物価が上がる中で賃上げも進んでいますし、価格転嫁と賃上げの好循環が起こっているような状況です。しかし、前からそうですけど、大企業の賃上げはできていても、中小企業はそこまで賃上げできない。要するに、賃上げできる企業とそうでない企業の格差が拡大しているのが現状だと思います。 

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 日本には”失われた30年”があって、この期間の賃金だけを考えたら、企業規模間の格差は是正されていたようなところがあります。しかし、これからはある程度格差が開いていくことを前提に考えていく必要があります。 

 とはいえ、格差が開くのは仕方ないといって放っておくわけにはいきません。そこをどうやって補填していくかを考えたら、やはり、いかに価格に転嫁させていくかが大事だと思います。 

 ─ やはり、価格転嫁をいかに進めていくかですね。 

 首藤 はい。価格転嫁も大企業では進んでいますが、中小企業では価格転嫁が十分に進んでいません。中小企業の賃上げができないのは、やはり価格が上がらないからです。 

 日本経済は大企業だけでなく、中小企業があって成り立っているわけですから、やはり、賃金と価格を同時に上げていくことが必要です。そして、その原資は発注側の大企業も適正な取引価格として負担していくべきです。これがすごく重要なポイントだと思います。 

 ─ 本当ですね。まだまだ価格転嫁が不十分だと。 

 首藤 はい。ただ、価格転嫁できている企業にヒアリングすると、「本当はもっと価格転嫁したいんだけど、そこまではできないよね」という意見が圧倒的に多い。結局、今もインフレでいろいろなモノの値段が上がっていて、消費者の方は大変だと思うんですが、それでも企業の側からすると足りていないと思っているわけです。 

 ─ やはり、本音ではもっと価格転嫁して、値段を上げたいところが多い? 

 首藤 ええ。製造業の下請け企業や、食品メーカーならスーパーに自分たちの商品を納める時に、「値段をちょっと高く引き取ってください」と言っても全然上げてくれないと。 

 そうした中で、最低賃金をはじめとするコストが上がっていくので、結局、自分たちの利益を削って耐えるだけで、このままではもう会社としてもたない。社会的に賃上げしてほしいという要請があるのも理解しているけど、板挟み状態になって、自分たちがすり減っているだけだという話はよく聞きます。 

 でも、だったら、賃金を上げるのを…。

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