周期的に糸が絡まったテキスタイル(布地)を編み物として作れるのか、数学の「トポロジー」(位相幾何学)の観点から判別する方法を立命館大などのグループが明らかにした。糸がほつれた部分から穴が周囲に広がる壊れやすさも、編み物の本質に関わっているという。伝線しにくいストッキングの編み方を考案するなど、新しいテキスタイルを体系的に発見できる可能性がある。
編み物では、編み針を動かして一本の糸を繰り返し絡めていくことで布地を作る。立命館大学総合科学技術研究機構の嶋本大祐専門研究員(物理学)は2年ほど前、トポロジーの観点から編み物を定義できないか研究を始めた。トポロジーとは、切ったり貼ったりすることなく、変形によって保たれる性質を扱う数学の分野だ。
トポロジー的には、糸の両端を固定した状態で作り出すことができる構造であれば編み物といえる。一方で、縦糸に横糸をくぐらせる織物や、針金をねじったり結んだりしてできるフェンスや網は編み物ではない。
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(a)両端を固定した糸の一部(点線の円内)を操作して作れる構造(○)と作れない構造(×)。糸の両端を動かさずに絡めて作ったもの(b)は編み物だが、糸の端を動かして作ったもの(c)は編み物ではない(立命館大学の嶋本大祐専門研究員提供)
広く普及しているメリヤス編みなど既存の編み方であれば、糸の両端を固定した状態で作り出せることが分かる。ただ、未知の構造をもつ布地については、編み物として作成できるかどうかを判定する一般的な方法はなかった。嶋本専門研究員は、トポロジーの1分野である「結び目理論」に目をつけた。空間内で絡まった紐(ひも)状の曲線を、切らずに変形できるかどうかという観点から分類する理論だ。
結び目理論をもとに、布地に周期的に現れる絡み目を小さなセルの繰り返しと考え、ひとつのセルをほどいたときに他のセルがどうなるかを検討。編み物の場合、ある場所で生じた変化が周囲へと連鎖的につながるという共通の特徴のあることが分かった。たとえばストッキングの伝線のように、糸が切れたところからほどけていく布地が編み物として分類されるという。

判定したいテキスタイルを結び目理論に当てはめて考えるため、ドーナツ型の端のない編み物として用意。一部分を仮想的にほどいたとき、それが全体につながるか否かを見る(立命館大学の嶋本大祐専門研究員提供)
嶋本専門研究員は、「トポロジーの観点から編み物を定義する中で、編み物の本質が作りやすさと表裏一体の壊れやすさにあることが明らかになった」という。作りやすさを保ったまま、壊れやすさだけを取り除くため、「あるセルがほどけるためには、周囲の複数のセルが同時にほどけていなければならない」という構造を考案。一部がほどけても縦に限りなくほどけることなく、ある程度の穴で収まったという。
東北大学や青山学院大学などとの共同研究で、7月14日付けの国際誌フィジカルレビューXに掲載された。
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