「SEOには毎年数百万円かけている。LLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)も似た仕組みだから、SEOのやり方を延長すればいいですよね」--こうしたご相談を、実務の現場で受ける機会が増えました。結論から申し上げると、両者は似ているように見えて、別物です。

SEOの延長でLLMOに取り組もうとすると、いくつかの重要な観点で空振りが起きます。今回は、SEOとLLMOの違いを7つの観点で整理します。今あるSEO予算のうち何がLLMOに転用でき、何が新たに必要になるかを判断できる粒度で解説します。「AIに選ばれる企業のつくり方 - LLMO対策の実践ガイド」の過去回はこちら。

なぜ「SEOだけ」では守れなくなってきたのか

検索エンジンにおいて上位表示を取っても、そもそもクリックされない、という現象が増えています。GoogleのAIによる要約が検索結果の最上部に置かれる。ユーザーは要約を読んで満足し、下位のリンクを開かないまま次の行動に移る。この「ゼロクリック」の割合は、業界データによって幅がありますが、消費者向けの一般的な質問では相当高い水準に達しているというのが実務的な感覚です。

SEO対策の目的は、検索順位を上げてクリックを獲得し、自社サイトへの流入を作ることにあります。この目的自体は今も有効ですが、「クリックされる」という前提が崩れると、後段のコンバージョン設計にまで影響が出ます。SEOで1位を取っている企業から「以前より問い合わせが減った」というご相談が来るのは、この構造が背景にあります。

一方でLLMOは、AIの回答文の中に自社が「正しく登場する」ことを目指す取り組みです。クリックされることではなく、AIが回答を組み立てる際に自社の情報を参照し、回答に反映することを狙います。目的も、指標も、施策の中身も、SEOとは大きく異なります。

【打ち手の例】自社の主要キーワードで上位表示できているページのCTR(クリック率)[1.1]を、直近12か月で月ごとに並べる。下降傾向が見える場合、ゼロクリック化が既に自社にも波及しているサイン。

SEOとLLMOの7つの違い

両者を並べて整理したのが以下の表とベン図です。

  • AIに選ばれる企業のつくり方 - LLMO対策の実践ガイド 第3回

    SEOとLLMOの7観点の比較

  • AIに選ばれる企業のつくり方 - LLMO対策の実践ガイド 第3回

    施策の重なり領域

特に「対象」と「ネガ対応」の2項目は、SEOのやり方をそのまま持ち込むと空振りするポイントです。

SEOはGoogleを主戦場として設計されていますが、LLMOは複数の生成AI(ChatGPT、Gemini、Claudeなど)がそれぞれ異なる情報源を参照するため、1つのプラットフォーム最適化では不十分になります。ネガ対応も「下位に押し下げる」というSEOの発想では、生成AIの学習データに残った情報を消せません。「正す」「上書きする」というLLMO固有の考え方が必要になります。

【打ち手の例】今期のSEO予算を、施策単位で「LLMOに転用可能」「LLMOには効かない」「両方に効く」の3つに仕分けする。転用可能な施策と両方に効く施策を洗い出せば、新規に必要な追加予算が絞り込める。

「両方に効く」施策と「LLMO固有」の施策

SEO投資のうち、LLMOにも効く施策は少なくありません。以下は「両方に効く」代表例です。

  • 公式サイトのコンテンツ更新頻度の維持

  • 会社情報・事業内容ページの充実と最新化

  • 導入事例・お客様の声などの一次情報の整備

  • 代表者・現場担当者による外部発信(寄稿、登壇、インタビュー)

これらはSEOの被リンク獲得やコンテンツ品質評価にも寄与しますし、生成AIの参照対象としても機能します。今のSEO予算のうち、この領域に割いている部分は、LLMOの土台としても引き続き有効です。

一方で、LLMO固有で新たに設計が必要になるのは、以下のような領域です。

  • 口コミサイト・レビューサイトへの公式回答体制の構築

  • 複数の生成AIでの自社言及の定点観測

  • AIが参照しやすい文体・構造での一次情報整備(要旨明示、事実の順序立てた記述)

  • 誤情報を検知した際の対応フローの整備

SEOでは扱っていなかった「公式回答」「複数AI観測」「誤情報対応フロー」は、LLMOで新たに必要になる領域です。逆に、被リンク獲得やキーワード密度の細かな最適化といったSEO固有の施策は、LLMOへの寄与が薄い部類に入ります。

【打ち手の例】自社の直近1年のSEO施策リストを、「LLMOにも効いた/[3.1]効きそう」の観点で担当者と一緒に見返す。効いていない施策から縮小し、その予算を「口コミ公式回答」「複数AI観測」に振り替える案を作る。

LLMOで起きやすい3つの落とし穴

LLMOに新規に取り組む企業でよく見られる落とし穴を3つ挙げます。

落とし穴1:ポジティブ情報の発信だけに寄せる

自社の強みをコンテンツにして発信する、という打ち手は必要です。ただし、これだけではAIの回答は変わりません。既に外部に存在するネガティブな情報(古い口コミ、事実誤認、既に改善済みの過去のトラブル)が残っていれば、AIはそれを優先して参照する傾向があります。ポジティブ発信と、ネガティブ情報への対処は、両輪で進める必要があります。

落とし穴2:自社サイトだけを整えて完了とする

SEOのように「自社サイトを最適化する」で完結する発想を持ち込むと、外部の口コミサイト・レビューサイト・掲示板に残る情報がAIに引き続き参照されます。自社サイト整備と、外部情報源への働きかけの両方が必要になります。

落とし穴3:1つのAIだけで検証する

ChatGPTで自社の回答を確認して満足してしまう例があります。ただ、実際にはGemini、Claudeなどそれぞれで参照する情報源が異なり、回答の内容も語調も違います。1つのAIだけの検証では、他のAIでの語られ方を見落とすことになります。

【打ち手の例】自社名で「評判は?」「働くのはどうですか?」「事業内容は?」の3問を、ChatGPT・Gemini・Claudeの3つに投げる。回答内容と参照情報源の違いを1枚のシートにまとめると、SEO発想では見えていなかった課題が浮かび上がる。

SEOとLLMOを並走させる、現実的な進め方

SEOをやめてLLMOに全面移行する、という判断が現実的な企業は多くありません。指名検索や既存キーワードでの上位表示は、今もリード獲得に寄与し続けています。実務的な進め方は、SEOの継続を前提としつつ、LLMO固有の領域に段階的に投資を振り分けていく形になります。

初期の3カ月では、SEO予算の10~20%程度をLLMO領域(観測・公式回答体制・複数AI検証)に振り分ける、というのが着手しやすい規模感です。効果が見え始めた領域から段階的に比重を移していけば、既存のSEO成果を毀損せずに移行できます。

「SEOだけやっていれば大丈夫」という時期は終わりつつあります。かといって、SEOを全部やめてLLMOに一気に振る必要もありません。今あるSEOの中で、LLMOにも効いている施策を見極めて残す、効いていない施策を縮小する、新規領域に段階的に投資する。この3ステップを、今期の予算計画に織り込むところから始めることをお勧めします。

次回は「求職者にAIで足切りされている - 採用担当が今すぐ知るべきLLMOの守り方」というテーマで、AIによる企業評判の変化が採用フェーズにどう影響しているかを掘り下げます。