Teamsのハートスタンプがセクハラだと指摘され、人事部のヒアリングにまで至った――。2024年にSNSで拡散したこの事案は、気軽なリアクションが職場でどう受け取られるのかを問い直しました。

今回実施したビジネスチャット利用者310人へのアンケート調査では、リアクションに不快を感じた経験がある211人のうち、17.1%が「セクハラ」と認識していました。本記事では、リアクション全般への受け止めと問題が生じやすい関係性をデータで確認します。

【調査概要】

  • 調査対象:マイナビニュース会員のビジネスチャット利用者 310人
  • 調査期間:2026年7月23日~8月8日
  • 調査方法:インターネットアンケート
  • 属性分布:男性 166人、女性 144人

「不快を与えそう」なリアクション - 笑い38.4%、ハート36.1%

最初に紹介するのは、Teamsなどのビジネスチャットで「相手に不快感を与えそうなリアクション」を尋ねた結果です。自分が不快に感じたかどうかではなく、一般に不快を与えそうかを推測してもらう設問で310人全員が対象です。

最も多かったのは「😂 笑い」の38.4%(119人)。「❤️ ハート」は36.1%(112人)で2位でした。差は2.3ポイントにとどまり、ハートが突出して警戒されているわけではありません。

  • アンケート結果グラフ「ビジネスチャットで不快感や違和感を与えそうなリアクション」

    アンケート結果グラフ「ビジネスチャットで不快感や違和感を与えそうなリアクション」

真面目な相談をしているときに笑顔のリアクションを返されたとき(20代男性、ソフトウェア・情報処理、IT関連技術職)

笑いが最多票を集めた理由は、絵文字の見た目よりも場面とのミスマッチにあるようです。ハートについては、是非を決めかねている声が目立ちます。

ハートマークは男女ともに使っていいのかどうか、わからない(50代女性、その他電気・電子関連、事務・企画・経営関連)

ハートを許容範囲に置く人たちもいます。

基本的に「👍️」か「♥️」の2種類だけで足りると思っているが「逆さ笑い顔」などのビジネスに不要なリアクションを頻繁にするとナシだろうと感じる。(50代男性、繊維・アパレル、事務・企画・経営関連)

ハートだけを取り出して問題視できるかというと、少なくとも今回の調査データはそれを裏付けていません。

リアクションに不快を感じた経験は68.1% - 性別では男性73.5%、女性61.8%

さきほどの設問は「他者にどう受け取られそうか」という推測であり、回答者自身の不快経験ではありません。ここから視点を当人の実感へ移します。

ビジネスチャットのリアクションで不快を感じた経験があると答えたのは310人中211人、68.1%でした。男性は73.5%(122/166人)、女性は61.8%(89/144人)です。

リアクションに対する
不快経験あり
分母
全体 68.1%(211人) 310人
男性 73.5%(122人) 166人
女性 61.8%(89人) 144人

この設問はセクハラに限らず、リアクション全般への不快経験を尋ねたものです。したがって、このデータから性別ごとのセクハラ認識の傾向を読み取ることはできません。

不快経験者211人の17.1%が「セクハラ」と感じた - 最多は「手抜き・雑」

不快を感じた経験があると答えた211人を母数として、それがどのような受け止めだったのかを複数回答で尋ねました。

  • アンケート結果グラフ「リアクションから、どのような不快感や違和感を抱いたか」

    アンケート結果グラフ「リアクションから、どのような不快感や違和感を抱いたか」

不快に感じた内容
(複数回答・n=211)
割合 実数
対応が手抜き・雑 48.3% 102人
過剰にへりくだっている 29.9% 63人
上から目線・見下されている 24.6% 52人
立場を利用した圧力(パワハラ) 17.5% 37人
性的・恋愛的な含み(セクハラ) 17.1% 36人

セクハラと受け取ったのは17.1%、実数で36人。5類型のうちパワハラと僅差の最下位です。ここで見落としたくないのは、セクハラだと感じた人が「多数派ではない」ものの、「確かに存在する」という点です。

「17.1%だから過剰に気にしなくてもよい」と雑な解釈をすると、実際に不快を覚えた36人の受け止めは視野の外に消えてしまいます。全体の傾向と個々の受け止めを切り分けて考える必要があります。

なお、セクハラを選んだ割合を男女別にみると、女性22.5%(89人中20人)、男性13.1%(122人中16人)と9.4ポイントの開きがありました。ただし、男女それぞれの回答者数が100人前後と限られるため、この程度の差は回答者の偏りによっても生じます。本調査から「女性のほうがセクハラと感じやすい」と読み取ることはできません(p=0.110)。

自由回答に見る「手抜き・雑」と「セクハラ」

不快に感じるリアクションの最上位は「対応が手抜き・雑」、もっと日常的な受け止めでした。48.3%が挙げた「手抜き・雑」は、返答の重さと釣り合わないという形で語られます。

対応をお願いしたときに、完了の連絡をリアクションスタンプだけで済まされたこと。自分の対応に不備があってお願いされたのだから、完了報告はきちんと文字で打って連絡すべきだと思った。(30代女性、広告・出版・印刷、事務・企画・経営関連)

さらに自由回答を見ると、ハートのリアクションは性的な表現というより、「勘違い」を生む距離感の問題としても語られています。

ハートは勘違いするからやめてほしい(40代男性、専門コンサルタント、専門職関連)

あまりカジュアルになると勘違いが生じる(30代女性、生命保険・損害保険、営業関連)

リアクションの意味を相手との立場、そして性別との関係に分けて考えると、絵文字やスタンプの印象だけでは掴めない理由が見えてくるかもしれません。

不快なリアクションは誰から来たのか - 上司・上位者が最多

Teamsなどのリアクションに不快を感じた経験がある211人に、その相手との関係性を尋ねました。最多は上司・上位者の26.5%(56人)。先輩・年上の同僚19.9%(42人)と合わせた「自分より上の立場」は46.4%と半数近くを占めます。

  • アンケート結果グラフ「不快なリアクションを送ってきた相手との関係」

    アンケート結果グラフ「不快なリアクションを送ってきた相手との関係」

自由回答では、上位者からのリアクションは「断りにくさ」として語られます。

資料作成の時にお願いの絵文字を使われて断りにくかった(40代男性、ソフトウェア・情報処理、IT関連技術職)

ただし不快は、上から下への一方通行ではありません。後輩・部下を挙げた人も17.1%(36人)います。自由回答からもその様子がうかがえます。

上司からの提案などに部下や年下の人が、「いいね」のみで対応していると、上から目線に感じて不快な気持ちがします。(40代女性、ソフトウェア・情報処理、IT関連技術職)

同じ「いいね」でも、誰が誰に送ったかで受け止めが変わります。行為ではなく関係性が判定を左右している構図です。

異性を挙げた58人の不快 - 67.2%は上司・上位者から

相手の性別についても尋ねました。211人のうち「性別は無関係」が37.9%(80人)で最多、次いで同性29.9%(63人)、異性27.5%(58人)です。不快の多くは、そもそも性別と結びつけられていません。

  • アンケート結果グラフ「不快なリアクションを送ってきた相手の性別」

    アンケート結果グラフ「不快なリアクションを送ってきた相手の性別」

ちなみに、異性を挙げた58人に絞ると、そのうち39人が相手を上司・上位者と回答していました。異性を挙げた58人を分母とすると67.2%にあたります。

リアクションをハラスメントにしないために - 関係性で届き方が変わる

ハートを含む特定のリアクションだけを、一律に問題視すればよいわけではありません。受け手が最も多く挙げた不快は「手抜き・雑」であり、セクハラという受け止めもまた、相手との距離感や立場によって生じていました。

重要なのは、絵文字などの見た目によって使用可否を決めることより、関係性が非対称な相手ほど、リアクションだけで用件や感謝、配慮を済ませないことです。初対面、他部署、立場が上下する相手には短い言葉を添える――。ちょっとした気遣いが送り手と受け手のずれを小さくします。

上から目線的な感じや、ハートマークなど変に感じることなどがあった。自分はあまり気にしないタイプだが、気にする人は気になるんではないかと思った。(50代男性、重電・産業用電気機器、メカトロ関連技術職)

気にしない人と気にする人は職場に併存しています。問われているのは、どちらが正しいかではなく、相手がどちらなのかを想像できるかどうかです。