2026年6月10日~12日、幕張メッセにてInterop Tokyo 2026が開催された。今年は最新製品が実働するShownetでも水冷ラックが3台設置され、サーバだけでなく水冷スイッチも稼働するなど水冷製品が本格化していることを来場者に印象づけていた。

本稿では、11日に行われた基調講演「水冷化するサーバの傾向と対策」の内容を紹介する。スピーカーはデル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏だ。

  • デル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏

    デル・テクノロジーズ インフラストラクチャー・ソリューションズ営業統括本部 製品本部システム周辺機器部 シニアプロダクトマネージャーの水口浩之氏

AIサーバは少数派でも市場の主役に

水口氏は、AIの普及が進む中でGPUやCPUの高性能化を支える冷却技術の重要性を指摘した。

CPUサーバも1U製品でハイエンドCPU搭載では空冷が難しい状況になっているうえ、GPUはそれ以上の電力を消費するので「水冷設備を導入したほうが、より能力があるAIを早く確かなパフォーマンスで稼働できる」という。

  • 調査会社のレポートによれば少なくても2030年までAI/HPC向けコンピューター市場は拡大

    調査会社のレポートによれば少なくても2030年までAI/HPC向けコンピューター市場は拡大

水口氏は、IDCのデータも使いながら水冷サーバ市場を紹介した。GPU搭載サーバの販売台数は全体の8%程度にとどまる一方、販売額ベースでは43%を占め、2030年までは成長が持続するという予測がある。「作っても作っても不足感が続く」と、同氏は訴えた。

今後はAIサーバの販売がさらに拡大し、サーバ市場の成長をけん引するとみられている。将来的には市場全体の売上の大半をAIサーバが占めるとの予測も示された。

  • AIの実用化に向け、トークン単位の販売モデルが行われ「どこでどれだけ使うのが最も経済的か?」という検討が経営層で行われる。高額なGPU搭載機はサーバ市場の4%の数量だが、販売額では43%を占める

    AIの実用化に向け、トークン単位の販売モデルが行われ「どこでどれだけ使うのが最も経済的か?」という検討が経営層で行われる。高額なGPU搭載機はサーバ市場の4%の数量だが、販売額では43%を占める

GPUの消費電力は急増しており、1000W級が話題になっていたかと思えば、現在は2000W超が現実となり、2300Wや3600W級の製品も予告されている。こうした高発熱化を受け、Dellの上位AIサーバはすでに水冷を前提とした設計に移行している。

  • Dellの上位AIサーバはすでに水冷を前提とした設計に移行している ,Dellの上位AIサーバはすでに水冷を前提とした設計に移行している

    Dellの上位AIサーバはすでに水冷を前提とした設計に移行している ,Dellの上位AIサーバはすでに水冷を前提とした設計に移行している

AIサーバは「工場並み」の設備が必要な時代に

一方、大電力化への対応として三相400Vという「エレベーターやエスカレーターを動かすような大型の電気規格(水口氏)」も必要となる。例えばPowerEdge XE7745はGPUだけで最大4.8kWの電力を消費し、上位のXE9785になると最大11.2kWという「ちょっと昔からサーバルームとかデータセンターを構築している人間からすると、『ちょっと待ってよ』というような数値になっている(水口氏)」。

ハイエンドのラックスペール製品XE8712ともなるとラック当たり134kWとなる。これらの数値はGPUだけなので1ラック当たり140や150kWのサーバ提案はすでにざらになっていると説明した。

ラックの重量も1.5トンに達し、搬入経路や設置場所の耐荷重の検討も重要になる。

  • 消費電力も重量も増える傾向にあるため、サーバを注文して終わりではない。設置、テストと道のりが長くなりITだけの問題ではなくなってしまう

    消費電力も重量も増える傾向にあるため、サーバを注文して終わりではない。設置、テストと道のりが長くなりITだけの問題ではなくなってしまう

水冷技術はサーバやサーバルームだけの問題ではなく、冷却水を通す建物全体に大きな変化をもたらす。電力も三相400Vと工場やエレベーターで使うようなもので、ラック当たり150kWとAI「工場」と言える規模という。ラックの重量も1.5トンに達し、搬入経路や設置場所の耐荷重も重要になる。

  • 工場並みの電力、PG25と廃液処理も必要となり、ラックの重量も問題となるため、インフラ全体での取り組みが必要だ

    工場並みの電力、PG25と廃液処理も必要となり、ラックの重量も問題となるため、インフラ全体での取り組みが必要だ

日本では「日米の水質基準差」が新たな課題に

水口氏が日本での液冷におけるトピックとして挙げていたのが「日米の水質基準の差」だ。

CDUはASHRAEのガイドラインを基準としている一方、日本の設備側は日本冷凍空調工業会の基準を採用している。水口氏は「日本の方が基準が厳しいと思いがちだが、実はそうではない」と説明し、両者の差を吸収するために中間熱交換器の導入が必要になる場合があると指摘した。

  • 日本ならではの問題として、設備側のチラー等は日本の基準、CDUやサーバは米国基準となり、水質基準の差という問題が発生。中間冷却機の検討が必要になる

    日本ならではの問題として、設備側のチラー等は日本の基準、CDUやサーバは米国基準となり、水質基準の差という問題が発生。中間冷却機の検討が必要になる

水冷サーバ導入には業界横断の連携が不可欠

このような背景から、水口氏は水冷システムの実装には新しいエコシステムが必要と説明した。Interopの語源となる「Interoperability:相互運用性」というコンセプトは水冷システム実装の生態系にも当てはまるという。

従来、デル・テクノロジーズは主にIT管理者やSIerと対話してきたが、水冷サーバの導入ではそれだけでは不十分だ。データセンター事業者や建設事業者、設備事業者などと連携しながら計画を進める必要がある。

デル・テクノロジーズは昨年の「水冷元年」から「DSDS(Dell EMC LC Server and Datacenter Summit)」というイベントを開催している。

デル・テクノロジーズはこうした取り組みの一環として、「DSDS(Dell EMC LC Server and Datacenter Summit)」を開催している。昨年は延べ約2300名が参加し、2026年4月に開催されたイベントにも400名を超える来場者が集まったという。

  • デルテクノロジーズとしては水冷時代に向け、建設・設備事業者などを加えた新しい取り組みを開始。DSDSとしてイベントも実施している

    デルテクノロジーズとしては水冷時代に向け、建設・設備事業者などを加えた新しい取り組みを開始。DSDSとしてイベントも実施している

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講演の最後に水口氏は、水冷時代には業種を超えたコラボレーションが重要になると強調した。DSDSでも講演だけでなく参加者同士の交流の場を重視しており、水冷エコシステムの拡大に期待を示して講演を締めくくった。

  • Interop Tokyo 2026のデルテクノロジーズブース。今回は冷却ソリューションも見せるためにシュナイダーエレクトニックとの共同ブースとなっていた

    Interop Tokyo 2026のデルテクノロジーズブース。今回は冷却ソリューションも見せるためにシュナイダーエレクトニックとの共同ブースとなっていた