Neowinは6月8日(現地時間)、「LibreOffice developer takes a dig at Euro-Office in new open letter」において、LibreOfficeの開発母体であるThe Document Foundation(TDF)がEuro-Officeに公開書簡で異議を唱えたと報じた。Euro-OfficeはNextcloud、IONOS、Tutaなど欧州企業連合が「欧州のデジタル主権を支えるオープンソースの代替製品」と位置付けているが、TDFはこの主張に反論している。
Euro-Officeとは
Euro-OfficeはオープンソースのOnlyOfficeを直接フォークする形で開発されたオフィススイートだ。クラウドサービスのNextcloud、ドイツのホスティング大手IONOS、暗号化メールサービスを提供するTutaなど欧州企業の連合体が開発に参加している。
Microsoft 365やGoogle Workspaceなどのプロプライエタリなツールに対抗する「欧州のデジタル主権を体現するオープンソース代替」をうたっており、正式リリースを間近に控えて注目を集めている。
「欧州初のオープンソースオフィススイート」に反論
TDFが反論しているのは、Euro-Officeが「欧州で開発された最初のオープンソースオフィススイート」として紹介されている点だ。
OpenOffice.orgは25年前の2001年、それに続くLibreOfficeは2010年に誕生しており、欧州初のオープンソースオフィススイートの地位はOpenOffice.orgが持つべきだとTDFは主張している。公開書簡では、「オープンソースの取り組みは透明性を旨とすべきであり、欺瞞を許してはならないため、誤解を招く主張は訂正せざるを得ない」と記している。
TDF、OOXML採用も問題視
さらにTDFは、Euro-Officeの技術的な方向性にも疑問を呈している。Euro-OfficeはデフォルトでMicrosoftが作成したOffice Open XML(OOXML)形式を採用している。しかしTDFは以前から、OOXMLはMicrosoftが囲い込みを強化するために作成したフォーマットであり、ベンダーロックインを助長するものだという批判を繰り返してきた。このOOXMLを採用するEuro-Officeは、事実上Microsoftの利益に沿う存在と指摘した。
公開書簡では、Euro-Officeを「Microsoft Officeの無料クローン」と表現し、真のデジタル主権を実現する製品とは言い難いと主張している。TDFによれば、オープンソースソフトウェア(OSS)の価値はソースコードの透明性とオープン標準の採用にあり、Microsoft製の形式への依存を残したままでは欧州の技術的自立には結び付かないという。
一方でEuro-Office側としては、Microsoft Officeとの高い互換性によって、既存のドキュメント資産を維持したままツールを移行できる点を強みとして押し出している。将来的にはLibreOfficeと同様にOpenDocument Format(ODF)への対応強化も計画されている。
デジタル主権の実現手段を巡る議論
今回の論争は、欧州が推進するデジタル主権の実現方法を巡る議論の一端といえる。TDF陣営はオープン標準を軸とした独立性を重視する立場を示しているのに対して、Euro-Office陣営は既存環境との互換性を優先する方針をとっているからだ。Microsoft製品への依存を低減するという目標は共通しているものの、その実現手段の相違が明確になった事例だと言えるだろう。

