
現在の米中関係は短期的には「相思相愛」
─ 現在の米中関係についてどう見ていますか。
垂 米中関係は一見対立しているように見えても、「米中ディール」があるかも知れないと言われるように、利害調整と競争が交錯している状態だと言えるでしょう。単純な対立関係だけとは言えないと思います。
現在、米中は短期的には、相互に安定を求める関係にあると見ています。いわば一種の「相思相愛」とも言える局面です。もちろん対立している部分はありますが、お互いに経済面を中心に簡単には喧嘩できない理由もあります。
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─ 米中の狭間で日本外交は難しい時代になっています。
垂 中国にとって米国は最も重要な国であり、その重要性が増す中、対日関係の重要性は相対的に低下していると思います。日本は、米中関係の一つの従属変数のような存在だと見られています。
米国もまた日本も含む同盟国や友好国に対して高い関税を課すなど、自国優先の姿勢を強めています。そうした中、日本は米中の間で、自らの戦略を問われる局面に入っているのです。
─ 高市首相の「台湾有事は日本の存立危機」発言は物議をかもしました。
垂 そうですね。あの発言を契機として、日中関係は今、極めて厳しい状況になっています。
気を付けなくてはならないのは、これまで日中関係は「日中友好」という言葉に象徴されるように、感情的に語られてきた面が強いことです。現在の「中国はけしからん」といった議論も、本質的には同じ構造にあります。感情論を排した議論が必要です。
─ 日本企業にとって中国とは結びつきが強く、切っても切れない関係です。
垂 経済面から見ると、中国は大きなマーケットですし、距離的に近いこともあり、関係を断ち切る、いわゆるデカップルすることは現実的ではありません。一方で日中友好だけを叫んでいると、大きなリスクに直面します。資産接収や技術流出など、実際これまで何度も深刻な損失を被ってきました。
─ 中国とビジネスを行うには、常にリスクを考えておかなければなりません。
垂 大きなリスクが伴うということを強く認識する必要があります。以前「チャイナ・プラス・ワン」と言われましたが、それを単なる掛け声ではなく、実際の経営判断として徹底することが必要です。
また、チャイナリスクだけではなく、日本企業だからという理由で不利益を被るというという「ジャパンリスク」も考えなくてはなりません。この二つのリスクを前提に経済的に付き合っていく必要があるのです。