「260回以上の対話を経て」 トヨタ陣営による豊田織機のTOBが成立

2度の買取価格の引き上げ 

「今回のディールは大変注目していた。トヨタグループが投資家やファンドとどう対峙していくかが見えてくるからだ」 

 あるプライベートエクイティ(PE)ファンドの首脳は語る。トヨタ自動車などによる同グループの源流企業である豊田自動織機に対するTOBが成立した。これにより豊田織機は上場廃止となる。TOBが表面化されたのは昨年の5月。注目されたのは2度の買収価格の変更だ。 

 TOBを巡ってトヨタ側は当初、買収価格を1株1万6300円と設定していた。しかし、その時点で豊田織機の株価は1万8300円台に達しており、市場価格を下回る〝逆プレミアム〟に投資家の不満が噴出した。 

 そこに食いついたのが「物言う株主」として知られる米投資ファンドのエリオット・インベストメント・マネジメント。同社は「企業価値を著しく過小評価している」などと反発。さらに、当初は非公開化を前向きに評価していた英投資ファンドのAVI(アセット・バリュー・インベスターズ・リミテッド)も豊田織機の取締役会に対して難色を示していることも判明していた。 

 冒頭のPEファンド首脳は「エリオットは企業価値を測る専門部隊も持っている。その点、同社の反論に賛同する動きは一定程度あった」と明かす。これまでトヨタ陣営は「対象者の本源的価値を反映した価格」として買付価格は変更しない意向を示してきたが、フタを開けてみれば2度の引き上げを経て2万600円に変更すると、エリオットも応募を表明した。買収総額は当初比26%アップの約5兆9000億円に上る。 

 今回のディールをまとめたのが4月1日付でトヨタ自動車社長に就いた近健太氏(トヨタ不動産取締役)。価格の変更について同氏は「投資家と260回以上の対話をしてきた。その声を我々の提案に反映させなければならないこと、さらに自動織機株価の推移や株式価値の変動などの環境変化も鑑みた」と語る。 

 今後は非上場化する豊田織機の成長戦略だ。「モノの移動」を牽引する企業として長期的な成長軌道を描くためにも、具体的な戦略づくりが求められる。

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