
提供した商品は想定以上の実績に
「あおぞら銀行との協業によるシナジーは着実に具現化し、計画通り、2027年度に100億円の提携効果を実現できると自信を深めている」─こう話すのは大和証券グループ本社社長の荻野明彦氏。
大和証券が進める証券と銀行の融合モデルが、徐々に具体的な形を見せてきた。大和証券G本社があおぞら銀行との資本業務提携を発表したのは、2024年5月のことだった。
大和証券G本社があおぞら銀行の第三者割当増資に応じて、519億円を出資、15%超を保有する筆頭株主となった。
続けて同年6月、旧村上ファンド系の投資会社・シティインデックスイレブンスと、村上世彰氏の長女である野村絢氏が保有していたあおぞら銀株を追加取得。議決権ベースで23.95%を保有することになった。
24年2月、あおぞら銀は米国でのオフィス向け融資の悪影響で15年ぶりの赤字となったことを発表。同時期に旧村上ファンド系投資会社が急遽、あおぞら銀の大株主として浮上し、緊張感が走った。だが、その後わずか3カ月で事実上、大和証券G本社が〝救済〟した形となった。シティ社の保有株式まで買い取って、問題は収束。
現在は、冒頭の荻野氏の言葉のように提携効果の具現化に向けた取り組みを進めている最中。
初の共同事業となったのが、25年8月から始めた、両社共同出資による「大和・あおぞらチャレンジファンド」。主に経営難となった中堅・中小企業を対象に再生を図る取り組み。具体的には、再生企業と取引する銀行など金融機関から不良債権を買い取ると同時に株式も取得し、再建計画を進める。
25年10月には、あおぞら銀行で大和証券の資産運用サービスであるファンドラップ「みらい彩りラップ」の販売を開始。10月の契約額で、すでに今期に計画していた150億円を達成するなど、順調なスタートを切っている。「貯蓄から投資への流れを受けて、想定以上に進んでいる」(荻野氏)と手応えを感じているようだ。
「みらい彩りラップ」は他にも栃木銀行、三十三銀行にも提供しており、地銀との連携における1つの武器にもなっている。
また、企業のMBO(経営陣による買収)による非公開化でも、大和証券が企業のファイナンシャルアドバイザーとなった案件で、あおぞら銀行がファイナンスを提供するという形ができてきており、証券と銀行の連携モデルも動き始めた。
24年以降で、紹介に同意した顧客数が700社以上、累計の投融資実行額は74件、1240億円となった。その結果、あおぞら銀行の今期の業務純益に21億円のプラス効果が出ている。
市場からは、大和証券G本社による、あおぞら銀株の追加取得があるのか?という目線もある。この見方に対して荻野氏は「重要なのは両社の強みを生かして、現在の枠組みの中でしっかりと成果を出すことと、その最大化。今後については、あらゆる可能性を否定するものではないが、今現在は株式の保有比率について議論する段階にない」と述べるにとどめている。
今、野村ホールディングスも25年4月に個人部門、法人部門、資産運用部門に次ぐ「第4の柱」として「バンキング部門」を立ち上げている。グループの野村信託銀行を中核として、銀行への注力を鮮明にしており、大和証券としても、あおぞら銀との相乗効果発揮が急がれる。さらにはネット専業銀行・大和ネクスト銀行といかに連携するかも注目される。
大和証券はかつて、三井住友銀行と法人部門の合弁会社「大和証券SMBC」を展開していたが10年で解消。銀行との連携という長年の課題を仕上げることができるかが問われる。
成長に向けた投資を実行できるか?
大和証券のみならず、証券各社を取り巻く環境はいい。荻野氏も「証券ビジネスにおいて、またとない好機が訪れている」と話す。25年10月末には日経平均が5万2000円台を付けた。
大和証券の見通しでは、26年末の日経平均は6万円と想定している。現在同社が進めている中期経営計画を策定した2年前から見ると、約2倍の水準。
25年6月末時点で、日本の家計金融資産は約18年半ぶりに現預金が前年同期比でマイナスとなった。その一方で、「有価証券への資金流入はインフレと共に増加しており、現預金比率が50%を超える時代の終わりは近い」(荻野氏)
グループの大和総研の予測では、2045年には家計金融資産は現在の約2倍、そのうち有価証券は約4倍にまで増加する見通し。
その環境下、荻野氏は「当社にはフォローの風が吹いており、中長期的な企業価値向上のためには積極的かつ優先的に成長投資を実行するフェーズにある。実行した成長投資から利益を積み上げ、これを原資として還元と、さらなる成長投資を行い、さらに利益を積み上げる好循環を実現していきたい」と話す。
問われるのは、この成長投資をいかに具現化するか。大和証券G本社が成長投資に振り向けることができるとする「未使用資本」は3000~4000億円。還元と成長投資をどう両立するのか。
追い風が吹いている間に、次の成長に向けた手をきちんと打つことができるかで、その後の会社のあり方が変わってくる難しい局面。荻野氏にかかる責任は重い。