【金融国際派の独り言】長門正貢・元日本郵政社長「アクティビストとの上手な交信方法」

 アクティビストの動きが活発だ。彼らは、マイノリティ出資をし個別課題を株主提案、企業にその提案を採用させ企業価値が上昇後、株を売って収益を得ることを狙っている。

 東証が2023年に「PRB1倍」ルールを上場企業に要請したことも追い風だった。アクティビストが資本効率や株価を意識した経営を加速してくれるのは一つの株式市場への貢献だが、企業にとってはリスクもある。アクティビストは経営上の正論を提示しつつも、当たり前だが、自身の利益が最優先だからだ。

 

 アクティビスト提案策の内、二つについて評価したい。一つ目。多くのアクティビストは現金保有の大きな企業に増配や自社株買い等の株主還元を提案する。アクティビストのみならず市場一般でも広く推奨されている株主還元策の優等生でもある。

 確かに、この方法では一株当たりの価値は高まり経営指標数字好転として市場評価は高いだろう。

 

 だが、企業は純資産を削って株主に分配するだけであり、自身の長期的成長につながる保証は全くなく、実は個人的には十分納得していない。時代は音をたてて流れている。

 企業は目を凝らして成長に資する投資機会を探している。その機会を捉え得るのはユトリある自己資本だ。余力を温存した範囲内での還元策に留めるべきだろう。

 

 二つ目。旧村上ファンドがフジサンケイグループに提案したように、不動産資産を切るべき、という提案も多い。不動産で持ち続けるべきか、売却資金で先行投資に回すべきか。

 朝日新聞や読売新聞の売上は紙&文字離れの中、急落している。しかし会社業績への懸念が大きくないのは豊富な保有不動産のお陰だろう。同時に、この不動産資産はWEB報道勝ち組・New York Timesに追い着くまでの時間稼ぎ機能でもあろう。

 一方、サッポロビールは恵比寿の不動産を4770億円で売却した。売却で得た資金をビール事業の発展に使う由だ。残念ながらサッポロはビール業界で最下位だ。長く2位だったが、スーパードライのアサヒビールに1989年に抜かれ3位に、そして後発サントリーにも08年に抜かれた。

 資金を本業ビール業の起死回生・挽回策に充てるか。あるいは、新業種への進出や企業買収に充てるか。不動産というクッションをあえて捨て、サッポロは意図的に背水の陣の構えだ。賢明な投資・大勝負が必須になる。

 

 アクティビストは金儲け大好き集団だが、経営向上の為の諸政策を提示してもくれる。だが盛衰を賭け、政策を選択し経営するのは企業自身だ。アクティビストとは賢い交信が肝要だ。企業経営者の皆さん、頑張れ!