2025年10月14日から17日までの4日間、幕張メッセで「Society 5.0」の実現に寄与するさまざまな技術が一堂に会する展示会「CEATEC 2025」が開催された。

「Innovation for All」をテーマに開催された同展示会において、NECは、「すべての変革に +AI」というコンセプトの下、「モビリティ」「マーケティング」「顧客体験」「人材育成」という4つのテーマで、NECのAI技術の取り組みやBluStellarの先進技術、具体的なソリューションなどを紹介した。

本稿では、それらから「映像認識AI×生成AIによる安全なモビリティ社会」「購買傾向分析データ×生成AIによるマーケティング施策立案」「逆光にも強いAIカメラで広がる」の3点を紹介する。

  •  展示された4つのテーマ 「モビリティ」「マーケティング」「顧客体験」「人材育成」

    展示された4つのテーマ 「モビリティ」「マーケティング」「顧客体験」「人材育成」

映像認識AI×生成AIによる安全なモビリティ社会

ここでは、NEC開発の映像認識AI(マルチモーダル化)と大規模言語モデル(LLM)の組み合わせによって、運転データからドライバーの運転と走行環境を分析、改善案を提案するソリューションが紹介されていた。

同ソリューションは、ドライブレコーダー映像などの「走行映像」、速度や加速度などの「センサデータ」、ブレーキ・アクセルなどの運転操作のデータである「運転データ」をもとに、NEC独自のファウンデーションモデルを活用することで、運転・診断レポートを作成する。

展示会場には、運転シミュレーターが設置されており、来場者は自分の運転をAIに診断してもらうことができた。筆者も体験させていただいたが、良かった部分と失敗した部分に的確なアドバイスと評価を受けられ、自分の運転を見直すきっかけになった。

  •  筆者も運転シミュレーターを体験させていただいた

    筆者も運転シミュレーターを体験

このソリューションを活用することで、ドライバーの運転の習慣変容を促し、事故率削減や燃費改善を実現するほか、走行環境の事故発生リスクを分析し、事故防止策を提案、事故を予防することができるとのことだ。

  • 運転をAIに評価してもらえる

    運転をAIに評価してもらえる

購買傾向分析データ×生成AIによるマーケティング施策立案

次に紹介するのは、マーケティング施策立案ソリューションの「Best Move」だ。同製品は、商品・サービスの特徴からターゲット顧客の特徴、施策の内容を引き継いで、最終的な打ち手を決められる「セルフコンサルティング型のSaaS」として開発されたマーケティング業務を変革するAll in oneツールだ。

顧客分析から施策立案、効果予測までの一連の業務プロセスをワンストップで支援することで、マーケターが確信を持って意思決定できるようになるとともに、ナレッジ共有により人材育成や生産性向上にも寄与する。

  • 「Best Move」のイメージ

    「Best Move」のイメージ

企業のマーケター(プロモーション、広報、商品企画、営業販促などの担当者)は、市場調査データや認知度調査データなど、さまざまなデータを複合的に観察しているものの、どのデータも互いの関連性が弱く、「自社の商品を、どのようにプロモーションしたら、どのような効果が出るのか分からない」という課題を抱えているという。

NECはこの課題解決に向け、最新AI技術を10個以上組み合わせ、誰もが簡単に最適な施策を立案し、確信を持った意思決定を支援するソリューションとしてBestMoveを2025年5月に開発した。

展示会では伊藤園の導入事例が紹介されており、同社のAIを前提としたマーケティングプロセスの改革支援が紹介されていた。

  • 伊藤園の導入事例

    伊藤園の導入事例

逆光にも強いAIカメラで広がる顔認証

ここで紹介されたのは、NECの顔認証技術とソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)のAIチップを搭載のカメラ(AIカメラ)を融合した入退管理ソリューションだ。

  • 展示されていたAIカメラ

    展示されていたAIカメラ

一般的に顔認証技術の性能や信頼性は、設置環境に大きく左右され、特に、低照度、逆光、斜光などの条件下では、認証精度の低下や設置場所に制限が生じることが課題とされてきた。

同ソリューションには、NECが開発した光環境の変化に強いAIモデルが搭載されており、AIカメラとAIモデルを融合することで、窓がなく十分な照度を得にくい工場や倉庫、夜間に照度が変動する店舗、外光の影響を受けやすいテーマパークやスタジアムなど、従来、設置環境が原因で導入が難しかった施設への導入と高い認証精度を実現することが可能となっている。

展示会内では、同ソリューションを使った逆光の条件下での顔認証のデモンストレーションや真っ暗な部屋の中での顔認証のデモンストレーションが実施されており、光環境の悪い状況でも綺麗に認証が行える様子が確認できた。

  • デモンストレーションのイメージ 逆光でも顔認証が問題なく行えている

    デモンストレーションのイメージ。逆光でも顔認証が問題なく行えている