第三者保守サービスを手掛けるブレイヴコンピュータとひとり情シス協会は10月15日、第三者保守戦略に関する記者説明会を開催した。ブレイヴコンピュータの代表取締役である神山悟氏は「デジタル庁ガイドラインの浸透、情シスの人材不足、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)投資の増加による守りのIT投資の減額から、第三者保守に注目が集まっている」と説明していた。
第三者保守の現状 - 国内では活用が進まず
ひとり情シス協会の調査によると、国内の中堅・中小企業においては63.1%の企業がIT人材不足を実感しているという。そのため、同時に複数のプロジェクトを実行できない上に、EOSL(End of Service Life:サポート終了)にプロジェクト計画を左右されやすい。
また、68.5%がITに関する予算がないと回答しており、年次で計画的に予算を捻出できず、サブスクリプションモデルのITサービスに対応できていない。さらに、現状の設備や最低限の環境維持に手一杯で、新規のデジタル化への投資も困難とされる。
ひとり情シス協会の清水博氏は「当協会の調べによると、ITへの投資には売上の3.2%が必要。しかし実態は売上の0.7%しか使われておらず、セキュリティリスクへの対策や価格上昇に対して投資額が絶対的に少ない」と指摘した。
グローバル市場を見ると、サーバの第三者保守を活用している企業は48.8%と約半数だ。第三者保守によりITコストを削減できた事例も多いという。また、ベンダーのサポート終了後にも修理用部品の確保を保証する重要な機能を、第三者保守が果たしている。
その理由には、海外ではSLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)に基づき、サービスレベルが達成されない場合には返金や支払い停止の権利が行使されるなど、コストにシビアな点が挙げられる。
また、長期的な人間関係よりも経済合理性を優先し、ベンダーロックインの回避に積極的な姿勢もあるとのことだ。システムインテグレータやリセーラーも、ベンダーサポートではなく第三者保守と組み合わせて提案する例が一般的とされる。
対して日本では、第三者保守の利用はわずか12.3%にとどまる。そうした中ではあるが、日立システムズとゲットイットが第三者保守を軸とした新サービスの開始を発表したほか、エクシオグループが第三者保守を手掛けるエスエーティを子会社化するなど、徐々に国内でも第三者保守が活発化している様子がうかがえる。
9月には出光興産がリミニストリートの第三者保守サービスを利用し、SAP S/4HANAへ移行せずにSAP ECC 6.0を延命したことが発表された。
清水氏は「純正保守を見直して第三者保守を利用することで、EOSLを回避してクラウド移行やシステム統合などリプレース計画に余裕が生まれる。そして、この間に次の手を熟考できる。さらには、守りのIT投資を節約して、例えば生成AIのライセンスを従業員に配布するなど、攻めの有益な投資に活用してほしい」と提案した。
第三者保守を活用するためのシナリオや上申のスピーチ例を公開
ブレイヴコンピュータとひとり情シス協会はこのほど、中堅・中小企業を取り巻くIT環境を考慮し、海外での第三者保守サービス活用事例などを踏まえて6つのユースケースを公開した。これにより、第三者保守の導入が容易になることを目指す。
6つのユースケースはそれぞれ、「ハードウェア延命戦略」「レガシーシステムのセキュリティ強化」「クラウド以降のための移行期間確保」「中小企業の情シス人材不足への対応」「SIerのエンジニア人手不足への対応」「医療機関における専用システム延命」だ。
例えばハードウェア延命戦略であれば、「製造業のA社は生産管理システムを2020年委導入したDELLのPowerEdgeサーバで運用しています。2025年にメーカー保守が終了する予定ですが、システム自体はまだ問題なく作動しており、情シス人員の工数不足、予算の制約もあるため、すぐに全体を刷新することは困難です」のように、事例に基づくユースケースが紹介される。
これと合わせて、「第三者保守サービスを契約し、2028年までのハードウェア延命を計画。その間に次期システムへの移行を段階的に進めることにしました」と、解決策が示されている。
さらに「交換部品の調達ルートと在庫状況を事前に確認し、契約時に明確な対応SLAを設定することで、リスクを最小化しました」と、注意すべきポイントも記載されている。
今回公開された第三者保守活用シナリオにおいては、経営層など決裁者に対する上申のテクニックも紹介されている。例えば、「結論先行:冒頭で提案内容と財務効果を明示する」「数値具体化:定量的根拠を示す」「リスク先回り:想定される懸念と対策をセットで説明する」といった具合だ。
加えて、これらのテクニックを踏まえて1分間で上申するためのスピーチ例なども記載されている。
第三者保守活用シナリオの公開に伴って、ひとり情シス協会は2026年3月31日まで、第三者保守に関する相談窓口を開設する。活用シナリオに関する質問や、上申方法に関する相談、セカンドオピニオン、新しいユースケースの開発などに対応するとのことだ。
第三者保守の現場「BRAVE BASE」に潜入
ブレイヴコンピュータは2024年5月、第三者保守サービス「つなぎ保守」の中核を担うカスタマ・テクニカルセンターを拡大移転し、「BRAVE BASE(ブレイヴ ベース)」として稼働を開始した。
つなぎ保守は、EOSLを迎えたサーバやネットワーク機器、ストレージなどを次の更改までつなぎ、ハードウェアの安定稼働を支援する第三者保守サービス。主要な国内外メーカーに対応可能なマルチベンダー対応で、自社エンジニアが常駐するコンタクトセンターで24時間365日、障害を受け付ける。
障害対応においては、マシン単位ではなくパーツ単位で対応可能なため、低コストでの運用を実現し、情シスのIT予算への負担軽減に寄与する。また、詳細なパーツはメーカーや機種ごとに分類、ラベル付けして保管されている。
不要となったHDDは、破砕機で物理的に破壊する。破砕後のHDDは契約期間が満了となるまで、施錠された専門のキャビネットで保管される。必要に応じて破砕証明書の発行にも対応可能。
保守部材の保管室は、各パーツがラベルで管理されている。これらのデータはシステムに登録されており、データベース化されている。どのサーバの何の構成部品なのかもラベルで管理されているという。
また、各マシンは静電マットの上に、滑落防止のネットと耐震ベルトで固定されている。ラックは床に固定されており、地震発生時の被害を最小限に抑える工夫が施されていた。











