スプラッシュトップとひとり情シス協会は3月16日、日米の従業員20名から200名までの中堅中小企業の製造業を対象に実施した「日米デジタルエンゲル係数比較調査」の結果を発表した。

調査対象は、米国153社、日本453社、シンガポール34社、タイ28社。「デジタルエンゲル係数」とは、:消費支出に占める食費の割合「エンゲル係数」にたとえて、企業の販売管理費に占める企業のIT運用コストをひとり情シス協会が独自に表現したもの。

ひとり情シス協会 清水博氏は、同調査で明らかにしたかったこととして、「日米中堅中小企業でIT運用の違い」「中堅中小企業のIT投資が適正性」「中堅中小企業セキュリティ事故が多発する要因」「日米の情シス業務の違い」を挙げた。

  • ひとり情シス協会 清水博氏

清水氏は、調査結果を紹介する前に、日本と米国では、ITコスト投資の考え方が違うことを説明した。日本では売上高の1%前後が大手企業の一般的な投資と考えられているのに対し、米国では販売管理費の5%がIT運用の平均金額と言われているという。

今回の調査より、日米中堅中小企業の「デジタルエンゲル係数」の平均は、米国が12.7%であるのに対し、日本は4.3%ということが明らかになった。年間の従業員1人当たりのデジタル投資は、米国が52万1,360円に対し、日本は9万3,710円と、大きな格差が明らかとなった。

  • 日米中堅中小企業デジタルエンゲル係数 - 平均値

  • 日米中堅中小企業デジタルエンゲル係数 - 平均値の差

清水氏は、日米デジタルエンゲル係数の差が大きい項目として、以下の5点を挙げた。セキュリティ対策の費用の低さは、日本の中堅中小企業がサイバー攻撃に対して脆弱であることを裏付けているともいえる。

  • 外部サポートの活用(22倍差)
  • クラウド(SaaS)の活用(17.1倍差)
  • 情シス人件費(9.7倍差)
  • セキュリティ対策費用(9.3倍差)
  • ソフトウェア・ライセンス投資(3.8倍差)
  • 日米デジタルエンゲル係数の差

今回の結果について、清水氏は「日本平均値では最低限のIT環境にも満たない」と語った。現在の状況から、最低限の環境にまで引き上げるには、デジタルエンゲル係数を11.5%まで上げる必要があるという。

  • 日本企業の目指すべきデジタルエンゲル係数

このように、日本の中堅中小企業のデジタルエンゲル係数が最低限にも満たない理由としては、以下の5点が挙げられた。

  • SaaS系クラウドの採用(12.5倍差)
  • 少人数情シスを補う外部サポートの活用(10.8倍)
  • 情シス人件費(8.6倍差)
  • セキュリティ施策の充実(5.7倍)
  • PCリプレース期間の長期化(3倍差)

さらに、清水氏は米国に比べて日本の労働生産性が低いことが、デジタルエンゲル係数にも影響を及ぼしていることを示唆した。、1人当たりの売上を20%向上して1人当たり1650万円にし、粗利率を20%向上して19.1%を実現すると、デジタル投資の割合を20.3%から13.7%に下げられる。「1人当たりの売上を向上すると、粗利も上がり、デジタル投資も上がる」(同氏)

スプラッシュトップ チャネルセールスマネージャー 中村夏希氏からは、中小企業で利用が多い無料リモートアクセスツールに関する調査結果が紹介された。

  • スプラッシュトップ チャネルセールスマネージャー 中村夏希氏

同社が行った調査では、3,189人の情シス担当者のうち57.7%が、テレワークで使用する無料のリモートアクセスツールの使用経験があるという結果が出た。

さらに、無料のリモートアクセスツール使用経験のある1,093人の85%が現在も使用していることがわかった。31人~200人の中堅中小企業では、89.5%が現状も使用し、60.7%が無料ツールに対してセキュリティに不安を抱えながら使用しているという状況だという。

中村氏は、「中小企業のテレワークに無料のツールが使われている背景には、セキュリティの予算が制限されていることがある。しかし、無料のツールを使うと、セキュリティリスクを高めることにつながる。実際、中堅中小企業のセキュリティ事故が増えている」として、無料のリモートアクセスツールを使う際のリスクについて、注意を呼び掛けた。