10月8日、千葉県の幕張メッセで「地方自治情報化推進フェア2025」が開幕した。同9日まで開催する同フェアは地方公共団体の情報化を推進するための展示会だ。今年で34回目を迎え、日本最大級の地方公共団体向け情報システム展示会となっている。本稿では同フェアに20回以上、出展している両備システムズのブースを紹介する。

自治体DXを推進する最新サービス

同社の出展製品テーマは「自治体DXを推進させる各種サービス」「こども家庭庁政策に向けて」「クラウドサービスの活用」「ヘルスケア・ウェルネス領域への取り組み」の4つだ。窓口業務の効率化から内部情報システムの整備、多要素認証や滞納管理まで、自治体の情報政策を支えるサービスを幅広く展示。

なかでも多くの人が関心を示していたものが、自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進させる各種サービスとして展示していた「R-STAGE窓口DXサービス」だ。同サービスはデジタル庁の「令和7年度ガバメントクラウドにおける地方公共団体への窓口DXSaaS提供事業者」に認定されている。

その特徴は「書かない」「待たない」「迷わない」だ。窓口業務は、例えば住民基本台帳関連や戸籍・証明関連、税・保険関連、マイナンバーカードの交付といった行政サービスが挙げられる。区役所や市役所、役場の職員は人員不足や専門知識が必要なため業務負荷が高くなり、結果として住民側で長時間の待ち時間、手続きの複雑さなどにつながってしまっているのが現状だ。

  • 「R-STAGE窓口DXサービス」の展示

    「R-STAGE窓口DXサービス」の展示

同サービスは、まずマイナンバーカードなどで本人確認を行い、住民記録システムや税務システムなどの業務システムのデータを活用。住民は窓口でヒアリングを受けるとともに、選択式の質問に回答する。

  • 「R-STAGE窓口DXサービス」のサービス運用イメージ

    「R-STAGE窓口DXサービス」のサービス運用イメージ

職員は手元のPCのミラーリング機能で住民と一緒に内容を確認するため、必要事項の確認漏れや手戻りを防止できるほか、住民用タブレットは設問ごとのミラーリング表示の有無、表示言語の切り分けを可能としている。受付内容はRPA(Robotic Process Automation)連携で業務システムに反映し、必要手続きの自動判定や申請書を作成できる。

  • 「R-STAGE窓口DXサービス」の機器導入イメージ

    「R-STAGE窓口DXサービス」の機器導入イメージ

最終的にはタブレット上で住民が電子署名し、次の窓口への引継ぎ、他課の職員と情報共有を行う。これにより、住民は署名のみで手続きが完了するため書く必要がなく、業務システムとのデータ連携で事務処理時間が短縮されることから、待つ必要もない。そして、情報が共有されるため迷うこともないというわけだ。

  • 住民が利用するタブレットに映し出された手続きの案内

    住民が利用するタブレットに映し出された手続きの案内

  • 職員が利用するPCに映し出された手続きの案内

    職員が利用するPCに映し出された手続きの案内

  • 住民が利用するタブレット上の署名欄

    住民が利用するタブレット上の署名欄

そのほか、自治体DXを推進させる各種サービスは「公開羅針盤」において、「Azure OpenAI Service」と「Azure AI Search」などの生成AIを業務に組み込んだ自治体特化型内部情報システムや「Microsoft 365」との併用を訴求していた。

  • 「公開羅針盤」のブース

    「公開羅針盤」のブース

自治体DXを支える政策対応・クラウド・ヘルスケアのソリューション

こども家庭庁政策に向けた展示では、こどもデータ連携プラットフォーム「こどもの杜」が同庁の「こどもデータ連携実証採択団体」に採択され、フォローが必要なこども・家庭の早期発見とプッシュ型支援を実現するとしている。また「家庭児童相談システム」は市区町村の家庭児童相談など、発達相談や重層的支援といった相談管理に対応するシステムとしてアピール。

クラウドサービスの活用では、自社のデータセンターからクラウドサービスやガバメントクラウド、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)と接続するPaaS(Platform as a Service)基盤の「R-Cloud」のほか、LGWANとインターネット間でセキュアなファイル共有を可能とする「R-Cloud FileShare」などを展示していた。

ヘルスケア・ウェルネス領域への取り組みでは、健康管理システム「健康かるて」や健診機関向けソリューションで予約から問診回答を行う「AITEL」、自治体における母子保健業務全般を支えるサービス「ネウボラかるて」を出展。健康かるてに関しては2026年に現在の780団体から900団体への導入を目指しており、地方公共団体システム標準化への対応や豊富な拡張サービスにより業務のDXを実現できる点を強調していた。

  • ヘルスケア・ウェルネス領域のブース

    ヘルスケア・ウェルネス領域のブース

両備システムズ 代表取締役COOの小野田吉孝氏に、フェアへの出展の意義を尋ねたところ「これからのトレンドとしては、生成AIやDXに伴う業務改善が挙げられる。自治体さんの課題を解決するためには、基幹業務の現場に対する深い知見を持つ当社にアドバンテージがあると考えている。普段であれば営業マンが営業している、実際にサービスを見て、技術者が説明するのでは異なるものがある。そのため、当社のブースに来訪してもらい、リアルの商談を含めて活性化させていきたい。将来的には、自治体に行かずとも申請ができたり、証明書がもらえるような状態にしたいと考えており、最終的には住民サービスの向上を目指したい」と力を込めていた。