日本オラクルはこのほど、人事におけるAIエージェントの最新動向に関する説明会を開催した。同社は、組織全体の採用から退職までの人事プロセスの最適化を支援するため、「Oracle Fusion Cloud Applications」にAIエージェントを追加している。
9月22日には、「Oracle Fusion Cloud Human Capital Management (HCM)」に対し、キャリアサポートと外部からの採用、キャリア開発とスキルアップ、人事のコア機能、従業員ライフサイクルと給与に関わる13のAIエージェントを追加したことを発表した(参考:Oracle Fusion Cloud HCMに13のAIエージェントが追加、幹部が語る差別化のポイントは)。
先般、株価が急騰し創業者のラリー・エリソン氏が世界一の富豪になったことが報じられているほか、中国の動画アプリ「TikTok」の米国事業も同社を中心とする企業連合に移管されることが決まるなど、話題に事欠かないオラクルだが、クラウド事業でも好調なようだ。
AIエージェントを支えるテクノロジーの優位性とは
初めに、理事 クラウド・アプリケーション事業統括 アプリケーション・ソリューション戦略統括 インダストリー&事業戦略本部 本部長 中山耕一郎氏が同社のAIへの取り組みについて説明した。
中山氏は、OpenAI、Microsoft、Meta、NVIDIAなど、さまざまなAI企業大手がAIインフラとしてOracle Cloud Infrastructure(OCI)を採用しているとともに、GPT-5やGeminiなどの最新AIモデルがOracle Cloud上で提供していることを紹介し、同社がAI企業として重要なポジションにいることを強調した。
「オラクルと言えばAI、AIといえばオラクルという認識が広まってきている」(中山氏)
さらに、中山氏はオラクルのAIエージェントを支えるテクノロジーの優位性として、OCI Superclusterとシングルデータモデルを挙げた。
OCI Superclusterは低レイテンシーの低さを売りとしている大規模AIクラスタで、他社と比較して、学習時間を最大50%削減、コストを80%削減するという。
データベースは同社の主力製品だが、AIエージェント稼働の前提となるよう統合されており、「AIを開発する上でアドバンテージになっている」と中山氏は語った。
Oracle Fusion Cloud HCMのAI機能
続いて、クラウド・アプリケーション事業統括 アプリケーション・ソリューション戦略統括 ソリューション・エンジニアリング本部 パートナーイネーブルメント HCMソリューション リード 矢部正光氏が、Oracle Fusion Cloud HCMのAIについて説明した。
人事領域はAIによる効果を上げやすいことから、最も多くAI機能を出しているという。同社は人事領域において、以下の5点について製品を強化しているという。
- 卓越したエクスペリエンスでワークフォースを強化
- 異動や成長へ向けてスキルアップ
- トップ人材を惹きつけ、リテンション
- リーダーやマネージャーを強化
- ビジネスの俊敏性と最適化を促進
Oracle Fusion Cloud HCM における生成AI機能
矢部氏は、Oracle Fusion Cloud HCM における生成AI機能も紹介した。日本向けには、生成AIを活用した機能として以下が提供されている。
- 目標管理
- 評価管理
- キャリア開発に関する提案
- 仲間からの評価
- パフォーマンス・フィードバック
- 自己PR
Oracle Fusion Cloud HCMにおけるAIエージェント
Oracle Fusion Cloud HCMでは100以上のAI機能が提供されており、前述したように、22日には13のAIエージェントが発表された。特定のビジネスプロセスやトランザクションのコンテキスト内で、質問への回答、パーソナライズ されたガイダンスの提供、タスクの自動化など、AIを活用したサービスで従業員を支援する。具体的には、以下のAIエージェントが提供されている。
- キャリア・プランニング・ガイド
- 業績・目標アシスタント
- 従業員採用アドバイザー
- ラーニング&トレーニング・アドバイザー
- タレントレビュー・アシスタント
AI Agent StudioでAIエージェントを開発可能
中山氏はAIエージェントに関わるソリューションとして、AI Agent Studioを紹介した。これはオラクルも利用している開発ツールで、つまり、ユーザーもオラクルと同じツールを使ってAIエージェントを作成・拡張することが可能というわけだ。
そのため、標準のHCMプロセスにユーザーの要件を持ち込みやすくなっている。AI Agent Studioでは事前作成済テンプレートによりカスタマイズおよび拡張が可能なほか、外部のデータソースやエージェント・フレームワークに接続できる。
さらに、パートナーがAI Agent Studioを活用してAIエージェントを開発して提供することも可能であり、中山氏は「AIエージェントのエコシステムを作ろうとしている」と今後の展望を語っていた。



