
着眼は大局で、着手は小局で
『着眼大局、着手小局』――。
国の運営にしろ、企業の経営にしろ、大局観は必要だし、事業の構想や経営戦略を実施していく上で、細部にまで目を配ることが大事ということ。この『着眼大局、着手小局』は孔子の弟子・荀子が言った言葉とされるが、何事も目のつけどころは大局的に進め、実践は小さな事の積み重ねだということ。経営の世界でも、一つの事業で大成した人は、この『着眼大局、着手小局』を実行・実践してきておられる。
松下電器産業(現パナソニックホールディングス)創業者の松下幸之助さん(1894-1989)にしろ、京都セラミック(現京セラ)創業者の稲盛和夫さん(1932―2022)にしろ、社会の人々のためになる製品開発を推し進めた経済リーダーであった。
松下、稲盛両氏に共通するのは、社会とのつながり、あるいは先人とのつながり、さらには未来の人たちとのつながりを大事にするという大局観の持ち主。事業を起こすのはクリエイティブ(創造的)な精神、挑戦者魂があるからだが、それは自分一人だけのものではない。先人たちとのつながり、あるいは同時代を生き抜く人たちとのつながりがあってこそだと思う。
稲盛さん(鹿児島出身)は京都の地で創業された。京都は清水焼の伝統の地。焼き物文化の土壌があって、半導体生産に不可欠のセラミック事業を起こしていかれた。清水焼という伝統の上にセラミックという花を稲盛さんは咲かせたということである。
稲盛さんの自利利他の精神
その稲盛さんが大事にされたのが『自利利他の精神』である。自らを活かし、『利他』、つまり人のため、世のためになる事業を担おうという生き方・働き方である。
この『自利利他の精神』は共存共栄、つまり共生の思想につながる。しかし、現実の世界を見ると、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとイスラム軍事組織『ハマス』との戦闘を見ても、争い事が絶えない。世界中の人々がこの矛盾の中を生きてきたわけだが、何とか共生の方向へ向け、新しい国際秩序づくりに向かわなければならない。その意味で、世界の中での日本の立ち位置を今一度、しっかり見つめ直し、新しい『国のカタチ』を構築していかないといけない。
今、大局観が見失われ、当面の問題や当事者間の利害に捉われた議論が多いのではないか。国の基本骨格、それは憲法の根本のところを含め、今一度見つめ直し、企業経営の在り方、個人の生き方・働き方まで及ぶ作業が求められることになる。