
米価下げは第一幕
『令和の米騒動』が続く。昨夏からコメ不足が言われ、米価はグングン上昇、5㌕あたり4400円と、昨年比2倍の価格高騰が続く。
令和5年産米(2023年米)が猛暑で不作となり関係者の間では米不足が起きると予測されていた。米価上昇がその後続き、昨年(2024年)新米が出回る頃になってもその状態が続き、今年に入ってからなお深刻さを増してきた。国民の関心はどこにあるのか?
もちろんコメ価格が昨年の倍もすることへの反発である。物価が上昇し、賃上げが3年連続行われているにも関わらず、実質賃金はマイナスという状況。
中でも特に米価の高騰が目を引き、国民の不満が募っていった。こういうときに、江藤拓・前農相の「わたしはコメを買ったことがない」という失言が、国民の気持ちを逆なでした。
そこで石破内閣は急遽、小泉進次郎氏を農相に抜擢し、小泉氏は新手を打ち出す。在庫米を掃き出すと言っても、従来は集荷業者のJA(全農)を通じて卸売業者、そしてスーパーや町の米販売店という流通を辿る中で、在庫掃き出しの7%しか売られていないという状態。
業を煮やした小泉新農相は〝禁じ手〟の随意契約を持ち出し、小売業者が在庫米を持つ政府と直接契約を交わし、小売店の店頭にコメを並べるという手段に打って出た。ここまでが『令和の米騒動』の第一幕である。
米問題の根本解決は?
「備蓄米の放出は無制限にやる」と小泉農相は言う。本来、凶作や想定外の事態が起きた場合に主食の米を蓄えるというのが在庫米の趣旨。年間100万㌧程度が備蓄されているが、今回は江藤前農相時代に約20万㌧、小泉農相になって30万㌧を放出。
イオンなどの大手スーパーやアイリスオーヤマ、ネット通販の楽天なども随意契約に応じ、米は店頭に並べられた。国民の関心は高く、各店頭ともあっという間にコメが売り切れ、いかに安いコメを消費者が求めているかを関係者に印象づけた。
さて、これからが第二幕である。小泉農相は5㌕2000円台を公言するが、生産者周辺では不満の声が募る。
ただでさえ米農家の高齢化が進み、平均年齢は69歳で後継者難れが囁かれている。「5㌕あたり3000円台でないと生産農家にとってコストは引き合わない(森山裕自民党幹事長)」という声も根強い。
現状のコメ価格の推移をみると、5㌔あたり生産者段階で1500円、それが集荷・卸売業を通じて小売り段階になると4500円に跳ね上がる。
そこで流通(卸売業)が複雑で、これが米価高騰の原因ではないか─―といった声も出がちだ。しかし、卸売業の間では、米取引は市場性の中で行われており、精米や倉庫機能、配送などの物流機能を担う立場から「責任をなすりつけられる筋合いのものではない」と反論する。
生産・流通・消費者それぞれの言い分 真の解決法は?
日本の食料自給率は38%と低い。なぜそうなったのか─―。
戦中・戦後の流れを見ると、食管法(食糧管理法)は1942年(昭和17年)に制定。戦時中の食糧の安定供給をはかるため、政府が食糧(米)を管理することにした。
この食管法は半世紀以上続いたが、この間、米農家の減少、食料の多様化も進み、小麦粉・パン食なども進んだ。コメの供給が需要を上回り、米価が下がる中で米農家も影響を受けていった。
減反政策が1971年(昭和46年)から始まり、できるだけ米を作らない方向に農政は舵を切る。現在、日本の米需要は年間約700万㌧、人口減、少子化・高齢化の進行で、年10万㌧ずつ需要が減少し続ける。こういう中で今回の『令和の米騒動』が勃発。
食料自給率を引き上げるという大命題を抱える中での今回の米不足の問題である。市場、需要と供給のバランスをいかにとるか─。完全に市場に任せれば、今回に似た騒動はまた起きる。それは大正の米騒動、1930年のコメ不足を見ても、歴史が証明している。
だとするならば、政府がどこまで戦略的対応を打っていくかということを含めて、農政の根本改革をはからなければならない。
生産者、流通、そして消費者の三者が共存共栄でき、一定程度の食料自給を賄えるようにするにはどうすればいいか。ここは政治のみならず行政、そして経済リーダーの決断が求められているところである。
2018年に減反政策は廃止となったが、水田からの転作に国は補助金を出すなどして実質的な減反政策は続くという見方も強い。今後も天候不順による凶作などでコメ不足になる事態は想定される。
そうした事態にどう備えるか、いわゆる食料安全保障の確立が要求される中で、実質的な減反政策を止め増産に向けるのか。ここは国家としての戦略が問われる。食料とエネルギーの確保は国家を存続していく上で、非常に大事な命題である。