Business Insiderは6月18日(現地時間)、「Sam Altman says his own kids will 'never be smarter than AI'」において、Sam Altman氏がOpenAIの最新のPodcastの中で「自分の子どもたちがAIより賢くなることはけっしてないだろう」と発言したと伝えた。

このPodcastで同氏はAIの現状と将来、そして社会に与える影響などについて自身の見解を語っている。

  • 米OpenAI CEO Sam Altman氏

AIに奪われることより、AIから得ることを重視

OpenAIのCEOであるSam Altman氏は、生成AIについて常に興味深い洞察と考察を世の中に共有している。今年2月に第一子が誕生した同氏は、自身の子育てに役立てるためにChatGPTを頻繁に活用していると明かし、AIは今後ますます人々の生活の領域に深く入りこんでくる可能性が高いと語った。

Altman氏は、AIと競うのではなく、共に歩むことに意味があると考えているようだ。最も興味深いのは、同氏が「子供たちはAIより賢くなることは決してない」と語ったことだろう。この発言はAIの可能性の高さを示唆するのと同時に、人間を超越した存在になるのではないかという不安も想起させる。

しかし同氏は「子どもたちは私たちよりもはるかに優れた能力を持って成長し、想像もできないことができるようになり、より上手にAIを活用できるようになる」とも語っており、AIを使いこなす技術の価値も強調している。Altman氏は、次世代の人々がAIによって何を奪われかよりも、AIから何を得るかを重視しているという。

ただし、AIの利便性と同時に、そのリスクについても警鐘を鳴らしている。どれほど便利でも、ChatGPTには虚偽情報を生成する「ハルシネーション」の可能性があるため、過剰な信頼は避けるべきだと指摘している。また、AIと人間の関係について、AIに過度に依存して「問題のあるパラソーシャルな関係」に発展するのを避けるように、社会は新たなガードレールを見つけ出さなければならないとも語っている。

AIはスーパーインテリジェンスへの第一歩を踏み出している

Altman氏はPodcastの中で、AGI(汎用人工知能)の進化や、AIのための計算インフラを飛躍的に発展させるStargate Projectについても語っている。

AGIとは、人間と同等またはそれ以上の認知能力を持ち、幅広いタスクを自律的に実行できる人工知能を指す用語である。しかし同氏は、AGIの定義は流動的で技術の進歩に伴って常に拡大されており、当初の「人間のタスクを実行できる」というAGIは今のモデルでもある程度は実現しつつあると述べている。

Altman氏がもっと注目しているのは「スーパーインテリジェンス」だ。これは「人間の知能を超える最も高度な知能」を指す用語で、自律的に問題を解決したり、科学的な新しい発見を行えたりする能力を指す。現在のAIは、コーディングの支援や科学的な分析などで人間の研究をサポートしており、これはスーパーインテリジェンスに向けた第一歩だと同氏は考えている。

このようなAIの進化を支える基盤として現在進められているのが「Stargate Project」だ。これはOpenAIがソフトバンクグループ、Oracle、MGXなどと共同で開始した、全米各地にAI向けデータセンターを整備する計画である(関連記事:ソフトバンクGやOpenAI、米国のAI開発に5000億ドル投資 - トランプ大統領が発表 | TECH+(テックプラス))。

インフラの整備に加えて、AI技術の研究開発や実装を加速させることを目指しており、すでにテキサス州で最初のデータセンターの建設が始まっている。

Altman氏は、OpenAIが現在提供できるものと、10倍または100倍の計算資源があれば提供できるものの間には、とてつもなく大きなギャップがあると述べている。Stargate Projectでは、「AIの知能を可能な限り豊富で安価なものにすること」を目指しているという。Stargate Projectの予算は4年間で5000億ドル(約73.5兆円)という莫大なもので、Altman氏は現在その金額が用意できているわけではないと認めつつも、「今後数年のうちに展開できるだろう」と自信を見せている。