パナソニック くらしアプライアンス(パナソニック)は6月12日、同社が70年にわたり展開してきたポンプ事業において、データセンタ向けの冷却ポンプ市場に参入するため、次世代型冷却水循環ポンプを新たに開発したことを発表した。

  • データセンタの冷却システム向けに新型ポンプの提供を開始する

    パナソニックはデータセンタの冷却システム向けに新型ポンプの提供を開始する(出所:パナソニック)

70年の歴史を持つポンプ事業でデータセンタ市場に参入

1955年発売のホームポンプ(井戸ポンプ)からスタートしたパナソニックのポンプ事業では、1980年に給湯機向けの機器組み込み式ACポンプの開発・販売を開始し、追い炊き機能の追加による給湯器の提供価値向上に貢献。その後は機器組み込み式DCポンプを開発するなど、省エネ性と環境性能を両立した製品を展開してきた。

そんな同社のポンプ事業は、2025年に創業70周年を迎える。これまでの累計出荷台数は5300万台を突破しており、その搭載はパナソニック製品にとどまらず、国内外メーカーの燃焼式給湯・暖房機器やヒートポンプ式温水給湯暖房機にも採用が拡大。滋賀県の彦根工場で生産を行い、グローバル規模でくらしの場へと展開している。

  • ポンプ事業の歴史

    ポンプ事業の歴史(出所:パナソニック)

そんな中、近年のくらしにおいても欠かせないものになりつつあるAI技術の進化に伴い、世界各地でデータセンタが増加傾向にある。特に需要が高まる生成AIデータセンタでは、高度な演算によりCPU・GPUチップあたりの発熱量が急速に増大。従来はエアコンやファンを用いた空冷式で対応していたものの、より効果的かつ効率的な冷却が求められていることから、冷却効率が高い液冷式への注目が集まっている。

そうした背景からパナソニックは、長年にわたるポンプ事業で培われた独自技術とシステム設計力を結集し、データセンタでの冷却に特化した次世代型冷却水循環ポンプを新たに開発したとのこと。冷却システムの中核であるCDU(Coolant Distribution Unit)への組み込みを前提として、高い性能を実現したとする。

性能の面では、磁場解析・流体解析・流動解析などの高度シミュレーション技術を駆使し、従来と同程度のサイズながらポンプ性能を75%向上(40L/min→70L/min)。また機器組み込みポンプで培った設計ノウハウを活用し、コンパクトな筐体サイズを実現したといい、スペースが限られるCDU内への格納を可能にし、その設計自由度を高めるという。加えて、水中すべり軸受けの採用と構造設計の最適化により、長期にわたる安定稼働とメンテナンス負荷軽減を実現したとしており、システム全体のエネルギー効率向上や設計の簡素化、データセンタ運用における信頼性向上やコスト最適化に貢献するとした。

パナソニックは、新製品の提供を通じて環境負荷の低減と安定稼働を両立し、次世代インフラであるデータセンタの冷却ニーズに応えるとする。また同社はデータセンタ市場への参入を皮切りに、インフラの熱対策向け冷却ソリューションへの貢献を図るとし、ポンプ事業を拡大して2035年には累計出荷1億台の達成を目指すとのこと。そして今後も環境変化や顧客の声に向き合いながら、安心・快適なくらしと産業の発展に貢献するとしている。

  • ポンプ事業の累計出荷数と将来展望

    ポンプ事業の累計出荷数と将来展望(出所:パナソニック)