10月21日付で、米Teradataの日本法人である日本テラデータの代表取締役社長に大澤毅(おおさわ たけし)氏が就任した。前社長の高橋倫二氏は同日をもって同職を退任した。このほど同社が説明会を開き、両名がメディア向けにコメントを発表した。

  • (写真左から)高橋倫二氏、大澤毅氏

    (写真左から)高橋倫二氏、大澤毅氏

前社長・高橋倫二氏が社内に示した3つのメッセージとは

高橋氏は2017年9月に日本テラデータの社長に就任。クラウドやAIの利用が急速に拡大する中、コロナ禍なども乗り越えて同社を率いた。

  • 前社長の高橋倫二氏

    前社長の高橋倫二氏

高橋氏は40年ほど、日記をつけているという。また、元日にはその年の目標を挙げ、年末に振り返り成長を実感しているとのことだ。社長として過ごした7年間についても、多くの成長ができ満足だったと振り返った。

社長に就任した直後、高橋氏は社内向けに3つのビジョンを示した。まずは「社員の一人一人がプロフェッショナルとして成長を実感し楽しめる会社」。自身が経験してきたような目標達成と成長の実感を、社員にも感じてほしいというメッセージだ。

2つ目は「お客様から信頼され、頼られ、期待以上に価値を継続して届けられるチーム」。ビジネスにおいてチームでのオペレーションは当然ながら重要となるが、顧客の期待以上のサポートを提供できるチーム作りを意識したという。

3つ目は「業界の伸びを大きく上回る成長を続けられる会社」。上の2つを達成することで、結果的に企業としての成長を遂げることにもつながる。これらのメッセージは、毎年4月の新卒入社の際にも発信し続けてきた。

続けて、高橋氏は思い出に残っていることとして、2020年にグローバルのキックオフミーティングにおいて、日本テラデータが成長率で世界一となり表彰されたエピソードを披露。同社の「Dream Place To Work」という人事施策は、社員のjob satisfaction(仕事満足度)とemployee satisfaction(従業員満足度)を高めるための取り組みで、この双方を高めた結果が企業としての成長率にもつながったそうだ。

同氏は就任以来、テラデータがソフトウェアの会社であるとのメッセージ発信にも注力した。社長に就任した2017年当時のテラデータといえばハードウェアベンダーとしてのイメージも色濃く残っていた。しかし、サブスクリプションモデルでのソフトウェア提供へと舵を切ったことが、経営の安定化に寄与した。

同氏が社長に就任してからこれまでの7年ほどで、クラウド化に向けた世間の流れも一層強まった。さらに直近ではクラウド一辺倒から、オンプレミスへの回帰の動きもみられる。そうした中にあって、クラウドとオンプレミスをまたいでデータ分析が可能なテラデータの分析基盤の強みをより発揮しやすい環境になりつつあるという。

高橋氏は「ハイブリッドな環境でのデータ分析や、生成AIの活用も当たり前となった。そうした新しい時代に新しい社長へとバトンタッチする。大澤新社長には次のテラデータをリードしてほしい」とし、コメントを結んだ。

新社長・大澤毅氏が社長就任を決意した3つの理由

今回社長に就任した大澤氏はこれまで、大手独立系メーカー、大手SIer、外資系IT企業のマネジメントや新規事業の立ち上げなどでキャリアを積んできた。2016年にSAPジャパンでSAP Fieldglass事業本部 本部長を務め、2020年にはClouderaの社長執行役員に就任。事業開発、マーケティング、営業、パートナー戦略、コンサルティング、サポートなど数多くのマネジメントを担当した。

  • 新社長に就任した大澤毅氏

    新社長に就任した大澤毅氏

大澤氏は高橋氏にならい、3つの大切にしているコアバリューを紹介した。まず1つ目は「自分たちがやっていることが会社にとって重要なものか、またその役割で学べるもがあるか」。2つ目は「自分たちがやることがお客様にとって正しいものか」、3つ目は「自分たちがレガシーを築くことができるか」。

「言葉こそ違えど、高橋前社長が伝えたいことと同じことを自分もコアバリューとして持っていることを改めて認識した」と大澤氏は語った。

次に、大澤氏が日本テラデータの社長に就任を決めた3つの理由について紹介した。まずは、ヒト・モノ・カネが企業価値を生む時代から、ヒト・モノ・カネ・データが企業価値を生む差別化要因となる中で、データこそが企業価値の源泉になるとして、こうした時代に日本テラデータの成長を率いることに価値を見出しているという。

また、同社のソリューションを利用する日本企業と共に、日本の社会を次のフェーズへと一歩進められる機会でもあることから、社長就任を決めたそうだ。最後の理由は、日本テラデータは他の外資系企業と違い、日本法人の自由度が比較的高いそうだ。そのため、日本発のサービスやソリューションを世界に展開するべく、日本テラデータの社長就任を決意したとしている。

大澤氏が示す2025年の事業戦略「日本企業のAIドリブン経営を促進し、明日の常識をつくる」

大澤氏は2025年のビジネス戦略について、「AIドリブン」と3つの「きょうそう」を紹介した。昨今はデータ活用によるビジネス促進のニーズが高まっているが、その一方で多くの企業がデータ活用の成果を実感できていない。データドリブン経営の重要性が言われるようになり久しいが、具体的なデータドリブンは実現できていないのが実情だ。

対して大澤氏が打ち出すのは、単にBIツールや生成AIの導入によりデータドリブンを図るのではなく、組織のあらゆる活動をデータに置き換え、そのデータに基づく学習・予測を通じた最適化を自動的かつ継続的に行う仕組みを確立する「AIドリブン」である。

  • AIドリブン経営を実現する将来像

    AIドリブン経営を実現する将来像

AIドリブンをテーマとして日本テラデータが掲げる2025年の目標は、「日本企業のAIドリブン経営を促進し、明日の常識をつくる」。2025年には各業界でAIドリブン経営をけん引する「キャプテン」企業を20社選出するそうだ。この目標の下で、次の3つの"きょうそう"プログラムに取り組む。

1つ目は「協走」。AIプリセットモデルを提供することで、業界ごとのトップランナーによるデータとAI活用を促す。また、日本市場に対する最新のソリューションを適用し、ビジネスユースケースを創出する。

2つ目は「強壮」として、同社の強みであるハイブリッドデータプラットフォームを展開。新機能のQueryGridデータファブリックにより、他社のデータウェアハウス(DWH)ソリューションを利用している場合でも統合して分析可能になるという。これにより、全社横断でのデータ・AI活用を支援する。

3つ目の「共創」は、データおよびAI戦略アドバイザリによる取り組みを指す。日本テラデータに所属する約200人のコンサルタント人材の中からAIに関する専門チームを組成し、パートナーも巻き込んで顧客に対し活用支援を提供する。

  • AIドリブン経営を実現するための3つの「きょうそう」

    AIドリブン経営を実現するための3つの「きょうそう」

「AIの進化は非常に速く、国内外で常にイノベーションが起きている。しかし、グローバルで見てもまだまだスタートしたばかりの段階だと思っているので、世界をあっと驚かせるようなユースケースをこれから作り出していきたい」(大澤氏)