独ハンブルクにて開催中のHPCに関する国際会議「ISC2023」に合わせて5月22日付で、第61回目(2023年6月版)となるスーパーコンピュータ(スパコン)の性能ランキング「TOP500」が発表された。

それによるとトップとなったのは前回同様、米ORNL(米オークリッジ国立研究所)に設置されたエクサスパコン「Frontier」。LINPACK性能は1.194ExaFlopsで、前回の1.102ExaFlopsから若干の性能向上となった。

  • エクサスケールスパコン「Frontier」

    2023年6月版のTOP500で3連覇を達成したエクサスケールスパコン「Frontier」 (出所:TOP500 Webサイト)

2位はこちらも前回同様、理化学研究所(理研)のスパコン「富岳」。LINPACK性能も前回同様の442.01PFlopsで変更はない。ただし富岳は、「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」では7期連続の1位を獲得しているほか、人工知能(AI)の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-MxP」(旧:HPL-AI)においては前回に続き3位を獲得している。

3位も前回同様、欧州連合(EU)のスパコン共同事業体(EuroHPC Joint Undertaking)のうちの1つで、フィンランドの教育文化省が運営する非営利の国有企業CSC - IT Center for Scienceによる「LUMI」で、前回(2022年11月版)のTOP500にて性能を309.10PFlopsへと性能を引き上げたが、そこからの変更はない。 4位はLUMI同様、EuroHPCのうちの1つで、イタリアのボローニャに設置されているCINECAデータセンターの「Leonardo」で、Xeon Platinum 8358(32コア、2.6GHz)とNVIDIA A100を組み合わせたスパコンで、LINPACK性能は前回の174.70PFlopsから238.70PFlopsへと引き上げられている。

5位も前回同様、米ORNLのスパコン「Summit」で、LINPACK性能は148.6PFlopsと変更はない。6位も前回同様、米ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)の「Sierra」でLINPACK性能94.64PFlopsで変更なし。7位も前回同様、中国National Research Center of Parallel Computer Engineering & Technology(NRCPC)の「神威・太湖之光」でLINPACK性能93.01PFlopsと変更なし。8位も前回同様、米National Energy Research Scientific Computing Center(NERSC)の「Perlmutter」でLINPACK性能70.87PFlopsで変更なし。9位も前回同様、NVIDIAのスパコン「Selene」(LINPACK性能63.46PFLops)で変更なし。そして10位も前回同様、中国National Super Computer Center in Guangzhouの「Tianhe-2A」(61.44PFlops)で変更はなく、1位から10位まで前回と順位の変動が一切ない状態となった。

  • 2023年6月版(第61回)TOP500の上位10システムの概要

    2023年6月版(第61回)TOP500の上位10システムの概要 (出所:TOP500 Webサイト)

なお、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。前回同様、富岳併せて11システムがランクインしており、前回94位の日本原子力研究開発機構(JAEA)と量子科学技術研究開発機構(QST)の共用スパコンと、同95位の大阪大学のクラウド連動型高性能計算(HPC)・高性能データ分析(HPDA)用スパコン「SQUID(Supercomputer for Quest to Unsolved Interdisciplinary Datascience)」のCPUノードが姿を消した代わりに、2023年3月より気象庁が稼働を開始した「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」の主系および副系が50位ならびに51位にランクインした。同スパコンは、富士通のスパコン「PrimeHPC FX1000」(A64FX CPU)とTofuインタコネクトDの構成で、1系あたり理論演算性能15.57PFlopsで、LINPACK性能13.37PFlopsを達成している。

  • 24位(前回22位):日本の産業技術総合研究所(産総研)の「人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI:AI Bridging Cloud Infrastructure)」(22.21PFlops)
  • 25位(同23位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.12PFlops)
  • 41位(同39位):宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.59PFlops)
  • 50位(新登録):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops)
  • 51位(新登録):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops) (50位と51位の気象庁のスパコンは主系と副系の2系統で構成。それぞれの順位は1系あたりのLINPACK性能)
  • 63位(同56位):海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.99PFlops)
  • 66位(同59位):研究機関とのみ記載。HPE Apollo 6500システム(AMD EPYC 7543 32C 2.8GHz、NVIDIA A100)を採用したシステム(9.46PFlops)
  • 80位(同71位):東京工業大学の「TSUBAME3.0」(8.12PFlops)。
  • 84位(同75位):核融合科学研究所の「プラズマシミュレータ・雷神」(7.89PFlops)
  • 97位(同87位):名古屋大学の「Flow」(6.62PFlops)