BroadcomがVMwareを買収したことにより、方針が大きく変わり、仮想化市場に混乱が起きている。レッドハットは3月28日、日本企業からも問い合わせが増えているとして、コンテナ管理プラットフォーム「Red Hat OpenShift」による仮想化戦略について、説明する機会を設けた。
仮想環境を構築できる「Red Hat OpenShift Virtualization」
同社はコンテナ管理プラットフォーム「Red Hat OpenShift」において、仮想環境を構築できる「Red Hat OpenShift Virtualization」を提供している。
「OpenShift Virtualization」は、ハイパーバイザーとしてKVM(Kernel Virtual Machine)を採用しているほか、Microsoft Server Virtualization Validation Programに認証されているので、Windowsゲストをサポートしている。もちろん、同社のLinuxディストリビューションも含んでいる。
「OpenShift Virtualization」により、コンテナでVM(Virtual Machine:仮想マシン)を実行することで、VMをコンテナ化されたワークフローに取り込んで、単一のプラットフォーム上でVMをコンテナと並行してデプロイ・管理が行えるになる。
米レッドハット Product Management, Virtualization Senior Manager Sachin Mullick氏は、大規模なVMを「Red Hat OpenShift Virtualization」に移行するためのツールとして、「Migration Toolkit for Virtualization」を提供していることを紹介した。同ツールは「Red Hat OpenShift」に含まれている。
また、Mullick氏は自動化プラットフォーム「Red Hat Ansible Automation Platform」も同時に利用することで、VMの立ち上げが数分で可能になると説明した。
「OpenShift Virtualization 4.15」のポイント
今年3月、Kubernetes 1.28とCRI-O 1.28をベースとした最新版「Red Hat OpenShift 4.15」が発表された。最新版では、「Red Hat OpenShift Virtualization」に災害復旧機能が追加されている。
Mullick氏は、「Red Hat OpenShift 4.15」について、「仮想化の戦略として、課題を解決することを軸としている。7割から8割のアプリケーションがVM上で動いており、仮想化環境を維持する難しさに対する回答を提示している。コストも上がっており、こうした状況を踏まえて新しい機能を提供している」と述べた。
続いて、米レッドハット Senior Principal Technical Product Manager Peter Lauterbach氏が、「OpenShift Virtualization 4.15」のポイントについて説明した。
同氏は、まず3回クリックするだけで、目的に適したVMを作成できることを挙げた。また、VMを管理するためのKubernetesのアドオン「KubeVirt」への取り組みを紹介した。同社はVMの管理においてKubeVirtのほか、KubeFlow、Tektonといったオープンソースソフトから構成されるフレームワークを活用している。
「KubeCon Europe 2024」では、ゴールドマンサックスがKubeVirtの導入状況を紹介したという。
国内における「OpenShift Virtualization」を取り巻く状況
レッドハット APAC Office of Technology GTMストラテジスト 岡下浩明氏によると、「OpenShift Virtualization」は新しい製品ではないが、ここ数カ月外的要因がトリガーとなって、グローバルで着目されており、導入されるインスタンスが増えているという。その状況は、国内でも同様とのこと。
そのため、国内では「OpenShift Virtualization」を紹介するイベントを複数回開催するという。
なお、岡下氏は、「OpenShift Virtualization」によって従来の仮想化環境をそのまま動かすのではなく、クラウドネイティブな経験を仮想化されたVMに対しても提供することが大事だと語っていた。
「OpenShift Virtualization」は従来のVMを置き換えられるのか
Mullick氏は、先述したように、「OpenShift Virtualization」はKVMが組み込まれているので、どのVMも運用することが可能と説明した。また、Lauterbach氏は、「OpenShift」がハイパーバイザーそのものなので、ネイティブな形でVMを運用できると述べた。
サーバ仮想化には、ストレージやネットワークの要素も含まれているが、ここはどうなるのか。VMwareは、ストレージの仮想化ツール「VMware Virtual SAN 」、ネットワークの仮想化ツール「VMware NSX」も提供している。
レッドハットの場合、ネットワーク、ストレージ、データ保護については、パートナーのソリューションによって補完することになる。Lauterbach氏によると、「OpenShift」のネットワークはKubernetesと同じなので置き換えが可能であり、Red Hat Enterprise Linuxのネットワーク機能は「OpenShift」でも利用できると説明していた。