アメリカザリガニとアカミミガメ(ミドリガメ)が6月1日から「条件付特定外来生物」になり、野外への放出や有償での譲り渡しが禁止される。日本古来の生態系を守ることに加え、農作物被害を減らす狙い。一般家庭で飼育中のものは引き続き飼うことができるが、環境省では飼えなくなった場合に新たな飼い主をみつけるなど最後まで責任を持った対応を呼びかけている。
環境省の推定ではアメリカザリガニはペットとして65万世帯で540万匹、アカミミガメは屋外だけでも930万個体、家の中では110万世帯に160万個体が生息する。ともに米国から輸入されているが、放出などで繁殖したアメリカザリガニは水田に穴を掘って漏水させたり、稲穂をはさみで切ったりするなどの被害を起こす。アカミミガメは、レンコン畑の新芽を食べ尽くしてしまったり、食中毒の原因であるサルモネラ菌を媒介したりするなど、農業だけにとどまらず、社会生活への影響もある。
これまで外国原産で生態系などに影響を与える生物の輸入・販売・譲渡・飼育は「特定外来生物被害防止法」により、一律で規制している。ただ、アメリカザリガニとアカミミガメについては飼育者も多く、飼育を禁止するとかえって放出などが増えることが懸念される。「子どもが自然の中で遊んで見つけたものまで『飼うな』と規制するのか」「学校で飼育されている例がある」といった声もあり、特定外来生物の指定は受けていない。このため、国は規制の一部の適用を除外し、飼育はできるものの、放出や有償で譲り渡したり、輸入したりできない条件付き規制ができる法改正を行い、条件付特定外来生物として初めて指定することになった。
6月1日以降は、アメリカザリガニ、アカミミガメについて、(1)これまで飼っていた個体については手続きなく飼える、(2)池や川など屋外に逃がすのは禁止、(3)飼い続けられなくなったときは知人などに無償で譲り渡すことができる、(4)輸入や販売は禁止――などの条件で施行する。飼えなくなった場合に金銭のやりとりのもとで譲り渡したり、不特定多数の人に無償、有償を問わずに譲渡したりする行為は禁止される。ただし、学術目的や博物館・水族館といった一部の許可者には規制を緩めている。
飼っていたアメリカザリガニやアカミミガメを屋外に逃がしたり、解き放ったりすると罰金、懲役刑と重い刑が科される可能性がある。また、故意に逃がさなくても、「フタをしていない水槽で飼っていた」「甲羅干しをするために庭先に出した」といった過失によって生き物が自力で逃げ出したときも刑罰の対象となるので注意が必要だ。ただし、この2種類は生息数が多いため、捕まえたその場で観察した後に、その場で逃がす「キャッチアンドリリース」については対象外の仕組みになっている。
アメリカザリガニは魚釣りの餌として使われることもあるが、環境省は「生きたまま餌にすると釣り針から逃げ出す可能性があるので、死んだアメリカザリガニで釣りをしてほしい」と注意を促す。アカミミガメについては「カメは40年を超えて生きる個体もある。本当にペットとして飼えるのか、見極めてほしい」とする。
どうしても飼えなくなった場合、むやみに個人で殺処分を行うと動物愛護法違反になる。環境省は一部の野生生物も対象にしている害虫などの駆除を行う業者や防除を行うNPO法人に依頼したりして、処分の方法を相談すると良いとしている。同省でも相談ダイヤルを設置し、12月29日から1月3日を除く、土日祝日を含む午前9時から午後5時に電話(0570-013-110)すれば、規制や飼育に関する問い合わせや相談に対応するという。
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